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7.岐路の章_44
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深刻なダメージを受け、瓦礫の中に仰向けで埋もれたまま、ぼんやり青空を眺めるムムスカムア。
(こ……この俺様が……指一つ動かせんとは……何と言うチカラ……潜在的に妹(アム)の方が上だと分かってはいたが…………。完全に嫌われてしまったようだな……理由は理解出来ぬが……)
疲弊した顔で、自嘲すると、
「不意を突かれたとはいえ、これはまた派手にやられましたなぁ」
頭上から、老いを感じる男の声。
「…………?」
かろうじて頭を動かし、上目遣いに見上げると、そこにはプロテクターを纏い、小銃を手にした数人の兵士を伴う、眼鏡に白衣と言ういで立ちの初老の男が立っていた。
「な、何者だ、貴様はぁ……」
ナノマシンによる治療が始まっていても、なお満足に動くことの出来ないムムスカムアであったが、意地とプライドを以ってして、油の切れたロボットの様な動きではありながら、ゆらりと立ち上がった。
「「「「「「!」」」」」」
その全身から発する凄まじい気迫に、思わずひるんで銃口を向ける謎の兵士達。
しかし博士の様な風貌の男は動じた様子も見せず、
「流石はムムスカムア王。よもやそのダメージで、立ち上がると思いませんでしたぞ」
「! きっ、貴様ぁ……何故それを知っている……」
よたつきながらも、鋭い眼光を放つと、
「ふぉふぉふぉ。これは申し遅れました、陛下。ワタクシ奴は『ロイド・ワイズ』。アメリカ軍に組し、貴方様がご活躍なされた時代を研究する、しがない研究者の一人にございます」
「あめりか……だとぉ?」
「はい。陛下が支配されていた地域の国の名でございます」
「それが、何用だ……我が臣民の失せた国などに、興味は無い……」
重い足を引きずり立ち去ろうとすると、
「しかし「強さ」には興味がおありなのでは?」
「!?」
足を止め、振り返り、
「どう言う意味だ……」
「武勇を奮っていた貴方様ならお判りでしょう」
「…………」
「第一皇女様は貴方様の「お立場」をおもんばかり、今日まで実力を隠して出おいでであった事を。さすれば貴方様の序列は更に下がりますな」
「クッ……」
口惜しげに視線を下げると、
「因みに申しますと、こたび観戦に徹せられていた第二皇女様の実力は、あの絶望神ナアクスカムアを超えまするぞ」
「なんだとぉ!? 序列一位をだと!?」
「ふぉふぉふぉ。スティーラーでもない第二皇女様が、何故生きておいでであったか不思議に思いませなんだか?」
「愛する妹が二人も生きていて……『ラッキー♪』くらいにしか……」
「…………」
「「「「「「…………」」」」」」
稚拙な発想に、言葉を失うワイズと兵士たち。
ツッコミを入れたい気持ちをグッと堪え、
「そ、その様なお二人の本気を、失礼ながら今の陛下が受け取られますかなぁ?」
「クッ……」
完膚なきまで叩きのめされたばかりのムムスカムアには、返す言葉が無かった。
悔し気に視線を逸らすと、
「ワタクシ奴が、陛下のお手伝いを致しましょう!」
「手伝い、だと?」
怪訝な顔するムムスカムアに、ワイズは不敵な笑みを浮かべ、
「はい。過去と現在、二つの技術を併せ持つワタクシ奴が、皇女様二人の本気を同時に受け止められるほどのチカラを、貴方様に授けましょうぞ」
「……可能なのか?」
「ワタクシ奴の命を賭けまして」
ニヤリと笑うワイズに、
「……良いだろう。貴様の策謀に乗ってやろうではないか」
不敵に笑い返すムムスカムア。
(こ……この俺様が……指一つ動かせんとは……何と言うチカラ……潜在的に妹(アム)の方が上だと分かってはいたが…………。完全に嫌われてしまったようだな……理由は理解出来ぬが……)
疲弊した顔で、自嘲すると、
「不意を突かれたとはいえ、これはまた派手にやられましたなぁ」
頭上から、老いを感じる男の声。
「…………?」
かろうじて頭を動かし、上目遣いに見上げると、そこにはプロテクターを纏い、小銃を手にした数人の兵士を伴う、眼鏡に白衣と言ういで立ちの初老の男が立っていた。
「な、何者だ、貴様はぁ……」
ナノマシンによる治療が始まっていても、なお満足に動くことの出来ないムムスカムアであったが、意地とプライドを以ってして、油の切れたロボットの様な動きではありながら、ゆらりと立ち上がった。
「「「「「「!」」」」」」
その全身から発する凄まじい気迫に、思わずひるんで銃口を向ける謎の兵士達。
しかし博士の様な風貌の男は動じた様子も見せず、
「流石はムムスカムア王。よもやそのダメージで、立ち上がると思いませんでしたぞ」
「! きっ、貴様ぁ……何故それを知っている……」
よたつきながらも、鋭い眼光を放つと、
「ふぉふぉふぉ。これは申し遅れました、陛下。ワタクシ奴は『ロイド・ワイズ』。アメリカ軍に組し、貴方様がご活躍なされた時代を研究する、しがない研究者の一人にございます」
「あめりか……だとぉ?」
「はい。陛下が支配されていた地域の国の名でございます」
「それが、何用だ……我が臣民の失せた国などに、興味は無い……」
重い足を引きずり立ち去ろうとすると、
「しかし「強さ」には興味がおありなのでは?」
「!?」
足を止め、振り返り、
「どう言う意味だ……」
「武勇を奮っていた貴方様ならお判りでしょう」
「…………」
「第一皇女様は貴方様の「お立場」をおもんばかり、今日まで実力を隠して出おいでであった事を。さすれば貴方様の序列は更に下がりますな」
「クッ……」
口惜しげに視線を下げると、
「因みに申しますと、こたび観戦に徹せられていた第二皇女様の実力は、あの絶望神ナアクスカムアを超えまするぞ」
「なんだとぉ!? 序列一位をだと!?」
「ふぉふぉふぉ。スティーラーでもない第二皇女様が、何故生きておいでであったか不思議に思いませなんだか?」
「愛する妹が二人も生きていて……『ラッキー♪』くらいにしか……」
「…………」
「「「「「「…………」」」」」」
稚拙な発想に、言葉を失うワイズと兵士たち。
ツッコミを入れたい気持ちをグッと堪え、
「そ、その様なお二人の本気を、失礼ながら今の陛下が受け取られますかなぁ?」
「クッ……」
完膚なきまで叩きのめされたばかりのムムスカムアには、返す言葉が無かった。
悔し気に視線を逸らすと、
「ワタクシ奴が、陛下のお手伝いを致しましょう!」
「手伝い、だと?」
怪訝な顔するムムスカムアに、ワイズは不敵な笑みを浮かべ、
「はい。過去と現在、二つの技術を併せ持つワタクシ奴が、皇女様二人の本気を同時に受け止められるほどのチカラを、貴方様に授けましょうぞ」
「……可能なのか?」
「ワタクシ奴の命を賭けまして」
ニヤリと笑うワイズに、
「……良いだろう。貴様の策謀に乗ってやろうではないか」
不敵に笑い返すムムスカムア。
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