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青木 森

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9.黎明の章_22

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 結局、欲しかった答えは得られず立ち尽くし、
(ニンゲンとして……?)
 問題は更に難解さを増し、その場に座り込むと、
 ぐぅうぅっぅぅぅぅぅぅ……
 ソウシの腹虫が、小さな鳴き声を上げた。どんなに深刻な悩みを抱えていても、腹は減る。食欲があるか無いかを別にして。
「おなかすいたなぁ……もぅ帰ろう……」
 立ち上がろうとしたが、
「イタッ!」
 足が痛み、立ち上がる事が出来なかった。
 その場に再び座り込むソウシ。
(あるきすぎて、アシがいたいよ……)
 思い返してみれば、かなりの距離を歩いていた。
 そう思い始めると足は余計に痛さを増し、お腹は空き、
(つかれたよぉ……おなかがすいたよぉ……)
 半べそ状態でうつむくと、
「こんなところにいたぁ」
 頭上から降る声。
(?)
 顔を上げると、そこには呆れ顔したトシゾウが。
「おにぃちゃん……」
「メシのジカンだぞ、ソウシ。まったくぅセワをやかすなよぉ」
 手を伸ばすと、
「アシがイタくて、あるけない……」
「はぁ?」
 不機嫌な顔に、今にも泣き出しそうな顔するソウシにトシゾウは、
「しかたねぇなぁ、ホレェ!」
 背を向け屈んで見せた。「おぶされ」と言っているのである。
「い……イイのぉ?」
 戸惑うソウシにトシゾウは、肩越しチラリと振り返り、
「オレは、ニイチャンで、オトコだからなぁ!」
 ニカッと歯を見せ笑って見せた。
 パッと笑顔になるソウシ。
「うん!」
 背におぶさると、
「よっしゃ、いくぞぉ!」
 トシゾウは気合を入れ立ち上がりはしたが、その足取りは重かった。
「に、にぃちゃん……だいじょうぶぅ……?」
「お、おうよぉ!」
 返した笑顔は、しんどそう。
 年齢の割に小柄なソウシとは言え、トシゾウとの年齢差は一歳。軽く感じる訳がない。
 しかし兄としてのプライドが足を痛めた弟を降ろす事を拒み、弱音を吐かず、一歩また一歩と食堂へ歩みを進めた。
(にぃちゃん……)
 トシゾウの背で揺られるソウシは、幼いながらに兄の気遣いに感動し、
(きょう、いろんなオトコのヒトにあったけど……にぃちゃんがイチバンカッコィ!)
 浮かれた笑顔をすると、トシゾウがおずおずと、
「な、なぁ、ソウシ……」
「なぁに、にぃちゃん?」
「じつはにぃちゃん……ねぇちゃ……イサミがダイジにしてたマグカップをわっちまってぇ……その……いっしょに、あやまってくんねぇかなぁ……なんて……」
「…………」
(にぃちゃん……いちばんカッコワルイ……)
 先程の感動は何処へやら。一気にドン引くソウシ。
 呆れて黙る背中のソウシに、
「な、なぁなぁソウシぃ、なんでだまってるんだよぉ~」
「…………」
「イイじゃんかぁ~「オトコどうし」だろうぅ~?」
「…………」
 トシゾウは「弟と弟の落胆」を背負いつつ、廊下を奥へと消えて行った。
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