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13_流転の章_51
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その頃、ホテルのスイートルームでは―――
「ファティ坊はまだでありんしょぉ~」
フタ揃えのジャージに着替えたクローザーの女がリビングソファーで仰向け、ファティマの帰りを今か今かと待ちわびていた。
するとテーブルを挟んで対面するソファーに座り、本を読みふけっていたクローザーの男が本から目は離さず、
「今日も稽古でござるかぁ?」
今更の様な問いに、女は口元に妖艶な笑みを浮かべ、
「何でありんすぅ~? ヌシも混ざりたくなったでありんすかぁ~?」
からかい口調で遠回しに誘いを掛けたが、男は本から目を離さず、
「オナゴの稽古に混ざる趣意はござらんよぉ」
女は半身起き上がり、
「近頃は、男の子(おのこ)の希望もありんすぇ」
「オナゴ目当てでござろぅ。それに……」
「それに?」
見つめると、男は本からゆっくり視線を上げ、
「敵から教えを乞う程、拙者は落ちぶれてござらん」
見据える目には敵対心がアリアリと浮かび上がっていた。
(久々に見る目でありんすな……)
冗談が通じる状況ではないと悟ったが、あえて冗談めいた空気は消さず、
「昔と変わらず固いでありんすなぁ~」
皮肉る様な笑みを浮かべてお茶を濁そうとすると、
「お主の腕もその気構え同様、緩んでないと良いでござるがなぁ」
「ッ!」
一瞬にしてヒリつく空気。
女は妖艶な笑みを浮かべた口元と相反する、鋭い視線を向け、
「試してみるでありんすかぇ?」
しかし男は飄々とした口調で、
「今は、止めておくでござるよ」
本に視線を戻し、
「お主との決着は、全てのスティーラーとクローザーを倒してからにするでござるよ」
「…………」
矛を収める様子から、女も一先ず矛を収めたが、
(何でありんしょう……この不穏な気配……)
男の全身から滲み出る様な殺気の様なモノに、警戒心を解ききれずにいた。
すると間を置かず、部屋の扉がガチャリと開き、
「ただいま、なぉぅ……」
思い悩むファティマの暗い挨拶が言い終わるのが先か、一瞬の出来事。
「!」
本を読んでいた筈の男は一瞬のうちにファティマに迫り、抜刀した刃先は彼女の細い首筋に。
コンマ何秒は何十秒に感じられ、冷たい刃先の感覚は脳内へと送られ、
(しぬ(死ぬ)なぉぅ)
死を直感した刹那、
ギャリィィィン!
刃は水平に打ち返され、
「何をするでありんす!!」
懐刀の様な短刀を手に身構え、身を挺して男の前に仁王立ちするクローザーの女。
後背に迦楼羅炎が逆巻くが如く、憤怒の形相で猛り狂う姿は、まるで「不動明王」。
「ファティ坊はまだでありんしょぉ~」
フタ揃えのジャージに着替えたクローザーの女がリビングソファーで仰向け、ファティマの帰りを今か今かと待ちわびていた。
するとテーブルを挟んで対面するソファーに座り、本を読みふけっていたクローザーの男が本から目は離さず、
「今日も稽古でござるかぁ?」
今更の様な問いに、女は口元に妖艶な笑みを浮かべ、
「何でありんすぅ~? ヌシも混ざりたくなったでありんすかぁ~?」
からかい口調で遠回しに誘いを掛けたが、男は本から目を離さず、
「オナゴの稽古に混ざる趣意はござらんよぉ」
女は半身起き上がり、
「近頃は、男の子(おのこ)の希望もありんすぇ」
「オナゴ目当てでござろぅ。それに……」
「それに?」
見つめると、男は本からゆっくり視線を上げ、
「敵から教えを乞う程、拙者は落ちぶれてござらん」
見据える目には敵対心がアリアリと浮かび上がっていた。
(久々に見る目でありんすな……)
冗談が通じる状況ではないと悟ったが、あえて冗談めいた空気は消さず、
「昔と変わらず固いでありんすなぁ~」
皮肉る様な笑みを浮かべてお茶を濁そうとすると、
「お主の腕もその気構え同様、緩んでないと良いでござるがなぁ」
「ッ!」
一瞬にしてヒリつく空気。
女は妖艶な笑みを浮かべた口元と相反する、鋭い視線を向け、
「試してみるでありんすかぇ?」
しかし男は飄々とした口調で、
「今は、止めておくでござるよ」
本に視線を戻し、
「お主との決着は、全てのスティーラーとクローザーを倒してからにするでござるよ」
「…………」
矛を収める様子から、女も一先ず矛を収めたが、
(何でありんしょう……この不穏な気配……)
男の全身から滲み出る様な殺気の様なモノに、警戒心を解ききれずにいた。
すると間を置かず、部屋の扉がガチャリと開き、
「ただいま、なぉぅ……」
思い悩むファティマの暗い挨拶が言い終わるのが先か、一瞬の出来事。
「!」
本を読んでいた筈の男は一瞬のうちにファティマに迫り、抜刀した刃先は彼女の細い首筋に。
コンマ何秒は何十秒に感じられ、冷たい刃先の感覚は脳内へと送られ、
(しぬ(死ぬ)なぉぅ)
死を直感した刹那、
ギャリィィィン!
刃は水平に打ち返され、
「何をするでありんす!!」
懐刀の様な短刀を手に身構え、身を挺して男の前に仁王立ちするクローザーの女。
後背に迦楼羅炎が逆巻くが如く、憤怒の形相で猛り狂う姿は、まるで「不動明王」。
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