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14_歪の章_24
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数時間後の夕刻――
とあるホテルの一室から聞こえる、コーギーの明るい笑い声。
すると両手にティーカップを持ったヴァイオレットがキッチンから姿を現し、
「笑い事では、ございませんでございますですわぁ」
少し気分を害した様に、リビングのソファーで愉快そうに笑うコーギーの前に、そぉっと置いた。
「あはははは。すぅ、すみませぇん、まさか冗談が本当になるとはぁ、さぁ、流石に思っていなかったのでぇ……あははは!」
「わ、笑い過ぎでございますですわよぉ」
話は少し前にさかのぼり、稽古を盗み見る不審者の存在に懸念を抱き、集団から一人離れたファティマの後を追い掛けたヴァイオレット。
しかし懸念は現実のモノとなり、彼女がファティマの下に辿り着いた時、ファティマは今まさに、男数人の手により物陰へ連れ込まれようかと言う直前であった。
(どうして、あたくしの行く先々ではこうもぉ!)
コーギーのからかい笑う姿が目に浮かび腹を立てるも、今はそれどころではない。
「お止めなさい! 幼女一人に何をしているのでございますです!」
普通の人間にしか見えない暴漢男三人をひねり倒す事など、クローザーの彼女にとって造作も無い事であったが、周囲に町の人々の眼がある中、下手に実力を披露する訳にもいかず、
(あたくしに「手加減」などと言う気の利いた振る舞いが、出来ますでございますでしょうかぁ)
一抹の不安を抱えつつ、意図的に、アナクスの下で教わっている護身術で身構え、
(背後関係を調べる為にも、一人として逃す訳にはいきませんでございますですわぁ)
「そうなりますですとぉ!」
ヴァイオレットは向かって来た暴漢男Aが伸ばした手をすり抜けると、膝の側面に鋭い蹴りを入れ、
「イデェぇえェ!」
膝を抱えて転げまわる男を見下ろし、
「逃げ足を封じますでございますですわァ!」
「テメェ!」
「オンナァ! やりやがったなァ!」
仲間を倒され、激昂する暴漢男BとC。
本来の目的であるファティマを放置し、いかつい顔してヴァイオレットにナイフの刃先を向けた。
「はぁ……いつの時代も「三下の暴漢」と言うモノはぁ」
呆れたため息に、
「ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇぇええぇぇぇ!」
「覚悟しろやぁあぁっぁぁ!」
猪突の如き猛進をして襲い掛かると、ヴァイオレットはBとCの連続攻撃を体さばきのみで、いとも容易くかわし、
「大の大人が三人して、幼女を手に掛けようなど恥を知りなさいでございますですわぁ!」
表情を激怒に一変。
暴漢男Bのみぞおちに右掌底、
「ケハァハッっ」
返す左拳で、暴漢男Cの右腹の局所を、
「クァカァアァぁアぁ!」
的確に撃ち抜いた。
呼吸が出来ず、地面を何度も叩いて悶絶する暴漢男Bと、腹を押さえ転げまわる暴漢男C。ボクシングブローの一つ「リバーブロー」、肋骨から少し顔出す肝臓の端をピンポイントで殴られたのである。暴漢男Aの痛みなどナマ優しく思える程の地獄の苦しみ。
そこへ騒ぎを聞きつけた警察官たちがやって来て、ヴァイオレットは被害者であるファティマと、加害者である暴漢男三人と共に警察署へ移動した。
とあるホテルの一室から聞こえる、コーギーの明るい笑い声。
すると両手にティーカップを持ったヴァイオレットがキッチンから姿を現し、
「笑い事では、ございませんでございますですわぁ」
少し気分を害した様に、リビングのソファーで愉快そうに笑うコーギーの前に、そぉっと置いた。
「あはははは。すぅ、すみませぇん、まさか冗談が本当になるとはぁ、さぁ、流石に思っていなかったのでぇ……あははは!」
「わ、笑い過ぎでございますですわよぉ」
話は少し前にさかのぼり、稽古を盗み見る不審者の存在に懸念を抱き、集団から一人離れたファティマの後を追い掛けたヴァイオレット。
しかし懸念は現実のモノとなり、彼女がファティマの下に辿り着いた時、ファティマは今まさに、男数人の手により物陰へ連れ込まれようかと言う直前であった。
(どうして、あたくしの行く先々ではこうもぉ!)
コーギーのからかい笑う姿が目に浮かび腹を立てるも、今はそれどころではない。
「お止めなさい! 幼女一人に何をしているのでございますです!」
普通の人間にしか見えない暴漢男三人をひねり倒す事など、クローザーの彼女にとって造作も無い事であったが、周囲に町の人々の眼がある中、下手に実力を披露する訳にもいかず、
(あたくしに「手加減」などと言う気の利いた振る舞いが、出来ますでございますでしょうかぁ)
一抹の不安を抱えつつ、意図的に、アナクスの下で教わっている護身術で身構え、
(背後関係を調べる為にも、一人として逃す訳にはいきませんでございますですわぁ)
「そうなりますですとぉ!」
ヴァイオレットは向かって来た暴漢男Aが伸ばした手をすり抜けると、膝の側面に鋭い蹴りを入れ、
「イデェぇえェ!」
膝を抱えて転げまわる男を見下ろし、
「逃げ足を封じますでございますですわァ!」
「テメェ!」
「オンナァ! やりやがったなァ!」
仲間を倒され、激昂する暴漢男BとC。
本来の目的であるファティマを放置し、いかつい顔してヴァイオレットにナイフの刃先を向けた。
「はぁ……いつの時代も「三下の暴漢」と言うモノはぁ」
呆れたため息に、
「ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇぇええぇぇぇ!」
「覚悟しろやぁあぁっぁぁ!」
猪突の如き猛進をして襲い掛かると、ヴァイオレットはBとCの連続攻撃を体さばきのみで、いとも容易くかわし、
「大の大人が三人して、幼女を手に掛けようなど恥を知りなさいでございますですわぁ!」
表情を激怒に一変。
暴漢男Bのみぞおちに右掌底、
「ケハァハッっ」
返す左拳で、暴漢男Cの右腹の局所を、
「クァカァアァぁアぁ!」
的確に撃ち抜いた。
呼吸が出来ず、地面を何度も叩いて悶絶する暴漢男Bと、腹を押さえ転げまわる暴漢男C。ボクシングブローの一つ「リバーブロー」、肋骨から少し顔出す肝臓の端をピンポイントで殴られたのである。暴漢男Aの痛みなどナマ優しく思える程の地獄の苦しみ。
そこへ騒ぎを聞きつけた警察官たちがやって来て、ヴァイオレットは被害者であるファティマと、加害者である暴漢男三人と共に警察署へ移動した。
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