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15_宿縁の章_45
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ブリッジではマシューにエスコートされたナクアがイノウエ艦長に近づき、
「艦長、そろそろ」
その一声で、
「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」
一斉に表情が固くなるブリッジクルー達。視線が自然とイノウエ艦長に集まると、
「分かっています。ミスナクア」
イノウエ艦長は小さく頷き、
「武器管制長。制御を私の下へ」
「イエスサー、艦長……お心のままに……」
相も変らぬクルスの変貌ぶり。
戦闘時とは別人の様に、物静かに胸元で十字を切ると、自席の操作パネルにタッチ。表示されていた何かの画像が消え、同じ画像が艦長の席の操作パネルに現れた。
「艦長……」
不安げに見つめるソフィア。
その眼差しに、イノウエ艦長は静かに頷き、自身のヘッドセットを操作、
『艦長のイノウエだ』
声は艦内各所の壁面スピーカーを通して隅々にまで響き渡り、各所の乗組員たちが慣れぬ無重力下で耳を傾ける中、
『本艦はこれより、地球における最後の任務を敢行する』
「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」
何が行われるか知っているのか、三者三様、十人十色の驚きを以って受け止める乗組員たち。
『未だ割り切れぬ者もあろぅ……しかし全ての責任は、決断を下した「長たる私」にある。故に、これから皆が背負う『業』に耐え切れない者がいたならば、その者は自責の念に囚われず、私を恨んでくれて構わない!』
「かの者は、何を言うておるのでありんす?」
妖艶な笑みの中に、怪訝を交えるワイスカムア。
「して、ヌシも言うておった『業』とは?」
問われたジゼは苦悩が見て取れる顔を向け、
「アナタは、今の地球がどんな状況か知ってる?」
「何を言うやと思いや……」
妖艶な冷笑を浮かべ、
「詰まらぬ事を聞くものでありんすなぁ」
鼻先で笑い飛ばそうとするワイスカムであったが、向けられた真剣な眼差しに、呆れ交じりの息を小さく一つ吐き、
「妾にとって今の世など、坊(ファティマ)以外に興味ありんせぇん」
「そう……幸せな事ね」
「?」
「私達には「あの世界(地球)」に、お世話になった、大好きな人達や町が沢山あったの……」
(あった?)
「過去形にありんすなぁ」
「…………」
答えないジゼは視線を落とし、
「核戦争の後の混乱は続いてはいたけど、世界は少しずつ……少しずつだけど未来に向かって歩んでいたの……でもそれを崩したモノがある!」
表情が急に険しくなり、
「私達、スティーラーとクローザーの存在だよォ!」
苦しむ様に自身の胸元を握り締め、
「私たちの体は、科学は、今の人達に早過ぎたの! チカラの均衡が崩れた今の地球を見てぇ!」
世界中の諍いは変わらずにしても、ガルシアの去った南極では、かつて無い程の「激戦」が繰り広げられていた。
「艦長、そろそろ」
その一声で、
「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」
一斉に表情が固くなるブリッジクルー達。視線が自然とイノウエ艦長に集まると、
「分かっています。ミスナクア」
イノウエ艦長は小さく頷き、
「武器管制長。制御を私の下へ」
「イエスサー、艦長……お心のままに……」
相も変らぬクルスの変貌ぶり。
戦闘時とは別人の様に、物静かに胸元で十字を切ると、自席の操作パネルにタッチ。表示されていた何かの画像が消え、同じ画像が艦長の席の操作パネルに現れた。
「艦長……」
不安げに見つめるソフィア。
その眼差しに、イノウエ艦長は静かに頷き、自身のヘッドセットを操作、
『艦長のイノウエだ』
声は艦内各所の壁面スピーカーを通して隅々にまで響き渡り、各所の乗組員たちが慣れぬ無重力下で耳を傾ける中、
『本艦はこれより、地球における最後の任務を敢行する』
「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」
何が行われるか知っているのか、三者三様、十人十色の驚きを以って受け止める乗組員たち。
『未だ割り切れぬ者もあろぅ……しかし全ての責任は、決断を下した「長たる私」にある。故に、これから皆が背負う『業』に耐え切れない者がいたならば、その者は自責の念に囚われず、私を恨んでくれて構わない!』
「かの者は、何を言うておるのでありんす?」
妖艶な笑みの中に、怪訝を交えるワイスカムア。
「して、ヌシも言うておった『業』とは?」
問われたジゼは苦悩が見て取れる顔を向け、
「アナタは、今の地球がどんな状況か知ってる?」
「何を言うやと思いや……」
妖艶な冷笑を浮かべ、
「詰まらぬ事を聞くものでありんすなぁ」
鼻先で笑い飛ばそうとするワイスカムであったが、向けられた真剣な眼差しに、呆れ交じりの息を小さく一つ吐き、
「妾にとって今の世など、坊(ファティマ)以外に興味ありんせぇん」
「そう……幸せな事ね」
「?」
「私達には「あの世界(地球)」に、お世話になった、大好きな人達や町が沢山あったの……」
(あった?)
「過去形にありんすなぁ」
「…………」
答えないジゼは視線を落とし、
「核戦争の後の混乱は続いてはいたけど、世界は少しずつ……少しずつだけど未来に向かって歩んでいたの……でもそれを崩したモノがある!」
表情が急に険しくなり、
「私達、スティーラーとクローザーの存在だよォ!」
苦しむ様に自身の胸元を握り締め、
「私たちの体は、科学は、今の人達に早過ぎたの! チカラの均衡が崩れた今の地球を見てぇ!」
世界中の諍いは変わらずにしても、ガルシアの去った南極では、かつて無い程の「激戦」が繰り広げられていた。
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