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まほうのことば
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1ねん2くみ・いけだ たかし
1995・8/1(どようび)
ぼくはきょう7さいになりました。たんじょうびぷれぜんとに、おとうさんからげーむをかってもらいました。
すーぱーまるおぶらざーず3というげーむです。
だからなつやすみのじゆうけんきゅうで、げーむのにっきをかこうとおもいます。
めがわるくなるので、1にち1じかんだけというるーるを、おかあさんときめました。
1995・8/2(にちようび)
きょうはおとうさんが、しごとをやすみなのでいっしょにげーむをしました。
おとうさんはげーむをつくるしごとをしているので、げーむがとてもうまいです。
Aぼたんをおすとじゃんぷできます。
きょうは3めんまでくりあしました。
すごくおもしろかったです。
1995・8/3(げつようび)
きょうはひとりでげーむをしました。
6めんがどうしてもくりあできなかったので、おとうさんにやりかたをきいてみたいとおもいます。
きのこをとると、おおきくなります。
1995・8/4(かようび)
きのうはおとうさんのかえりがおそくて、6めんのやりかたをきけませんでした。
なのでくりあしためんをなんどもやりました。
ちゃいろいおにぎりみたいなてきをじゃんぷしてふむと、やっつけることができます。
たかしへ
きのうきょうと、かえるのがおそくなってごめんな。
6めんのどこがわからないのかな?
おとうさんより
1995・8/5(すいようび)
おとうさんからにっきでおてがみがありました。あしたは6めんをくりあできるとおもいます。
きょうもできるめんをなんどもやりました。
ちゃいろいはっぱをとると、まるおにしっぽがはえます。
おとうさんへ
6めんのとちゅうに、ちゃいろいおにぎりみたいなてきがいっぱいいて、なんかいやってもしんじゃう。
どうしたらいいの。
たかしより
たかしへ
そこはBボタンをおしながらよこをおすとはしれるから、そのいきおいでAボタンをおしてジャンプするとクルボー(ちゃいろいおにぎりみたいなてき)をとびこえれるよ。
ひっさつ『Bダッシュジャンプ』だ!
できるまでなんかいもやってみてね。
おとうさんより
1995・8/6(もくようび)
おとうさんからへんじがありました。おとうさんのいっていたやりかたでやったら6めんをくりあできました。
Bだっしゅじゃんぷはすごいひっさつわざです。
ちゃいろいはっぱをとって、しっぽがあるときにBだっしゅじゃんぷをして、Aぼたんをなんかいもおすとそらをとぶことができました。
だいはっけんです。
おとうさんありがとう。
1995・8/7(きんようび)
きょうはげーむをしすぎておかあさんにおこられました。1じかんだけというるーるをまもれなかったからです。
こんせんとにさす、ACあだぷたあというものをかくされました。
おかあさんのことが、だいきらいです。
たかしへ
おかあさんにおこられていやだったな。でもおかあさんはたかしのことがだいすきだからおこったんだとおもうよ。げーむをやりすぎるとめがわるくなってこまるから、たかしにはこまってほしくなかったんだね。
そんなたかしにおとうさんが【まほうのことば】をおしえてあげよう!
それは『ごめんなさい』と『ありがとう』です。
このことばをいうといやなきもちがなくなって、なかなおりできるし、みんながえがおになれるよ。
おとうさんより
1995・8/8(どようび)
おとうさんがおしえてくれたまほうのことばをいったら、おかあさんとなかなおりができました。
おかあさんもACあだぷたあをかくしてごめんねと、いってくれました。
おとうさんはきょうもおしごとだったけど、どようびだからはやくかえってきました。
すこしいっしょにげーむができました。
よるごはんは、ぼくのだいすきなはんばーぐをおかあさんがつくってくれました。
みんなでたべるはんばーぐはすごくおいしかったです。
おかあさんとおとうさんがだいすきです。
1995・8/9(にちようび)
きょうはおとうさんがやすみなのでいっぱいいっしょにげーむをしました。
おとうさんといっしょだと、たくさんくりあできて、わあるど2までくりあできました。
はなのあいてむをとると、ひのたまをだせるようになります。
すごくつよいです。
1995・8/23(にちようび)
きょうは、さいごのぼすをたおすことができました。
さいごはぼくひとりでくりあしたいといったら、おとうさんはがんばれーと、ずっとおうえんしてくれました。
むずかしかったけど、すごくたのしかったです。
すーぱーまるおぶらざーず3をぜんぶくりあしたので、ちがうげーむをかってもらいたいです。
これでぼくのなつやすみのじゆうけんきゅうはおわりです。
1995・9/15
きょうちがうげーむをかってもらいました。
ドラグンクエスト4というげーむです。
なつやすみのじゆうけんきゅうはおわったけど、かえりのおそいおとうさんに、またやりかたをおしえてもらいたいのでにっきをかくことにしました。
1995・9/20
きょうはてきをいっぱいたおして、れべるあげをしました。ろいあんが8れべるになりました。
おとうさんへ
みなみとひがしがわからない。どっちにあるけばいいかおしえて。
たかしより
たかしへ
みなみは↓で、ひがしは→だよ。あと、きたは↑で、にしは←。このあともでてくるとおもうからおぼえておくように!
おとうさんより
1995・9/30
きょう、だい2しょうをくりあしました。
とうぎじょうの、しろいゆきだるまみたいなてきがつよかったです。
1996・4/3
さいきんは、むにおくんというゲームをしています。
パンチしたりキックしたり、たたかうゲームははじめてなのでおもしろいです。
あと、おとうさんがチーフディレクターというえらい人になりました。
かっこいいです。
1996・8/1
今日、8さいになりました。たんじょう日プレゼントで、スーパーフィミコンとマルオカートをかってもらいました。
ひさしぶりにお父さんとゲームができて楽しかったです。
1996・8/6
もうすこしで50ccをクリアできそうです。
お父さんはしごとがいそがしくて、なかなか家にかえってこれなくなりました。
お父さんへ
ぼくはマルオを使ってるんだけど、いちばんはやいキャラってなにかな?
たかしより
1996・8/8
マルオで、50ccをクリアしました。
お父さんからへんじがかえってこなくなりました。
1996・8/20
150ccもついにクリアしました。
お父さんとお母さんは、りこんしました。
ぼくはお母さんとくらすことになりました。
1997・8/1
今日9さいになりました。
ウッホーコングというゲームをお母さんが、プレゼントしてくれました。
友だちといっしょにできるからすごく楽しい。
2003・9/3
ラストファンタジー7を全クリ!
ラストで泣いてしまったぁ!
てか学校とかどうでもよくなってきたなぁ。
めんどくさいから行くのやめよう。
なんか久しぶりに日記書いたけど、これからも何かあったら書いていこうと思う。
2003・9/6
母さんが、泣きながら学校行こうって言ってきた。
あんたが離婚したせいだろ。
あーめんどくせぇ。
次は何のゲームやろうかな。
2005・8/1
17歳になった。部屋の外に『happy birthday』と書かれたイチゴのショートケーキが置かれていた。
通信制の高校に通っている俺に、おめでとうなんていう友達もいなく、一通のメールがパソコンに届いた。
メールにはMMO RPG『マギノギ』の無料ダウンロードURLが添付されていた。
特にやることもなかったからダウンロードした。
2005・8/2
マギノギにログインをするとフレンド申請がきていた。
『イケダディー』という意味不明なユーザー名の人だったが、チャットでやりとりしているとすごく親切で優しい人だった。
彼と初心者用のクエストをいくつかまわった。
誰かとゲームをしたのは久しぶりだったけど、すごく面白かった。
なんだか、小学校の頃、父さんとゲームしたのを少し思い出してしまった。
2005・8/28
配信中のクエストを全てコンプリート。
俺とイケダディーさんのコンビネーションは抜群だし、スキルの相性も良い!
チャットでお互いのプライベートの話も結構して、進路について相談すると、色々教えてくれた。
俺が好きなのはやっぱりゲームだから、それに携わるために進学した方が良い学校も紹介してくれた。
その為に必要な進学資金、それを用意してくれる親の苦労なども。
他の大人から言われると反論したくなるんだけど、不思議とイケダディーさんの言葉は素直に聞けた。
だから少しビックリしたんだ。
『ごめんなさい』と『ありがとう』は【まほうのことば】なんだよって言われた時は……。
2005・8/29
久しぶりに部屋から出て、母さんに進学したい学校を伝えた。俺の顔を久々に見た母さんは泣いていた。
俺はずっと引きこもっていて、沢山心配をかけたことに対して『ごめんなさい』と伝え、そんな俺を見捨てず、女手一つで育ててくれたことに対して『ありがとう』と伝えた。
母さんはいつのまにか俺より小さくなったその体で、俺を力一杯抱きしめた。
恥ずかしかったけど嬉しかった。
夜ご飯は俺の大好きなハンバーグを母さんが作ってくれて一緒に食べた。
すごく美味しかったけど、涙をこらえるのに必死だった。
2005・8/30
マギノギにログインして、イケダディーさんに昨日のことを伝えた。
お礼を直接、電話でしたいと言うと快く電話番号を教えてくれた。
電話が繋がるとすぐに「父さんなんでしょ?」と聞いた。
少し間があいて、ビックリしている様子だったけどイケダディーさんは……いや、父さんはあっさり認めた。
その後、沢山話をしてくれた。
チーフディレクターになって仕事が忙しくなったこと。
そしてそれが原因で母さんと離婚することになったこと。
それでも毎年俺の誕生日には、自分が携わったゲームソフトを欠かさずプレゼントしてくれていたこと。
マギノギを通して俺と連絡をとりたかったこと。
俺を愛しているということ。
ここでも『ごめんね』と『ありがとう』という【まほうのことば】は俺と父さんの間にあった時間を埋めてくれた。
2011・4/5
俺の部署にキャラクターデザインとして、女の子が配属されてきた。
少しドジで天然なところはあるが、仕事に対して真っ直ぐで一生懸命な子だった。
そんな彼女が「面白いんです」とスマホのゲームを教えてくれた。
リセマラを終えて、少しプレイしたがシステムが斬新で凄く面白かった。
2011・12/24
仕事終わりに職場のみんなとスマホのゲームをした。彼女の教えてくれたアプリは職場内でも流行して、よくみんなで協力プレイをした。
それもあってうちの部署はかなり連携もとれて良い状態で仕事ができていた。
これなら、年明けにウチの会社から発売するゲームも問題なく進められるだろう。
みんなで協力プレイをした後に、彼女と2人でご飯を食べに行った。2人になってもやっぱりゲームやキャラクターデザインの話ばかりだったが、好きなことだったし、何よりも彼女と一緒にいるとそれだけで凄く楽しかった。
2013・8/15
結婚した俺と彼女の間に元気な男の子が産まれた。
彼女とこの子を幸せにしたいと心から思った。
2016・4/3
上司に呼ばれ「チーフディレクターをやってみないか」と言われたが断った。
もちろんチーフディレクターを任せてもらえるのは光栄だったけど、今の俺にはそれよりも大切なものがあった。
妻も俺の考えに納得してくれた。
2019・2/19
今日は仕事が休みなので息子とゲームをした。ニンタンドーswotchのNewスーパーマルオブラザーズだ。
楽しそうにゲームをする息子を見て、思わず笑ってしまった。
そんな俺の顔を見て息子が「おとうさん、いつもいーっぱいあそんでくれて、ありがとう」と言ってくれた。
俺は嬉しくなって息子に「いつも元気いっぱいで、沢山笑顔を見せてくれてありがとう」と返した。
俺たち2人の姿を妻は台所から優しい笑顔で見守っていた。ハンバーグをこねながら。
ゲームを終え、食事の準備をすると妻が「ごめん! ご飯炊くの忘れてた!」と謝ってきた。
俺と息子は顔を見合わせて笑ってしまった。
妻のドジは今に始まったことではない。
息子が「じゃあぼくが炊いてあげる」と米を研いだ。
今度は俺と妻が顔を見合わせて笑ってしまった。
父さんが教えてくれた【まほうのことば】は、今日も我が家を笑顔に変えてくれていた。
1995・8/1(どようび)
ぼくはきょう7さいになりました。たんじょうびぷれぜんとに、おとうさんからげーむをかってもらいました。
すーぱーまるおぶらざーず3というげーむです。
だからなつやすみのじゆうけんきゅうで、げーむのにっきをかこうとおもいます。
めがわるくなるので、1にち1じかんだけというるーるを、おかあさんときめました。
1995・8/2(にちようび)
きょうはおとうさんが、しごとをやすみなのでいっしょにげーむをしました。
おとうさんはげーむをつくるしごとをしているので、げーむがとてもうまいです。
Aぼたんをおすとじゃんぷできます。
きょうは3めんまでくりあしました。
すごくおもしろかったです。
1995・8/3(げつようび)
きょうはひとりでげーむをしました。
6めんがどうしてもくりあできなかったので、おとうさんにやりかたをきいてみたいとおもいます。
きのこをとると、おおきくなります。
1995・8/4(かようび)
きのうはおとうさんのかえりがおそくて、6めんのやりかたをきけませんでした。
なのでくりあしためんをなんどもやりました。
ちゃいろいおにぎりみたいなてきをじゃんぷしてふむと、やっつけることができます。
たかしへ
きのうきょうと、かえるのがおそくなってごめんな。
6めんのどこがわからないのかな?
おとうさんより
1995・8/5(すいようび)
おとうさんからにっきでおてがみがありました。あしたは6めんをくりあできるとおもいます。
きょうもできるめんをなんどもやりました。
ちゃいろいはっぱをとると、まるおにしっぽがはえます。
おとうさんへ
6めんのとちゅうに、ちゃいろいおにぎりみたいなてきがいっぱいいて、なんかいやってもしんじゃう。
どうしたらいいの。
たかしより
たかしへ
そこはBボタンをおしながらよこをおすとはしれるから、そのいきおいでAボタンをおしてジャンプするとクルボー(ちゃいろいおにぎりみたいなてき)をとびこえれるよ。
ひっさつ『Bダッシュジャンプ』だ!
できるまでなんかいもやってみてね。
おとうさんより
1995・8/6(もくようび)
おとうさんからへんじがありました。おとうさんのいっていたやりかたでやったら6めんをくりあできました。
Bだっしゅじゃんぷはすごいひっさつわざです。
ちゃいろいはっぱをとって、しっぽがあるときにBだっしゅじゃんぷをして、Aぼたんをなんかいもおすとそらをとぶことができました。
だいはっけんです。
おとうさんありがとう。
1995・8/7(きんようび)
きょうはげーむをしすぎておかあさんにおこられました。1じかんだけというるーるをまもれなかったからです。
こんせんとにさす、ACあだぷたあというものをかくされました。
おかあさんのことが、だいきらいです。
たかしへ
おかあさんにおこられていやだったな。でもおかあさんはたかしのことがだいすきだからおこったんだとおもうよ。げーむをやりすぎるとめがわるくなってこまるから、たかしにはこまってほしくなかったんだね。
そんなたかしにおとうさんが【まほうのことば】をおしえてあげよう!
それは『ごめんなさい』と『ありがとう』です。
このことばをいうといやなきもちがなくなって、なかなおりできるし、みんながえがおになれるよ。
おとうさんより
1995・8/8(どようび)
おとうさんがおしえてくれたまほうのことばをいったら、おかあさんとなかなおりができました。
おかあさんもACあだぷたあをかくしてごめんねと、いってくれました。
おとうさんはきょうもおしごとだったけど、どようびだからはやくかえってきました。
すこしいっしょにげーむができました。
よるごはんは、ぼくのだいすきなはんばーぐをおかあさんがつくってくれました。
みんなでたべるはんばーぐはすごくおいしかったです。
おかあさんとおとうさんがだいすきです。
1995・8/9(にちようび)
きょうはおとうさんがやすみなのでいっぱいいっしょにげーむをしました。
おとうさんといっしょだと、たくさんくりあできて、わあるど2までくりあできました。
はなのあいてむをとると、ひのたまをだせるようになります。
すごくつよいです。
1995・8/23(にちようび)
きょうは、さいごのぼすをたおすことができました。
さいごはぼくひとりでくりあしたいといったら、おとうさんはがんばれーと、ずっとおうえんしてくれました。
むずかしかったけど、すごくたのしかったです。
すーぱーまるおぶらざーず3をぜんぶくりあしたので、ちがうげーむをかってもらいたいです。
これでぼくのなつやすみのじゆうけんきゅうはおわりです。
1995・9/15
きょうちがうげーむをかってもらいました。
ドラグンクエスト4というげーむです。
なつやすみのじゆうけんきゅうはおわったけど、かえりのおそいおとうさんに、またやりかたをおしえてもらいたいのでにっきをかくことにしました。
1995・9/20
きょうはてきをいっぱいたおして、れべるあげをしました。ろいあんが8れべるになりました。
おとうさんへ
みなみとひがしがわからない。どっちにあるけばいいかおしえて。
たかしより
たかしへ
みなみは↓で、ひがしは→だよ。あと、きたは↑で、にしは←。このあともでてくるとおもうからおぼえておくように!
おとうさんより
1995・9/30
きょう、だい2しょうをくりあしました。
とうぎじょうの、しろいゆきだるまみたいなてきがつよかったです。
1996・4/3
さいきんは、むにおくんというゲームをしています。
パンチしたりキックしたり、たたかうゲームははじめてなのでおもしろいです。
あと、おとうさんがチーフディレクターというえらい人になりました。
かっこいいです。
1996・8/1
今日、8さいになりました。たんじょう日プレゼントで、スーパーフィミコンとマルオカートをかってもらいました。
ひさしぶりにお父さんとゲームができて楽しかったです。
1996・8/6
もうすこしで50ccをクリアできそうです。
お父さんはしごとがいそがしくて、なかなか家にかえってこれなくなりました。
お父さんへ
ぼくはマルオを使ってるんだけど、いちばんはやいキャラってなにかな?
たかしより
1996・8/8
マルオで、50ccをクリアしました。
お父さんからへんじがかえってこなくなりました。
1996・8/20
150ccもついにクリアしました。
お父さんとお母さんは、りこんしました。
ぼくはお母さんとくらすことになりました。
1997・8/1
今日9さいになりました。
ウッホーコングというゲームをお母さんが、プレゼントしてくれました。
友だちといっしょにできるからすごく楽しい。
2003・9/3
ラストファンタジー7を全クリ!
ラストで泣いてしまったぁ!
てか学校とかどうでもよくなってきたなぁ。
めんどくさいから行くのやめよう。
なんか久しぶりに日記書いたけど、これからも何かあったら書いていこうと思う。
2003・9/6
母さんが、泣きながら学校行こうって言ってきた。
あんたが離婚したせいだろ。
あーめんどくせぇ。
次は何のゲームやろうかな。
2005・8/1
17歳になった。部屋の外に『happy birthday』と書かれたイチゴのショートケーキが置かれていた。
通信制の高校に通っている俺に、おめでとうなんていう友達もいなく、一通のメールがパソコンに届いた。
メールにはMMO RPG『マギノギ』の無料ダウンロードURLが添付されていた。
特にやることもなかったからダウンロードした。
2005・8/2
マギノギにログインをするとフレンド申請がきていた。
『イケダディー』という意味不明なユーザー名の人だったが、チャットでやりとりしているとすごく親切で優しい人だった。
彼と初心者用のクエストをいくつかまわった。
誰かとゲームをしたのは久しぶりだったけど、すごく面白かった。
なんだか、小学校の頃、父さんとゲームしたのを少し思い出してしまった。
2005・8/28
配信中のクエストを全てコンプリート。
俺とイケダディーさんのコンビネーションは抜群だし、スキルの相性も良い!
チャットでお互いのプライベートの話も結構して、進路について相談すると、色々教えてくれた。
俺が好きなのはやっぱりゲームだから、それに携わるために進学した方が良い学校も紹介してくれた。
その為に必要な進学資金、それを用意してくれる親の苦労なども。
他の大人から言われると反論したくなるんだけど、不思議とイケダディーさんの言葉は素直に聞けた。
だから少しビックリしたんだ。
『ごめんなさい』と『ありがとう』は【まほうのことば】なんだよって言われた時は……。
2005・8/29
久しぶりに部屋から出て、母さんに進学したい学校を伝えた。俺の顔を久々に見た母さんは泣いていた。
俺はずっと引きこもっていて、沢山心配をかけたことに対して『ごめんなさい』と伝え、そんな俺を見捨てず、女手一つで育ててくれたことに対して『ありがとう』と伝えた。
母さんはいつのまにか俺より小さくなったその体で、俺を力一杯抱きしめた。
恥ずかしかったけど嬉しかった。
夜ご飯は俺の大好きなハンバーグを母さんが作ってくれて一緒に食べた。
すごく美味しかったけど、涙をこらえるのに必死だった。
2005・8/30
マギノギにログインして、イケダディーさんに昨日のことを伝えた。
お礼を直接、電話でしたいと言うと快く電話番号を教えてくれた。
電話が繋がるとすぐに「父さんなんでしょ?」と聞いた。
少し間があいて、ビックリしている様子だったけどイケダディーさんは……いや、父さんはあっさり認めた。
その後、沢山話をしてくれた。
チーフディレクターになって仕事が忙しくなったこと。
そしてそれが原因で母さんと離婚することになったこと。
それでも毎年俺の誕生日には、自分が携わったゲームソフトを欠かさずプレゼントしてくれていたこと。
マギノギを通して俺と連絡をとりたかったこと。
俺を愛しているということ。
ここでも『ごめんね』と『ありがとう』という【まほうのことば】は俺と父さんの間にあった時間を埋めてくれた。
2011・4/5
俺の部署にキャラクターデザインとして、女の子が配属されてきた。
少しドジで天然なところはあるが、仕事に対して真っ直ぐで一生懸命な子だった。
そんな彼女が「面白いんです」とスマホのゲームを教えてくれた。
リセマラを終えて、少しプレイしたがシステムが斬新で凄く面白かった。
2011・12/24
仕事終わりに職場のみんなとスマホのゲームをした。彼女の教えてくれたアプリは職場内でも流行して、よくみんなで協力プレイをした。
それもあってうちの部署はかなり連携もとれて良い状態で仕事ができていた。
これなら、年明けにウチの会社から発売するゲームも問題なく進められるだろう。
みんなで協力プレイをした後に、彼女と2人でご飯を食べに行った。2人になってもやっぱりゲームやキャラクターデザインの話ばかりだったが、好きなことだったし、何よりも彼女と一緒にいるとそれだけで凄く楽しかった。
2013・8/15
結婚した俺と彼女の間に元気な男の子が産まれた。
彼女とこの子を幸せにしたいと心から思った。
2016・4/3
上司に呼ばれ「チーフディレクターをやってみないか」と言われたが断った。
もちろんチーフディレクターを任せてもらえるのは光栄だったけど、今の俺にはそれよりも大切なものがあった。
妻も俺の考えに納得してくれた。
2019・2/19
今日は仕事が休みなので息子とゲームをした。ニンタンドーswotchのNewスーパーマルオブラザーズだ。
楽しそうにゲームをする息子を見て、思わず笑ってしまった。
そんな俺の顔を見て息子が「おとうさん、いつもいーっぱいあそんでくれて、ありがとう」と言ってくれた。
俺は嬉しくなって息子に「いつも元気いっぱいで、沢山笑顔を見せてくれてありがとう」と返した。
俺たち2人の姿を妻は台所から優しい笑顔で見守っていた。ハンバーグをこねながら。
ゲームを終え、食事の準備をすると妻が「ごめん! ご飯炊くの忘れてた!」と謝ってきた。
俺と息子は顔を見合わせて笑ってしまった。
妻のドジは今に始まったことではない。
息子が「じゃあぼくが炊いてあげる」と米を研いだ。
今度は俺と妻が顔を見合わせて笑ってしまった。
父さんが教えてくれた【まほうのことば】は、今日も我が家を笑顔に変えてくれていた。
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