6 / 81
第六話 シルヴィアの恩返し
しおりを挟む
「ふぅ……。ようやく落ち着けるな」
ダンジョンから帰り、長い一日が終わる。
俺は寝る準備を済ませてベッドに横たわった。
明日は教会で中級冒険者任命の式があるらしい。
それが済んだら、この家ともお別れだな。
三日間だけだったけど、住み心地はわるくなかった。
感慨にふけっていると、小さくドアをノックする音が聞こえてきた。こんな夜中に誰だろう。
ドアを開けると、そこには薄い白のワンピースを着た女の子が立っていた。
「――シルヴィア!? こんな時間にどうしたんだ?」
いつもと違う格好に少しどきっとしながら俺は言った。
シルヴィアはなにか思いつめたような顔をしている。
「……ユートに……用があって」
俺に用だって? 大抵の事なら近くに住んでいる姉のアリサに頼めばなんとかなるはずだ。
わざわざ俺のところにまでくるなんて差し迫った問題でもあるのだろうか。
「外で話すのもアレだし、とりあえず中に入りなよ」
俺はシルヴィアを部屋の中に案内する。
「ココアでいいか?」
「……うん」
二人分のカップにココアを注ぎ、机の上に並べた。
「それで俺に用事ってのはどんなことなんだ?」
カップに手をかけ、ココアを飲みながらシルヴィアに聞いた。シルヴィアは少し間をおいてから口を開く。
「わたし……体……売りに来た」
ブッ――!! 俺は驚いてココアを噴き出してしまった。
「ごめん、何を言っているのかよくわからないんだけど……?」
「ユート、体を売れって……お姉ちゃんに言ってた。わたし……ユートにお礼がしたい。でもわたし、何も持ってない……だから……体……売る」
情報屋と話していた時のことだな、シルヴィアにも聞こえちゃってたのか。
「あのな、あれは冗談で言ってただけであって――――」
「……本当?」
「勿論だよ。……本気で言ってると思われるなんて、もしかして俺の印象って最悪?」
「……そんなこと……ない……ユート……かっこよかった」
シルヴィアは上目遣いで目をぱちくりとさせて俺を見つめている。
「ははっ、それならよかった。ついでに俺は仲間を売る程外道じゃないと認識を改めてくれるとありがたいな」
「……うん……わかった」
素直な返事に、改めてシルヴィアはいい子だなと感じた。
「そういうわけだ、体を売るなんてもう言わないでくれよ」
俺は笑顔でシルヴィアの頭を撫でた。
「でもわたし……ユートや……お姉ちゃんみたいに活躍出来なかった……。だから……」
いつも通りのたどたどしい喋りで言葉を紡ぐと、シルヴィアは目をつぶりながらスッと背伸びをして俺に顔を近づける。
「――シルヴィア!?」
俺が驚いて声を上げると同時に、シルヴィアはそっと俺の頬に口づけた。
「これで……おしまい……。わたし……売り切れ……。もう体売るなんて……言わない」
シルヴィアは顔を俯けて言った。
その顔はかすかに紅潮している。
きっとこれはシルヴィアの精一杯の感謝の気持ちなんだろう。俺はもう一度シルヴィアの頭を撫でてお礼を言う。
「ありがとな。シルヴィア」
再びシルヴィアは顔を赤らめ、照れくさそうにしている。
「……うん……わたし、そろそろ帰るね」
その後、俺はシルヴィアを家まで送り届けた。
「さて、今度こそ本当に一日が終わりだな」
雲一つない夜空を見上げて俺は一人で呟いた。
なんだか可愛い妹が出来たみたいな嬉しい気持ちを抱えながら自宅へと帰ったのだった。
ダンジョンから帰り、長い一日が終わる。
俺は寝る準備を済ませてベッドに横たわった。
明日は教会で中級冒険者任命の式があるらしい。
それが済んだら、この家ともお別れだな。
三日間だけだったけど、住み心地はわるくなかった。
感慨にふけっていると、小さくドアをノックする音が聞こえてきた。こんな夜中に誰だろう。
ドアを開けると、そこには薄い白のワンピースを着た女の子が立っていた。
「――シルヴィア!? こんな時間にどうしたんだ?」
いつもと違う格好に少しどきっとしながら俺は言った。
シルヴィアはなにか思いつめたような顔をしている。
「……ユートに……用があって」
俺に用だって? 大抵の事なら近くに住んでいる姉のアリサに頼めばなんとかなるはずだ。
わざわざ俺のところにまでくるなんて差し迫った問題でもあるのだろうか。
「外で話すのもアレだし、とりあえず中に入りなよ」
俺はシルヴィアを部屋の中に案内する。
「ココアでいいか?」
「……うん」
二人分のカップにココアを注ぎ、机の上に並べた。
「それで俺に用事ってのはどんなことなんだ?」
カップに手をかけ、ココアを飲みながらシルヴィアに聞いた。シルヴィアは少し間をおいてから口を開く。
「わたし……体……売りに来た」
ブッ――!! 俺は驚いてココアを噴き出してしまった。
「ごめん、何を言っているのかよくわからないんだけど……?」
「ユート、体を売れって……お姉ちゃんに言ってた。わたし……ユートにお礼がしたい。でもわたし、何も持ってない……だから……体……売る」
情報屋と話していた時のことだな、シルヴィアにも聞こえちゃってたのか。
「あのな、あれは冗談で言ってただけであって――――」
「……本当?」
「勿論だよ。……本気で言ってると思われるなんて、もしかして俺の印象って最悪?」
「……そんなこと……ない……ユート……かっこよかった」
シルヴィアは上目遣いで目をぱちくりとさせて俺を見つめている。
「ははっ、それならよかった。ついでに俺は仲間を売る程外道じゃないと認識を改めてくれるとありがたいな」
「……うん……わかった」
素直な返事に、改めてシルヴィアはいい子だなと感じた。
「そういうわけだ、体を売るなんてもう言わないでくれよ」
俺は笑顔でシルヴィアの頭を撫でた。
「でもわたし……ユートや……お姉ちゃんみたいに活躍出来なかった……。だから……」
いつも通りのたどたどしい喋りで言葉を紡ぐと、シルヴィアは目をつぶりながらスッと背伸びをして俺に顔を近づける。
「――シルヴィア!?」
俺が驚いて声を上げると同時に、シルヴィアはそっと俺の頬に口づけた。
「これで……おしまい……。わたし……売り切れ……。もう体売るなんて……言わない」
シルヴィアは顔を俯けて言った。
その顔はかすかに紅潮している。
きっとこれはシルヴィアの精一杯の感謝の気持ちなんだろう。俺はもう一度シルヴィアの頭を撫でてお礼を言う。
「ありがとな。シルヴィア」
再びシルヴィアは顔を赤らめ、照れくさそうにしている。
「……うん……わたし、そろそろ帰るね」
その後、俺はシルヴィアを家まで送り届けた。
「さて、今度こそ本当に一日が終わりだな」
雲一つない夜空を見上げて俺は一人で呟いた。
なんだか可愛い妹が出来たみたいな嬉しい気持ちを抱えながら自宅へと帰ったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした
たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。
死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる