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第六十五話 奇襲
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時刻は朝日が見え始めた頃。一晩中気球の中で過ごしたため、みんなの顔はこころなしかげっそりしている。
エリーに関しては白い顔が一層白くなっていて、明らかにやつれている。
「よし、高度を下げるぞ」
目的地に到着したのでミルドレッドは気球の火を弱める。
日が昇るのとは対照的に気球はゆっくりと下降していく。
「ウップ……。ようやくこの辛い空の旅が終わるんですわね」
「ま、無事に任務が終わったら帰りもあるけどな」
俺がエリーに非情な突っ込みを入れるとエリーは心底嫌そうな顔をして答える。
「……帰りはもっとゆっくり移動させてほしいですわ」
エリーはエリシアの方を見て言うと、ミルドレッドが横から口をはさむ。
「今回は急襲作戦だからしかたないだろ。帰りはのんびりいくさ。行き程酔うことはないから安心しな」
「……それならいいんですの」
気球の高度は先程まで百メートル程だったが、今はその半分まで下がっている。
あと五十メートル降りれば目的地ロードアンの市街地の少し外れに降りる計算だ。
「さて、作戦内容をもう一度確認するぞ――」
ミルドレッドが喋り始めると、異変が起きた。
――――ビュオオォォォォ
突然渦のような強風が吹き始めた。
「――竜巻か!?」
「みんな振り落とされないように捕まるんだ!!」
俺とミルドレッドがみんなに指示を出す。突風により気球は下降するどころか少し浮き上がっているようだ。
「……妙だな。あまりにも前触れがなさ過ぎる、辺りの天気も悪くないし」
俺は気になったので気球の籠から落ちないように慎重に身を乗り出して下を見た。すると、一人の人影が見えた。
「――下に誰かいるぞ!」
俺が声を上げると、ミルドレッドが更に指示を出す。
「そうなると敵襲の可能性が高い。人がいないところを狙って降りようとはしたがここは既にロードアン。敵地の真っ只中だしな。おい、ユート! 飛び降りて様子を見てこい」
「はい!? 俺を殺す気かよ」
まだ地面までは五十メートル以上ある。
普通に考えると無事ではすまない。
「オーディンを使えば行けるだろ?」
「無茶言わないでくれ、オーディン使っても十倍丈夫にはならないんだぞ!」
「そうなのか? わかりにくい能力だな。でも大丈夫だ、五点着地という安全な着地方法を教えよう」
風にあおられて今にも気球が壊れそうな中でも冷静にミルドレッドは言葉を続ける。
「つま先・脛・太腿・背中・肩の順に体をひねりながら着地するんだ……こんな感じだな」
ミルドレッドは足場が不安定な中で見本を見せる。
「それができるならミルドレッドが行けばいいのでは?」
「私では敵と交戦になった場合勝てる算段がない。ユートが無理ならアデルでも良いが……」
ミルドレッドはアデルの方を見て言った。
「ミルドレッドさん、ここはユートに任せるほうが良い。オーディンでは体は丈夫にならないとユートは言ったけどそんなことはないはずです。僕のオーディンは1.5倍でしかないけど、それでも殴った後の反動にいつもより耐えられるようになっているのがわかります。十倍かはわからないけどユートのオーディンには僕以上に防御を上げる効果があるはずです」
アデルの説明によりミルドレッドは再び俺の方を見る。
「だそうだ、死ぬ気で行ってこい。お前がやらないなら気球が壊れてどうせここでみんな死亡だ」
「――わかったよ、やってみる」
正直不安でしかないがこのまま攻撃を受け続けるのは愚策というのは俺も同意だ。――覚悟を決めろ俺。
「それじゃ、行ってくる!」
俺は籠から飛び降りた――――が、予想とは違って上手く下に落ちていかない。
竜巻に巻き込まれて、浮いたり落ちたりを繰り返して空中でぐるぐる回ってしまう。
「……こりゃまずいな。――――エリシアさん!!」
俺は大声でエリシアを呼んだ。
「エリシアさんのシルフで俺をこの竜巻の外に吹っ飛ばしてくれ! そうすれば下に落下できるはずだ!」
「はい、わかりました! やってみます」
突風が吹き荒れる中エリシアの声は微かにしか聞こえなかったが指示は伝わったらしい。
空中に漂う俺にたいして強烈な横風が吹き出して、竜巻の圏内から外に出ることが出来た。
「さて、問題はここからだな」
自由落下で俺の体は地面に向かって進んでいる。
正直なところ怖い。普通に落ちたら死ぬのは間違いない。
でも俺には五点着地とオーディンがある。
ミルドレッドとアデルが言ったことを信じよう。
――ヒュオオォォォォ
俺の体が落下して空気を切る音が聞こえる。
衛星写真のように小さく写っていた地面が徐々に大きくなってくる。
「耐えてくれよ! オーディン!!」
俺は地面に着く直前にオーディンを召喚した。
ミルドレッドが先程見本を見せてくれたように、つま先を下に向けて落下の瞬間に体をひねり上げた。
――――ドシャアアァァァァ
物凄い衝撃音が走り、俺の神経という神経が落下の衝撃で軋(きし)めいている。
この痛みはただ痛いなんてものじゃない。全身を金属バットで殴打されたかのような痛みに体全体が悲鳴を上げる。
「……でも、生きてる。まだ動ける」
俺は満身創痍の体に鞭打って立ち上がった。
エリーに関しては白い顔が一層白くなっていて、明らかにやつれている。
「よし、高度を下げるぞ」
目的地に到着したのでミルドレッドは気球の火を弱める。
日が昇るのとは対照的に気球はゆっくりと下降していく。
「ウップ……。ようやくこの辛い空の旅が終わるんですわね」
「ま、無事に任務が終わったら帰りもあるけどな」
俺がエリーに非情な突っ込みを入れるとエリーは心底嫌そうな顔をして答える。
「……帰りはもっとゆっくり移動させてほしいですわ」
エリーはエリシアの方を見て言うと、ミルドレッドが横から口をはさむ。
「今回は急襲作戦だからしかたないだろ。帰りはのんびりいくさ。行き程酔うことはないから安心しな」
「……それならいいんですの」
気球の高度は先程まで百メートル程だったが、今はその半分まで下がっている。
あと五十メートル降りれば目的地ロードアンの市街地の少し外れに降りる計算だ。
「さて、作戦内容をもう一度確認するぞ――」
ミルドレッドが喋り始めると、異変が起きた。
――――ビュオオォォォォ
突然渦のような強風が吹き始めた。
「――竜巻か!?」
「みんな振り落とされないように捕まるんだ!!」
俺とミルドレッドがみんなに指示を出す。突風により気球は下降するどころか少し浮き上がっているようだ。
「……妙だな。あまりにも前触れがなさ過ぎる、辺りの天気も悪くないし」
俺は気になったので気球の籠から落ちないように慎重に身を乗り出して下を見た。すると、一人の人影が見えた。
「――下に誰かいるぞ!」
俺が声を上げると、ミルドレッドが更に指示を出す。
「そうなると敵襲の可能性が高い。人がいないところを狙って降りようとはしたがここは既にロードアン。敵地の真っ只中だしな。おい、ユート! 飛び降りて様子を見てこい」
「はい!? 俺を殺す気かよ」
まだ地面までは五十メートル以上ある。
普通に考えると無事ではすまない。
「オーディンを使えば行けるだろ?」
「無茶言わないでくれ、オーディン使っても十倍丈夫にはならないんだぞ!」
「そうなのか? わかりにくい能力だな。でも大丈夫だ、五点着地という安全な着地方法を教えよう」
風にあおられて今にも気球が壊れそうな中でも冷静にミルドレッドは言葉を続ける。
「つま先・脛・太腿・背中・肩の順に体をひねりながら着地するんだ……こんな感じだな」
ミルドレッドは足場が不安定な中で見本を見せる。
「それができるならミルドレッドが行けばいいのでは?」
「私では敵と交戦になった場合勝てる算段がない。ユートが無理ならアデルでも良いが……」
ミルドレッドはアデルの方を見て言った。
「ミルドレッドさん、ここはユートに任せるほうが良い。オーディンでは体は丈夫にならないとユートは言ったけどそんなことはないはずです。僕のオーディンは1.5倍でしかないけど、それでも殴った後の反動にいつもより耐えられるようになっているのがわかります。十倍かはわからないけどユートのオーディンには僕以上に防御を上げる効果があるはずです」
アデルの説明によりミルドレッドは再び俺の方を見る。
「だそうだ、死ぬ気で行ってこい。お前がやらないなら気球が壊れてどうせここでみんな死亡だ」
「――わかったよ、やってみる」
正直不安でしかないがこのまま攻撃を受け続けるのは愚策というのは俺も同意だ。――覚悟を決めろ俺。
「それじゃ、行ってくる!」
俺は籠から飛び降りた――――が、予想とは違って上手く下に落ちていかない。
竜巻に巻き込まれて、浮いたり落ちたりを繰り返して空中でぐるぐる回ってしまう。
「……こりゃまずいな。――――エリシアさん!!」
俺は大声でエリシアを呼んだ。
「エリシアさんのシルフで俺をこの竜巻の外に吹っ飛ばしてくれ! そうすれば下に落下できるはずだ!」
「はい、わかりました! やってみます」
突風が吹き荒れる中エリシアの声は微かにしか聞こえなかったが指示は伝わったらしい。
空中に漂う俺にたいして強烈な横風が吹き出して、竜巻の圏内から外に出ることが出来た。
「さて、問題はここからだな」
自由落下で俺の体は地面に向かって進んでいる。
正直なところ怖い。普通に落ちたら死ぬのは間違いない。
でも俺には五点着地とオーディンがある。
ミルドレッドとアデルが言ったことを信じよう。
――ヒュオオォォォォ
俺の体が落下して空気を切る音が聞こえる。
衛星写真のように小さく写っていた地面が徐々に大きくなってくる。
「耐えてくれよ! オーディン!!」
俺は地面に着く直前にオーディンを召喚した。
ミルドレッドが先程見本を見せてくれたように、つま先を下に向けて落下の瞬間に体をひねり上げた。
――――ドシャアアァァァァ
物凄い衝撃音が走り、俺の神経という神経が落下の衝撃で軋(きし)めいている。
この痛みはただ痛いなんてものじゃない。全身を金属バットで殴打されたかのような痛みに体全体が悲鳴を上げる。
「……でも、生きてる。まだ動ける」
俺は満身創痍の体に鞭打って立ち上がった。
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