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火付け役
毒の生き方
しおりを挟む異能力の解放、と同時に両手がじわじわと紫色に変色しついには毒手となった。右頬に焼けるような痛みが走る。私の異能力の副反応でな、右頬にムカデの見た目をしたタトゥーが浮き出るんだ。このタトゥーは能力使用の度に一足分紫色に染まっていく。そして、このタトゥーが完全に染まりきった時、私は、死ぬ。
異能力は能力が強ければ強いほど、能力使用の副反応やデメリット、縛りが重い。私の異能力の『毒杯』も数多くある異能力の中でも強い部類に入る。そんな私の異能力は! 薄々気づいているかもだけどね......
「この世の毒全てを分泌する能力! それが私の異能力さ!」
毒手となった両腕を構えながら走り始めた。手始めに私は、残り二人となったスーツ姿の男達の元に駆け寄った。もちろん、殺すために。
「チィィィ! 撃て! 撃て! あの女を近づかせるな!」
男達は狼狽を上げながら近づこうとする私に向かって拳銃を放つ。でも私はそいつの避け方をとっくにマスターしてんだ。今更下手な鉄砲使いの弾に撃ち抜かれるタマじゃないんだよ。
飄々と銃弾を避け、瞬時に近くに居た男の手首を触った。
「つ~かまえた♥」
「ヒィ! 離せ____」
この言葉を最後に男は泡吹いてその場に倒れ込んだ。この男は私に触られた事によって体内に致死量の出血毒を流し込まれて血管を毒に侵され、死んだんだ。続けて二人目。二人目の男は一人目が私の手によって事切れた姿を見て戦意喪失していた。だからといって敵を見逃してあげるほど私は優しくない。ガクガクと震える彼の首に手をやり、同じ手口で殺してやった。
「さて......」
事切れた男の首から手を離し、何故かその場で突っ立っている白色の鎧を纏ったゴリラみたいな大男(以降ホワイトゴリラと呼ぶ)の方に視線をやった。
「おいおい、ひでぇなお前。仲間が敵に殺されているってのに棒立ちかよ。何か支援ぐらいしてあげろよ」
「お前の異能力の詳細がいまいち把握出来ていないのにわざわざ近づくか。それにあいつらは無能力者だ。代わりはいくらでもいる」
「へぇ~そう。じゃあアンタも今すぐにこいつらと同じとこに送ってやんよ!」
勢い良く飛び出し華麗なスタートダッシュを切った。そんな中ホワイトゴリラは何を思ったのか、こんな事を唱え始めた。
「異能力・鎧割」
【胴】
ホワイトゴリラの異能力か......どんな能力だ?
するとホワイトゴリラの周りにオレンジ色のバリアが展開された。それを見て私はガッカリしたのと同時に笑いがこみ上げてきた。
「ちょ、おま、今もそんなガッチガチの鎧を纏ってのに異能力で更に守んのかよ! とんだ臆病者だなァ!」
「馬鹿が、笑ってられるのも今のうちだぞ。『盃 サトミ』」
「白鎧、モードチェンジ・白刃モード!!!」
ホワイトゴリラがそう唱えるとホワイトゴリラがホワイトゴリラである故の白色の鎧がホワイトゴリラの身から離れ、その形を大きな二枚刃の大剣へと変貌させた。なるほど、あれが白刃モード、攻めの姿か。異能力での防御、それまで着ていた鎧の武器、完璧なブラフだな。
そう考えて私の顔から笑顔が消え去った後、ホワイトゴリラは片手で二枚刃の大剣を私に向けて振り下ろした。私はそれを間一髪で避ける。
「ッ~! あっぶねぇな! 殺す気かよ!」
「殺す気に決まっているだろう。ふむ、この一太刀を見ても怖気ず冗談を言えるほどの余裕があるか......ならば」
「こんなのはどうだろう?」
「ふん!!!!!」
そう言うとホワイトゴリラは二枚刃の大剣を大きく上に振り上げ、勢い良く地面に落とした。ホワイトゴリラの本物のゴリラのような力、それに加え、デッカイ剣。その二つの力が同時にフロアの床に加わった事によって、フロアの床はミシミシと悲鳴を上げ、あえなく崩れた。
「お前それはやりすぎだろゴリラー!!!」
私とホワイトゴリラは三階フロアへと落ちた。と、同時に生きているか分からないカイの身柄と私達が殺した人間の死体も一緒に落ちてきた。
砂埃で周りが良く見えないがここでの戦いはいかに環境を利用出来るかが重要そうだな......
「第一ラウンドと洒落こもうかー! ホワイトゴリラァァ!」
応援ありがとうございます!
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