いつか君を見てみたい

幽鬼猫

文字の大きさ
1 / 1

君を見てみたい

しおりを挟む
僕は金子怜夜。生まれつき目が見えず杖で生活している高校生。勿論、実家で家族に支えてもらいながら生活している。
僕は視覚障害者用学校に毎日通っていたが、ちょっと不満でもあった。それは周りと自分が違うということだった。
僕は目が見えなくても普通の子達のように遊んだり運動したかった。しかし、目が見えなきゃ危険を伴うことの方が多くなる。でも、僕は
「1度でいい、1度でいいから普通の人のように楽しみたい」
そう思った。
自分は普通の人が羨ましかった。
学校への行き道で楽しそうに運動してる子供たちの声がした。
「へい! パス!」
「絶対止めてやる!」
こんな言葉を聞いてどんな運動なのか興味がやっぱりある。世間でサッカーや野球などの運動を知らない人は大抵いないだろう、でも、僕は知らなかった。どんな運動なのか、何をしたら終わるのか、授業中に想像してみたがさっぱり分からなかった。
学校が終わり、家に帰って家族に聞いてみた。
「サッカーってなに??」
「サッカーって言うのはね、ボールを蹴ってゴールと言われる場所に入れたら点数が貰えて、時間内により多くの点数を入れた方が勝ちのスポーツだよ。」
「そうなんだ、やってみたいな~」
「怜夜は流石に厳しいかな·····」
「やっぱりそうだよね·····笑」
やっぱり自分には出来ない。
母親を恨んでいるわけじゃない。生んでくれて感謝してる。けど、普通の人のように生まれたかった。
そう心で泣き叫ぶように言いつつも顔に出すことは無かった。
数日後
「どうしてもサッカーというものがしてみたい」
その思いが勝ってしまいボールは紙を丸めたものを使い、部屋でその楽しみを少しでも味わおうとした。
しかし、事件はそこで起きた·····
そのまま転倒してしまい、角で頭を強打してしまった。その後、母親が部屋に来た際にビックリし救急車で搬送、入院となってしまった。
家族には勿論叱られたが、無事でよかったと泣かれた。
病院生活と言っても正直つまらない、大体孤独なのでラジオ聴くくらいしかやることが無い。
少し、散歩したいと看護師さんに言って看護師さんと共に病院内を歩き談話ルームに初めて行った。
そこには1人可愛らしい声をした女の子がいた。
看護師さんが
「あらら、聖菜ちゃん1人でこんなとこで何してるの?」
「病室にいてもなんもすることないからここにいたら話してくれる先生や看護師さんや患者さんが来るかなーって思ってね笑」
「そうなのね、じゃー、ちょうどいいわ、怜夜くんとお話してみたら?」
いきなり看護師さんからそんな言葉が出て自分は戸惑った。
「えっ、僕ですか??」
「怜夜くん嫌だった?」
「嫌じゃないですけど」
「だったらいいじゃないの、コミュニケーションも大切よ!」
そう言われ、女の子と話し始めた。
「私は聖菜。加藤聖菜。君は?」
「僕は金子怜夜·····です。」
「怜夜くんね! 分かった! あと、そんなに固くならなくていーよ?」
「う、うん。分かった。ありがとう。」
「怜夜くんはなんで入院を?」
「僕、目が見えなくて·····。その状態で運動しようとして転んで頭強打しちゃってね。」
「そうなの? ってことは私の事も見えてないの?」
「うん、ごめん。」
「しょうがないよ笑」
「聖菜ちゃんはなぜ入院を?」
「私、心臓があまり良くなくてね~笑」
「そうなんだね。」
そんな感じで2時間ほど話し、また話す約束をした。
その後も毎日談話ルームに行っては聖菜ちゃんと話し、また部屋に戻る、その生活が続いた。自分は聖菜ちゃんと話してる時が幸せな時間へと変わった。
数ヶ月が経ち、自分はあることに気が付いた。
『自分が聖菜ちゃんのことが好きだと』
けど、この気持ちは言えなかった。
もし、この気持ちを伝えて振られてしまったらもう二度と話せないと。話せたとしてもぎこちなくなるとそう思った。なので、好きの気持ちは隠したままいつものように話すことにした。
その翌日、聖菜ちゃんが来なかった。
次の日も、またその次の日も。
自分がつまらないのかと思い込んだ。
でも、やっぱり気になったので看護師さんに聞いてみた。
「聖菜ちゃんはどこにいるの、ココ最近談話ルームに来ないの·····」
「·····聖菜ちゃんはね、今部屋から出られないの。」
自分は聖菜ちゃんの言ってたことを思い出した。
「私は心臓があまり良くない」と。
自分はパニックになりその場で倒れてしまった。
気がついたら部屋にいた。先生や看護師さんが周りにいる。僕は聖菜ちゃんに気持ちも伝えれず、顔も見ることも出来ないのかと涙を流した。
僕は必死に家族や先生にお願いした。
「どうか、僕の目を·····見えるようにしてくれませんか」と。
大好きな人に「好き」と伝えるため。
目を見て言えるように、必死にお願いした。
先生は、
「ずっとは無理かもしれませんが、一時的には見えるようには出来る可能性があります。しかし、それなりのリスクがあります。」
僕は即答で、
「それでもいいです。だから、お願いします。」
家族もその意志に反対はしていたものの僕の思いを止められまいと了承した。
僕は手術を受けた。数時間に及ぶ手術を。
そして、遂に見えるか見えないかわかる時が来た。
ずっと包帯で目を塞がれていたのを取ってもらい、ゆっくり目を開いた。
そしたらそこには母親らしき人、父親らしき人、白い白衣を着た先生と看護師がいた。
「見える·····見えるよ、お母さん、お父さん」
泣きながらそう言っていた。
「先生、ありがとうございました。本当に感謝しています。この御恩は一生忘れません。」
その後、看護師にお願いして聖菜ちゃんの部屋に連れていってもらった。
僕と看護師さんは聖菜ちゃんの部屋の前に立っていた。初めて聖菜ちゃんを見ることが出来る好奇心と気持ちを伝えることへの不安が混ざって変な感じになった。
1度深呼吸をし、ドアに手を掛け、開いた。
そこにはベッドに寝そべり色んな管や機械を付けられた1人の女の子がいた。
「あの子が聖菜ちゃんだよ。私はドアの外で待ってるから2人でゆっくりね。何かあったら直ぐに呼ぶんだよ。」
と言って。看護師さんは部屋を退室した。
僕は聖菜ちゃんの手を握った。
ゆっくりと目が開かれ微かな声で、
「あれ、怜夜くん。なん·····でここに……いる·····の」
途切れ途切れでもちゃんと聞き取れた。
「聖菜ちゃんに会いに来たよ。目も手術して、一時的に見えるようになったんだよ。聖菜ちゃんを見るために。そして、気持ちを伝えるために。」
聖菜ちゃんは笑ったように思えた。
「そう·····だったん·····だね·····、よかっ·····た。」
僕は素直にただ今の自分の気持ちをそのまま伝えた。
「僕は目が見えなくて聖菜ちゃんがどんな人かも分からなかったけど、沢山話してるうちに好きになりました。聖菜ちゃんと話せたこと。聖菜ちゃんの事を見れたことが幸せでたまらないの。」
「それ·····はよかっ·····た·····。」
「聖菜ちゃん、僕は聖菜ちゃんの事を心の底から愛してます。これから先もずっと。」
聖菜ちゃんは涙を流し、
「わた·····しも、怜夜·····くんのこと·····が、だいすき·····です。」
その言葉が聖菜ちゃんが残した最後の言葉だった。
目の前のモニターが波打っていたのが無くなり、ピーっと言う音だけが鳴り響いた。それに気付いた看護師さんは先生を呼び呼び戻そうと努力したが戻ってこなかった。
自分はその場から動けなかった。僕は気がついたら泣いていた。そんなの当たり前だ、好きな人が目の前で息を引き取ってしまったのだから。
その後、自分の目は再び見えなくなり退院もした。
前と同じような生活を再びするようになった。
1つの行動を除いて。
それは、あの子に届いて欲しいという思いを込めて文字を書く練習をし始めたことだ。
いつかは君に届くといいな。
『君と同じ時を過ごし。』
『君に気持ちを伝えれて。』
『君の事を見ることが出来て。』

『自分は世界一の幸せ者だ。』
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

あんなにわかりやすく魅了にかかってる人初めて見た

しがついつか
恋愛
ミクシー・ラヴィ―が学園に入学してからたった一か月で、彼女の周囲には常に男子生徒が侍るようになっていた。 学年問わず、多くの男子生徒が彼女の虜となっていた。 彼女の周りを男子生徒が侍ることも、女子生徒達が冷ややかな目で遠巻きに見ていることも、最近では日常の風景となっていた。 そんな中、ナンシーの恋人であるレオナルドが、2か月の短期留学を終えて帰ってきた。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

初恋の人と再会したら、妹の取り巻きになっていました

山科ひさき
恋愛
物心ついた頃から美しい双子の妹の陰に隠れ、実の両親にすら愛されることのなかったエミリー。彼女は妹のみの誕生日会を開いている最中の家から抜け出し、その先で出会った少年に恋をする。 だが再会した彼は美しい妹の言葉を信じ、エミリーを「妹を執拗にいじめる最低な姉」だと思い込んでいた。 なろうにも投稿しています。

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

双子の姉がなりすまして婚約者の寝てる部屋に忍び込んだ

海林檎
恋愛
昔から人のものを欲しがる癖のある双子姉が私の婚約者が寝泊まりしている部屋に忍びこんだらしい。 あぁ、大丈夫よ。 だって彼私の部屋にいるもん。 部屋からしばらくすると妹の叫び声が聞こえてきた。

悪役令嬢(濡れ衣)は怒ったお兄ちゃんが一番怖い

下菊みこと
恋愛
お兄ちゃん大暴走。 小説家になろう様でも投稿しています。

夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども

神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」 と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。 大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。 文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!

処理中です...