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第二章 vs厄災アイン

#25 vs厄災アイン②~アレッタside~

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「……カリナ、アカネとレンの回復は?」

「やっていますが、回復魔法の効きが悪くて……おそらく、回復魔法を阻害する呪いもかけられています」

「どうにか解けないのか?」

「時間と大量の魔力があれば……でも」

 今はアインとの交戦中。当然、カリナが言うような時間も魔力も捻出できないわけで……。

 アカネ達三人が瞬く間に敗れて、動揺しているラフタにボクは声をかける。

「ラフタ。キミはアカネたちを回収してソムニアに戻りたまえ。そして、すぐに三人を魔導院の校医に診せるんだ」

「わかりましたけど……アレッタさん達は? まさか、戦うつもりなんですか?」

「ここで奴を野放しにはできないからな。やれるだけのことはするつもりさ。とはいえ、キミには頃合いを見て、迎えには来て欲しいけれど……」

「……わかりました。どうかご無事で」

 ラフタが倒れた三人全員を連れ帰ったのを確認すると、ボクは仮面の位置を調整しながらアインと向きあう。

「待たせたね」

「作戦会議は終わったのかしら?」

「ああ。次はこのボクがキミの相手だ」

「ふーん。あれだけのモノを見せられて、まだ私に挑む気になるなんて、相当なおバカさんなのね。【ケーラ・パリエース】!」

 アインの魔力が、周囲を満たした。

 瞬きをする間もなく、ボク達の周囲を魔力の壁が取り囲んでいた。重く穢れた空気に、周囲の空間が汚染されていく。

「古代魔法による結界を張ってあげたわ。これでもう誰も逃げられないし、外からの邪魔も入らないわ。さあ、命乞いの準備は出来たかしら?」

「そんな準備は必要ないのでね……カリナ、ナオ、援護を頼む」

「任せてください」

「……」

 カリナの同意とナオの無言の頷きを背に、ボクはアインへ突っ込んでいく。上下左右様々なところから、自分を貫こうと現れる黒い塊をナオの防御魔法で防いでもらいながら、一直線にアインの懐に潜り込む。

「【バリアントソード】‼」

 手元に再び黒い長剣を召喚し、アインを斬り上げる。だが、ギリギリで躱され、わずかに傷をつけただけだった。

「闇を払え、無垢なる光‼ 【ルミナスバスター】‼」

 と、回避によってアインの体勢が崩れたところを狙い、カリナが魔法を放った。

 カリナの杖から閃光が放たれ、アインの身体に突き刺さると同時に爆発した。
 轟音が辺りに鳴り響く。

「ぐっ……」

 仕留めるには至らなかったものの、ダメージを与えることが出来たようで、アインが苦悶の声を漏らしながら、吹っ飛んだ。

 勢いよくアインの身体が岩盤に激突する。激突された岩盤は、地響きと共にガラガラと崩れ落ちた。

 ボクは攻撃の手を一切緩めることなく、瓦礫に埋もれたアインの追撃に向かう。召喚した剣に、魔力を注ぎ込み――。

「【ルーンセイバー】‼」

 叫びと共に、剣先をアインに向け、注ぎ込んだ魔力を一気に放出した。

 剣から現れた巨大な光の刃がアインを貫く。
 地響きが周囲を揺らし、砂煙が舞い上がる。

 煙が晴れると、地面が抉り取られたように陥没し、アインの姿はどこにも無い。

「……倒せたのか?」

 ボクは剣の構えを解かず、アインがいたはずの場所を見据えた。

「『猫面』さん、アインは?」

「……?」

 カリナとナオが状況を確認しに駆け寄ってきた。

「わからない。欠片も残さず消えたのか、あるいは……」

 そこに、アインの声だけが響く。

「今の攻撃は素晴らしかったわ。連携も、威力も。あまり時間かけていると、身体が馴染みきっていない今の私では押し切られるかもしれないわね……」

「……わざわざ自分のピンチを教えてくれるなんて、キミは優しいんだね」

「ハンデよ。もう遊びは終わりにするから」

 と、黒炎が私たちの目の前を満たした。

「……⁉ ……【ディフレクト】‼」

 ナオが咄嗟に前に出て、防御魔法を唱えた。ボク達の前に光の盾を展開する。

「さっきと同じだと思わないことね」

 炎が光の盾に襲い掛かった。

「……っ」

 盾が炎の塊に押されていく。

 やがて、光の盾は押し負けて粉々に砕け散った。その衝撃で、ナオの身体が勢いよく宙を舞った。

 体勢を崩したナオの頭上に、黒い塊が現れてナオを貫こうとする。

「……っ‼ 【ディフレクト】‼」

 かろうじて防御魔法を発動させた為、貫かれることはなかったものの、威力は殺しきれなかったようだ。ナオの身体はすさまじい力で地面に叩きつけられた。

「がっ……‼」

「ナオっ!」「ナオさんっ!」

 短い悲鳴をあげ、その場に倒れているナオの元にボク達は駆け寄った。

「あと、二人ね」

 黒炎が人型となり、アインが姿を現す。

 その直後、倒れていたナオがゆっくりと起き上がった。

「……あと二人ィ? 何勝った気でいるんだァ?」

 ナオの様子は、これまでと明らかに違っていた。
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