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お城妖精のお仕事日報及び雑記
ヴァンパイアの初めて
しおりを挟む「それで、シリシアン」
刺すような視線がシリシアンへ向けられた。
首を覆う立襟は繊細なレース編み。
手首の袖口も同じレース仕様である。
胸元からスカートの裾まで、金糸と銀糸で細やかな草花柄の刺繍が施されている。
なんて繊細で美しいんだろう。
リアムは遠目からも分かる、その丁寧な仕事ぶりに感嘆する。
こちらのお針子妖精も、きっと安い給料で過酷な労働を虐げられているに違いない!
リアムはその見たことも会ったこともない想像の中のお針子妖精を思い……いや自分の不遇時代を思い出して、ギリリと奥歯を噛んだ。
「それで、シリシアン」
燭台の灯りをぼんやりと眺めていたシリシアンが、シュッと背筋を伸ばす。
「はい、母上」
「初めてのお相手は決まったの?」
「……」
ブンブンと子供のように首を振るシリシアン。
「もうそろそろ決めなくては。誰でも一度は通る道なんだから」
「母上……」
シリシアンは何か言いたげに母の顔を見るが、ルルベラの強い眼差しに負け、すぐまた俯く。
「死んでしまうんですよね……」
「羊は殺して食べるけど、人間は死んだら駄目なの? なぜ? 」
話が見えなかったけど、ルルベラが言っているシリシアンの初めての相手って、そういうことか、とリアムはなんとなく察する。
初めて吸血する相手ということ。
つまりファースト……
シリシアンはまだ人間の血を吸ったことがないんだと。
なんていうか、捕食者って本能的に「こいつ喰ったらウマそ!」とか思った瞬間にはもう噛みついてるもんなんでないの?
補食対象に対して可哀想とか思ってたら、飢え死ぬしかないじゃん。
「僕は今のまま変わらずにいたいのに」
シリシアンがボソボソと呟いた。
ルルベラに言ったつもりはなさそうだ。
「貴方が決めないのなら、こちらで用意するだけよ。好みがあるでしょうからって、だけの話」
ヴァンパイアは吸血しないと死ぬのかな?
自分に比べたら、寿命めちゃ長そうだけど。
まぁ、関係ないけどさ。
自分の方がとっとと死ぬんだし。
それに、長く生きたからって何か楽しいことあるか?
毎日退屈なだけじゃないか。
***(・ω・) 血って不味いよなー
応援ありがとうございます!
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