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第3話 こんなシナリオ聞いてないんだが? 5
しおりを挟む♪♬♬♬♪♬♪
「ちょっと、ピアノの音がうるさいっていってるじゃないですか! なんでまた弾いてるんですか!」
「そんなの決まってるじゃない? 弾きたいから弾いてますわ」
「そういうことを言ってんじゃありません!」
昨日と同じように子犬のワ◯ツを弾いていたら、ソルがまた部屋にやって来た。
「だって、昨日弾いたらとても楽しかったんですもの。また弾きたくなってしまって……」
「それは、もう分かりましたから、とりあえず音を小さく弾いてくださいって言ってるんです」
「じゃあ、どうして音楽を嫌いになったんですの? それを教えてくれたら、考えますわ」
「それはっ……」
ソルは、唇を閉じて考え込む。
ちなみに、私は考えると言っただけで音を小さくするとは言ってないよ? だって小さく弾いたら楽しくないしね、うんうん。これが本当の策士である。
「分かりました。話しますから、ピアノを小さく弾いてください」
「ええ、分かりましたわ」
あ、言質取られた。
ソルはゆっくりと語りだした。
「僕は、絶対音感を持っていて聞いた音を完璧に再現できます。それは、弾いてる人の癖とか弾き方。音全てです」
それはいい事なんじゃ……。
「最初は、絶対音感は誇りでした。自分の欲しい音が出せるのは気持ちいいし、色んな音に出会うことも楽しかったから」
「じゃあ、どうして……」
「言われたんです、俺の音を真似するなって。それから人の音を聞くのが怖くなりました。そして楽器が全て嫌いになった……」
それは少し分かるかも。私だって無意識に人の音が移ったことあるし……。
うーん。それなら、
「じゃあ試しに私の音真似して見てくださいませ、聞いてみたいですわ」
「不快じゃないんですか?」
「全く? 自分の音を他の人から聞けるなんて新鮮で楽しそうですわ」
「やっぱり変な人ですね、分かりました弾いてみます」
ソルは、6小節ぐらい子犬のワ◯ツを弾いてピタリと演奏を止めた。
「再現できない……」
「え」
「こんなの初めてです」
「ブランクとかかしら……?」
「違います、多分。違う曲も弾いてみます」
今度は、全く違う曲をソルが奏でる。
乙女◯祈りかな? 一つ一つの音がはっきりしているのに、柔らかくて包み込むような優しさがある。
私は、目を瞑りソルの演奏を集中して聞く。
そして、ソルの演奏が終わり私はソルに向けて拍手をした。
「すごい、上手だったわ!」
「やっぱり、他の人の音は再現できるのに、貴方の音は再現できないです」
「どうしてかしら? 不思議ね」
「それは、多分あなたの音が……だから」
恥ずかしかったのか、ソルが小さい声で呟いたので聞き取ることが出来なかった。
でも、私の演奏が再現できないなら……。
「とりあえず、私の音を再現するのを目標にして一緒に音楽をしませんこと?」
「僕は、楽器弾いてもいいんでしょうか?」
「そんなの知らないわ。だって弾くかを決めるのはあなたじゃない。でも私はピアノなかったら生きていけないぐらい、ピアノが好きですわ」
「本当に何で僕は、こんなことをあなたに話してるんでしょう? 本当はピアノを弾いてるのがうるさいと文句を言うだけのはずだったのに……」
「それはごめんなさい」
「いいです、それより明日から僕もここで練習してもいいですか?」
「えっ」
「だって一緒に練習しないと、貴方の音再現出来ないから」
そんなことしたら、私のピアノを弾ける時間が減ってしまうんじゃ……。
「後で、ピアノを買ってもらうようにお願いします」
「ぜひ、そうしてくださいませ!」
私が食い気味に言うとソルは手を口にあてて肩を振るわせている。
笑ってる?
「本当にお姉様は、ピアノが好きなんだと思って、すみません笑ってしまいました」
「お姉様?」
「お姉様って呼んだらだめですか?」
「いえ、好きなように呼んでくださいませ」
「じゃあ、僕のことはソルと呼んでください」
「分かりましたわ」
いきなり距離縮まりすぎじゃない? 確かに音楽は国境を越えるとかよく言うけど……。
まあ、多分殺されなくはなったのかなあ。
終わりよければすべてよしかな。
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