幼馴染とデスストーカー

昆布海胆

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幼馴染とデスストーカー

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昨日買ったセーター凄く似合ってたね、私まことの事いつも見てるんだよ。
まことの瞳が凄く綺麗で私・・・大好きだよ。

                    まなみ




マンションの一室、ベットに仰向けに寝転びながらポストに入っていたそれを眺める。
朝から何も食べていないせいで空腹を胃が訴える、だが俺はその手紙を見詰め続ける。

「ストーカー・・・か」

起き上がって通販で購入したセーターの入っていた袋が視界に入って溜め息を一つ吐く。
この荷物が届いてから一度も家から出ていない、だからこの手紙を見て恐怖したのだ。

「まいったな・・・」

そう口にした時に枕元に置かれていたスマホが音を立てる。
そこには幼馴染のさゆりからのメッセージが表示されていた。

『ちょっとまこと?起きてる?まなみってストーカーの件で相談に乗ってほしいんでしょ?今からそっち行くから、じゅんも呼んでおいてよ』

そのメッセージを目にしてまた一つ溜め息が出る・・・

「今からか・・・ちょっと片付けないとな・・・」

そう口にして軽く部屋を片付けていく・・・


まこと、さゆり、じゅん この3人は幼馴染であった。
小さい頃から仲の良かった3人であるが高校に入った頃にその関係は少し変化した。
まこととさゆりが交際を始めたのだ。
だが、それでも二人はじゅんと変わらない関係を希望し、じゅんもそれを受け入れた。
少し歪な関係であったが子供の頃から変わらないこの関係を3人は続けたのだ。


「っと返信しておかないとな」
『ごめん今起きた。分かったよ、じゅんも呼んでおくわ』

スマホを操作してメッセージを送信した・・・



30分後、部屋のインターホンが鳴った。
俺は玄関のドアを開く・・・

「あれ?じゅんもう来てたの?」
「あぁ、ついさっき着いた」
「まことは?」
「今シャワー浴びてるわ、とりあえず入れよ」
「うん」

部屋にさゆりを招き入れ俺は適当に飲み物を用意する。
まるで自分の部屋の様に準備をしている俺を見てさゆりは小さく笑う。

「勝手知ってたる他人の家ってやつだね」
「違いない」

そう言ってテーブルに置いたジュースをさゆりは口にした。
その時フト開きっぱなしのワープロが目に入った。

「あっまことこれまだ使ってるんだ」
「あーそういえばあいつが高校の頃から使ってるやつだったな」
「そうだったねー、何回言ってもまことひらがな入力止めなくてね」
「そうそう、ローマ字入力を学校で教わっているのに慣れてるからとか言い切ってたからな」
「懐かしいね~」

さゆりとじゅん、男女であるのに昔と変わらない軽い会話をしながらまことを待つ・・・
だが・・・

「なんかまこと遅いね?」
「あーそういえばそうだな」
「お風呂場で寝てたりして」

まるで悪戯小僧の様な笑顔を浮かべながらさゆりはバスルームに向かって歩いていく・・・
中からシャワーの音が聞こえるので驚かそうとソッとさゆりはドアノブを回して・・・

「あっ・・・あれ?」

そのままドアにもたれ掛かる様にバスルームを開きながら倒れこむ・・・
そして、彼女の目にそれは飛び込んできた。

「えっ・・・」

上手く動かない体、震える首を上に向けてそれを見た・・・
浴槽に座り込み頭からシャワーを浴びている眼球の無い男の死体・・・
叫び声を上げようにも余りの驚きと不自然な体の痺れでさゆりは固まっていた・・・

「ごめんさゆり、まことの瞳はお前じゃなくて俺だけを見て欲しかったんだ」

後ろから聞こえるその声、まるで自然体なじゅんのその声に目を見開いた。
そして、玄関から出て行く足音・・・
先程飲んだ飲み物に何かが入っていたのか徐々に呼吸もし辛くなってきた・・・

「なん・・・で・・・・じゅ・・・ん・・・」

息を吐けるが吸えない、体が痺れでうまく動けない状態ではあった。
だがさゆりは最後の力を振り絞って動いた。
酸素が送られなくなって徐々に酸欠で耳鳴りや視界が黒く染まっていく・・・
そんな中、ただただ彼女はじゅんが犯人だと残そうと動いたのだ。
そして、開かれていたワープロに辿り着きキーボードを押す・・・

『J・U・N』

ダイイングメッセージ、それを打ち終えたさゆりは消えそうな意識の中最後にそれを見た・・・
そう、まことのワープロはローマ字入力ではなく、ひらがな入力に設定されていたのだ。
そこに表示された文字は・・・

『ま・な・み』

驚愕に染まった表情のままさゆりは息を引き取った・・・



後に、警察はまなみと言う女のストーカーが彼女諸共殺害したのだと操作を開始したのだがこの事件は迷宮入りする事となる・・・
まことの部屋に残されていた『まなみ』と言う名の女性からの多数の手紙、そしてさゆりが最後に書き残したその名前が皮肉な事にじゅんを容疑者から外したのであった・・・






「これでずっと俺だけを見てくれるね・・・まこと・・・愛してるよ・・・」



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