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第56話 一難去ってまた一難去って更に一難

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椅子に下敷きになったジタンは暴れるでもなく無表情のまま動かなくなっていた。
カインは震えるカミラの側に寄る。

「大丈夫ですか?」

突如ガバッとカミラがカインに抱き付いた。
ロッツォと言う子供が居る人妻だがこの世界では成人が早いのかカミラは母と言ってもやはり若い。
そんな人に抱き付かれて驚きつつもその手が震えているのに気付き背中を軽く叩いてやる。
口調は少しオバサン臭いがこうしていると綺麗なお姉さんと言うのを認識した。
そもそも最初に会った時は村人が襲い掛かるなかという状況が状況なので意識することは今までなかったのだ。

「大丈夫、落ち着いて下さい」

四人のリリンが心配そうに見詰める中、少しずつ落ち着いたカミラはそっと体を離した。

「ご、ゴメンねこんなオバサンに抱き付かれて嫌だったろ?」

口調は相変わらずだがシュンッとした感じのカミラは前よりも少し身近に感じた。
カインはその手を取ってカミラを立たせてやる。

「気にしなくても大丈夫ですよ、それよりも…」

あれ以降一切動かないジタンを無視して奥へと続くドアに目をやる。
回す形のノブが付いた普通のドアなのだが何か違和感を感じるのだ。
そう、普通なら気付かない…本来在るべき物がそこにはどう見ても無いのだ。
カインは一人ドアに近寄りノブに手を伸ばそうとしてその手を止めた。

「ダメっ!逃げて!」

後ろで一人のリリンが声を上げた。
そして、カインは後ろへ飛ぶ!
その瞬間ドアの上下の隙間から尖った歯が生えてドアが真っ二つに折れた!
それは巨大な口であった!
あのままあの場所に居れば潰されていた事を理解してドアがあったその場所を見る。
カインは直ぐに違和感に気付いた。

「そうか、蝶番が無かったから変だったのか」

そんな呑気なカインの言葉に反応するかのようにドアの在った壁がぶち破られ巨大な顔がやってきた!

「き、きゃぁぁぁぁ!!!」

カミラの悲鳴が上がるがカインは直ぐにその手を取りリリン達もカインの前を反対方向へ走り出す!
その先にはあのおかしくなった通路しか無いのだが…
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