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第3話 時は加速していく・・・
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あれから100年ほどの歳月が流れていた。
身分証明が必要無い場所に引っ越しては住み込みで働いたりして生活をしていた。
きっともう息子だけでなく孫も寿命で亡くなっている事だろう。
「おはようさん、今日も宜しくね」
「はい!」
今、私が働いているのはとある個人経営の会社の社員寮である。
そこで事務兼寮長である。
幸いなことに私には時間が無限にあった。
なので資格を色々取得したり様々な技術を身に付けたり出来たのだ。
「寮長、雨漏りが・・・」
「うん、お昼に直しておくね」
「寮長、ここなんだけど・・・」
「あぁそれはね・・・」
私には150年以上の経験が有る。
一時期は生きる為に様々な事をやった。
そして、その全てが身に付いていたのだ。
そんなある日・・・
「結婚を前提に付き合って下さい!」
ある一人の男性から告白された。
だが・・・
「ごめんなさい」
「ど、どうして?俺じゃだめですか?」
「いえ、実は私・・・とある事情で戸籍が無いんです・・・」
今までも何度か交際の申し込みを受けた事はあった。
だが戸籍が無ければ結婚も出来ない、そう言って断り続けてきたのだ。
しかし・・・
「分かりました。なら籍なんて入れなくてもいいです!一緒になって下さい!」
後から聞いた話であったが世の中には親が出生届を出さなかった為に無戸籍の人間が居て、私はそれなのだと勘違いされたのであった。
身内と呼べる人間が居らず淋しさを毎日感じていた私はその彼と暮らす事に決めた・・・
「あれ?今日なにするんだっけ?」
「はぁ・・・今日は父さんの墓参りでしょ?お母さん見た目は若くてもやっぱ年なのね~」
ここ最近いつもボーとしている、目の前に居るのは再婚相手との間に出来た娘だ。
今年で20になる娘と仕事の途中で事故死した旦那の墓参りに行く約束をしていたのを思い出す。
「そうだったそうだった。ごめんね、いきましょうか」
そう言って私はボンヤリとしたまま準備を行う・・・
私は知らなかったのだ。
脳が記憶を蓄積すればする程、個別に残っていた記憶は思い出せなくなり、慣れれば慣れる程感情は死んでいくと言う事を・・・
そして、なにより・・・
一番重要なのが体感時間であろう。
ジャネーの法則と呼ばれるものがある。
生涯のある時期における時間の心理的長さは年齢の逆数に比例すると言うものである。
5歳の人間の1日が50歳の人間の10日に当たるとも言われるこれが私に襲い掛かっていたのだ。
「へ~人類が別の星に移住を始めたのか・・・」
テレビで放送しているニュースをボーと眺めながら内容を口にする・・・
あれから一体どれ程の時間が流れたのか分からない。
私は一人、他人との別れの悲しみを受けないように誰とも会わない生活を送っていた。
幸い、物凄い長期間貯めたお金があったので生活に困ることは無かった。
「あれ?なにこれ?うそでしょ?」
私は驚きに固まった。
テレビに映し出された年号が既に知らないものに変わっていたのだ。
自分の中では数日しか経過していない筈だったのだが、実際には数十年が経過していた・・・
だが驚いたのも一瞬、何年経過しようが自分の生活が変わることは無かった・・・
そう、この日までは・・・
「ぎゃあっ!?」
それは偶然が重なりあって出来た事故であった。
折れた刃物が跳ねて私の左目に突き刺さったのだ!
「い・・・痛い・・・痛い・・・」
私は電話で救急に電話を掛けた・・・
たどたどしい言葉でなんとか現在地と状態を伝える・・・
そう、私は実に10年ぶりくらいに人と会話したのだ。
その為、自分の思考も定まらず言葉も上手く喋れなくなっていたのだ。
それに恐怖しつつも直ぐにやって来た救急車に乗せられ病院に行った・・・
そんな私に告げられたのは・・・『左目失明』という現実であった・・・
身分証明が必要無い場所に引っ越しては住み込みで働いたりして生活をしていた。
きっともう息子だけでなく孫も寿命で亡くなっている事だろう。
「おはようさん、今日も宜しくね」
「はい!」
今、私が働いているのはとある個人経営の会社の社員寮である。
そこで事務兼寮長である。
幸いなことに私には時間が無限にあった。
なので資格を色々取得したり様々な技術を身に付けたり出来たのだ。
「寮長、雨漏りが・・・」
「うん、お昼に直しておくね」
「寮長、ここなんだけど・・・」
「あぁそれはね・・・」
私には150年以上の経験が有る。
一時期は生きる為に様々な事をやった。
そして、その全てが身に付いていたのだ。
そんなある日・・・
「結婚を前提に付き合って下さい!」
ある一人の男性から告白された。
だが・・・
「ごめんなさい」
「ど、どうして?俺じゃだめですか?」
「いえ、実は私・・・とある事情で戸籍が無いんです・・・」
今までも何度か交際の申し込みを受けた事はあった。
だが戸籍が無ければ結婚も出来ない、そう言って断り続けてきたのだ。
しかし・・・
「分かりました。なら籍なんて入れなくてもいいです!一緒になって下さい!」
後から聞いた話であったが世の中には親が出生届を出さなかった為に無戸籍の人間が居て、私はそれなのだと勘違いされたのであった。
身内と呼べる人間が居らず淋しさを毎日感じていた私はその彼と暮らす事に決めた・・・
「あれ?今日なにするんだっけ?」
「はぁ・・・今日は父さんの墓参りでしょ?お母さん見た目は若くてもやっぱ年なのね~」
ここ最近いつもボーとしている、目の前に居るのは再婚相手との間に出来た娘だ。
今年で20になる娘と仕事の途中で事故死した旦那の墓参りに行く約束をしていたのを思い出す。
「そうだったそうだった。ごめんね、いきましょうか」
そう言って私はボンヤリとしたまま準備を行う・・・
私は知らなかったのだ。
脳が記憶を蓄積すればする程、個別に残っていた記憶は思い出せなくなり、慣れれば慣れる程感情は死んでいくと言う事を・・・
そして、なにより・・・
一番重要なのが体感時間であろう。
ジャネーの法則と呼ばれるものがある。
生涯のある時期における時間の心理的長さは年齢の逆数に比例すると言うものである。
5歳の人間の1日が50歳の人間の10日に当たるとも言われるこれが私に襲い掛かっていたのだ。
「へ~人類が別の星に移住を始めたのか・・・」
テレビで放送しているニュースをボーと眺めながら内容を口にする・・・
あれから一体どれ程の時間が流れたのか分からない。
私は一人、他人との別れの悲しみを受けないように誰とも会わない生活を送っていた。
幸い、物凄い長期間貯めたお金があったので生活に困ることは無かった。
「あれ?なにこれ?うそでしょ?」
私は驚きに固まった。
テレビに映し出された年号が既に知らないものに変わっていたのだ。
自分の中では数日しか経過していない筈だったのだが、実際には数十年が経過していた・・・
だが驚いたのも一瞬、何年経過しようが自分の生活が変わることは無かった・・・
そう、この日までは・・・
「ぎゃあっ!?」
それは偶然が重なりあって出来た事故であった。
折れた刃物が跳ねて私の左目に突き刺さったのだ!
「い・・・痛い・・・痛い・・・」
私は電話で救急に電話を掛けた・・・
たどたどしい言葉でなんとか現在地と状態を伝える・・・
そう、私は実に10年ぶりくらいに人と会話したのだ。
その為、自分の思考も定まらず言葉も上手く喋れなくなっていたのだ。
それに恐怖しつつも直ぐにやって来た救急車に乗せられ病院に行った・・・
そんな私に告げられたのは・・・『左目失明』という現実であった・・・
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