絶対無敵のアホウ

昆布海胆

文字の大きさ
2 / 25

第2話 ダンジョンで一人地下へと落下する主人公

しおりを挟む
「今だ皆走れ!!」

孝明が巨大な魔物にスキル『武神連舞』を叩き込んでよろけたと同時に叫ぶ!
クラスの皆は孝明の声と共に階段へと走り出した!

「いやぁー!!孝明!たかあきぃいい!!!」
「あかね!孝明の気持ちを無駄にするな!」
「だって孝明がまだ・・・」

孝明に想いを寄せるあかねが戻ろうとするのを同じクラスメイトの浩二が止める。
それでもあかねは孝明の方へ手を伸ばして泣き叫ぶ。
昨日やっとその想いを伝える事が出来て返事を待っているあかねは浩二を睨みつける。
この地下奥深くへ転送されたのも浩二が欲を出して宝箱に飛びついたのが原因なのだ。

彼等は元々日本の高校生、授業が始まると同時に突然異世界へ転移させられ勇者として崇められた。
転移すると共に特殊な能力『スキル』をその身に宿しこの世界の危機を救う勇者として修行の為このダンジョンへ来ていたのだ。

「孝明ー!!走れー!!!!」

しんがりを勤めていた数名のクラスメイトが階段の手前で振り返り一斉にスキルを発動する!
各々持つ魔法系スキルが七色の光となってスキル硬直で動けない孝明を襲おうとする巨大な魔物に飛んでいく!
着弾と共に爆風で孝明は吹き飛ばされその直後硬直が解ける!

「助かったぜ皆!」

空中で1回転して見事な着地を決めてそのまま駆け出す孝明。
だが数名の同時スキル攻撃でも大したダメージを負っていない巨大な魔物はすぐさま爆煙から飛び出し孝明を追いかける!
階段下の数名はスキル硬直で動けず追撃を行う事が出来ない、悔しい顔を浮かべながら走る孝明を見詰める。
いくら勇者として肉体的にも強化されているとはいえその走る速度程度では後ろから追いかけてくる魔物から逃げる事は不可能であった。
そして、このまま行けば階段の下の連中も階段の途中のクラスメイトも追い付かれて皆殺しにされる。
そう考えた孝明は振り返って再び魔物に向けてスキルを発動する!

「喰らえ!『武神連舞』!!」

縦に振り下ろした軒筋とは別に斬撃が孝明の背中から様々な角度で魔物に襲い掛かり攻撃態勢であった巨大な魔物は切り傷を負ってよろける。
その時であった。

「『風神疾風』」

あかねの直ぐ横から放たれたスキル攻撃がスキル攻撃の硬直で動けない孝明に襲い掛かった!
対象に好きな方向で強風を吹かせるこのスキルは孝明を空高く舞い上げ魔物の後ろ、つまり階段とは反対方向へ吹き飛ばす。
驚きに包まれながらあかねが振り返ると浩二がそこに居た。
スキル硬直で動けなくなっている浩二にあかねの絶望の表情が突き刺さる。
そして、吹き飛ばされた孝明は地面を転がりスキル硬直が解ける。
体を起こして見上げるそこには魔物が立ちはだかっていた。

「グォオオオオオ!!!」

逃がさないと叫ぶように咆哮が上げられ孝明は身を硬直させる。
そこへ横から叩きつけるように魔物の腕が振られ孝明は横の壁に叩きつけられる。
その目にあかねの泣き叫ぶ姿が入り孝明は笑みを浮かべた。

「さよなら・・・あかね・・・」

そして、手にしていた剣を地面に突き立てた!

「『武神連舞』!」

まるで削岩機で地面を掘り進めるように次々と背中から出る斬撃が地面に突き刺さる!
残った力の全てを叩き込んだそのスキルは先程とは比べ物にならない程の数の斬撃が発生し地面が底を抜けた。
本来ならありえない程の破壊力であるがそれでも目の前の魔物には効かなかった事から魔物のステータスが異常だと理解できるだろう。
そして、地面が崩落すると共に孝明も魔物も地面と共にその奥深くへ落下していく。
孝明が最後に聞いたのはあかねの悲鳴であった・・・

「いやぁああああああああ・・・・」












「はぁ・・・はぁ・・・げふっ・・・まさか・・・あの高さから落ちて生きているなんてな・・・」

仰向けで寝転がる孝明、その真下にはあの魔物が横たわっていた。
偶然にもあの魔物が孝明の下になりクッションの役割を果たして孝明は助かったのだ。
それでもあちこちの骨は折れて内臓もかなり損傷していた。
どれくらい気を失っていたのか分からないが勇者の自然治癒の力でなんとか這って動ける位には回復していた。
魔物の体から転げ落ちるように地面に降りた孝明は少しでも魔物から離れようと這って移動する・・・

「こいつもまだ生きてるなんて・・・全く今日は最悪な一日だ・・・」

何とか壁まで辿り着いてゆっくり立ち上がり痛みに耐えながら壁沿いに進む孝明。
ダンジョンから帰ったらあかねに自分の気持ちを伝えて交際を開始する予定だったのにこんな事になった自分の運命を恨みながら進む孝明。
だが悪い事と言うのは続くモノである。

「ま・・・マジかよ・・・」

弱いとはいえ厄介なコウモリの魔物が多数天井に待機して孝明の事を見詰めていた。
孝明の流す血の匂いに興奮しいつ襲い掛かるかタイミングを見計らっているのだ。

「くそ・・・」

折れた左腕をダラリと垂らしながら右手で折れた剣を手にして孝明は壁にもたれながらにらみ返す。
そして、同時に数匹ずつ襲ってくるコウモリの魔物に体を何箇所も噛み千切られながら少しずつその数を減らす孝明。
既に噛み千切られた痛みなのか折れてる痛みなのか分からないまま孝明は戦い続けた。

「お・・・れ・・・は・・・い・・・き・・・る・・・ん・・・だ・・・」

コウモリを全て倒し終えた孝明は既に虫の息であった。
腹部からは内臓が出ており生きているのが不思議な状態である。
そんな孝明は最後の希望として意識を失わず自然治癒で生存できるまで何とか耐えようと意識を失わないように耐え続けていた。
意識を失えばそのまま死んでしまうのが分かっているのだ。
それでもその身に受けている傷は深く大きすぎた。
既に自然治癒が殆ど働いていない事を理解していない彼がここまで耐えれているのはあかねの想いがあったからである。
そんな孝明のぼやける視界に歩いている1人の男の姿が映った。

「はは・・・幻覚・・・とか・・・・もう・・・・・ここまで・・・・・か・・・・・」

そう考えるのも無理は無い、『酒井酒店』と言うエプロンをして帽子を被りながら手に持つ何かを混ぜるその男。
そうである、彼こそ酒井ヒロシであった。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

OLサラリーマン

廣瀬純七
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~

bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...