絶対無敵のアホウ

昆布海胆

文字の大きさ
15 / 25

第15話 神の力

しおりを挟む
空に浮かぶシエルの体から後光が射し光の線が翼の様に見える。
それを見上げるヒロシはクリスの死体を寝かせて立ち上がった。

「さて、オロチの神の降臨にも成功したしここからは交渉だ!」
『なに?何を言っている?我は神なるぞ』

シエルの声がぶれて自我が飲み込まれつつあるのを理解したヒロシは自身の背中に手を入れる。
スルリとそこから出てきたのは金属バットであった。

『愚かな人間よ、多少我の力に抗う事が出来るようだがそこまでだ!』

その瞬間シエルから光の小さな玉が一つ放たれた。
ヒロシはそれを見て直ぐに理解をした。
見た目は小さな光る玉、だがその周囲2メートル程は見えない真空の刃が存在するのだ。
ヒロシはそれを見抜いた上で両腕を広げて立ち続ける。
背後にクリスが倒れているので回避するとその体をズタズタにしてしまうからだ。

「秘奥義・・・僕は死にましぇーん!」

ヒロシは叫んだ。
まるで102回目のプロポーズである。
そして、光の玉はヒロシの前で止まった。

『バ・・・バカな・・・私の力が止められた?』
「一応聞いておこう、今降参するなら絶望を体験しなくてもいいぞ」
『ふ・・・ふざけるなぁー!!!!』

ヒロシの忠告はまるで逆効果で鬼の形相に変化したシエルは両手を広げる。
すると地面が揺れて周囲の瓦礫や岩が空中に持ち上がる。

『物理的に潰れて死ね!』

シエルが手を翳すと浮かんでいた岩や瓦礫が一斉にヒロシに向かって飛んできた。
それを見たヒロシは手にしていた金属バットを右手に持ち構える。
何故かバットを逆に持つ体勢のまま腰を低くしてそれを放つ!

「アバン○トラッシュ!」

金属バットから放たれたのは斬撃ではなく打撃であった。
本来剣を使って放つ技であるアバンス○ラッシュを金属バットで行なったのだ。
そして、その飛ぶ打撃は飛来していた岩や瓦礫を粉々にしながらシエルの方へ飛んでいく!

『甘いわ!』

シエルが指を翳すとそこに光の盾の様な物が発生し飛ぶ打撃と接触した瞬間共に粉々に砕け散った。
ヒロシの必殺技を簡単に防いだ事でシエルは口元を歪めるがヒロシは全くシエルの方を見ていなかった。

「ほらクリスそろそろ起きようぜ」

そう言って羽の様なものを一つ取り出しクリスに与える。
それがヒラリヒラリと死んでいるクリスの胸に乗るとクリスの心臓が再び動き出した。
そう、かの有名なフェニックスの尾であった。

「そして、これだ!たーんとお飲みなさい」

更にヒロシが取り出したのは容器であった。
手書きのラベルで『ひろしスペシャル』と書かれたそれを開き中のカプセル錠剤を倒れているクリスの口へと流し込む。
流し込まれるたびにビクンビクンと体を反応させるクリスの異様な様子にシエルもその様子を伺っていた。
ヒロシが無視をしていたのに怒ろうと思ったのだが突如生き返ったクリスに驚いて怒りを忘れていたのだ。

「ごふ・・・ごは・・・ご・・・ごぼっ・・・」

錠剤を飲み込んだクリスは目をカッと開いて上体を起こした!
そして・・・叫んだ。

「お・・・おおお・・・オクレ兄さん!!!」
『へ・・・変な夢見てるーっ!!』

意味不明な叫びに突っ込みを入れてしまったシエルであるが生き返ったのならもう一度殺せばいいと考え直しヒロシとクリスを見下ろす。
だがまるで今は俺達のターンだと言わんばかりにヒロシは起き上がったクリスにもう一つ大切な物を取り出した。

「さぁ、飲むんだ」
「・・・んぐ・・・んぐ・・・んぐ・・・」

それを飲んだクリスの体に直ぐに変化は現れた。
まるで筋肉が別の生き物に変化しようとするかのように盛り上がりクリスの体をムキムキに変えていく。
そう、ヒロシが飲ませたのはかの有名な『ドーピングコンソメスープ』なのであった!

『愚かな・・・』

そう言ったシエルは地上に降り立った。
それを見たクリスは肥大化した筋肉を大きく動かして歩き出した。
一歩、また一歩と歩くたびにその歩行速度は上がっていく・・・
だがそれはクリスが速度を上げているのではなかった。

『大神(おおみわ)』

それはシエルの体を中心に周囲の全ての物が引き寄せられる技であった。
気付いた時には既に遅くクリスの体は自由が利かなくなりシエルの前に立ち尽くした。
即座にシエルの腕がクリスの腹部へ突き刺さった。
その腹部から腕と共に青白い玉が引き抜かれた。

『儚いものよ』

その青白い玉をシエルは握り潰した!
それと共にクリスの体がきりもみ状態で吹き飛ぶ。
魂の一部を引き抜いて握り潰したのだ。
地面を転がるクリスは既に瀕死となっていた。

「仕方ない、俺がやるかなぁ!」

本来ならこの世界の戦いはこの世界の人間であるクリスに任せるつもりだったのだが予想以上のオロチ神の力にヒロシは行動を起こした。

パチンッ!

『ウッ・・・いまなにをした?』

ヒロシが指をパチンっと鳴らすとシエルは頭を押さえてふら付いた。
それを見てヒロシはちょっとガッカリした表情を見せるが手にしていた金属バットを握り締めてシエルを見詰める。

『そんなもので私を倒すつもりなのか?』
「確かに、今のままじゃ駄目だろうな・・・だったらこうするまでよ!卍解!」

その言葉と共にヒロシの手にしていた金属バットが光り輝き刀の形へと変化していく・・・
それは本当は死神の持つ武器である斬魄刀なのであった。
しかし、ヒロシは刀に変化したその刀を見て無言で頷く。
いつの間にか白黒の死神装束に着替えていたヒロシであったが刀が突如光り輝きだした!

「やっぱ神を相手にするならこれは必需品でしょ?」

そう言ってヒロシの手に在った刀は変化して巨大な動力工具になった。
それのレバーを入れれば物凄い速度で工具の周囲の刃が高速で回転を始めた!
気付けばヒロシの姿はまた変わっており青いツナギの様な物を着ていた。

「さて、もう一度だけ聞く。降参しないのか?」
『わ、私は神なるぞ!』
「分かった。なら容赦しない!」

そう言って何処からか取り出した白い仮面を顔に被せて高速回転する電動工具をシエルに向ける。
これを武器として使うならこれは必需品だろうと言わんばかりにノリノリなヒロシ。
その姿は御存知14日の土曜のあの人であった。
手にしている武器は勿論チェーンソー。
神すらも一撃で殺すことが出来る武器である。

『無駄だ!武器である以上近寄れ無ければ使用できまい!そのままそこで死ね!』

シエルがそう告げると空にオーロラが現れる!
そして、そのオーロラの光がヒロシ達の元へ差し込んだ!

『さぁ、無に帰ろう!』

ヒロシの体もクリスの体もその空から差し込んだ光に包まれた・・・
その体を光そのものが傷つけだす!
この周囲全てが同じように標的となるのだが最初の時点で綺麗に掃除されていた。
逆にこれが逃げる場所を完全になくしていたのだ。

『ほぅ・・・立ち往生か・・・まさしく武士であったな。』

光が収まったその場所に強烈な光が差し込んでヒロシとクリスの体は全身にそれを浴びた。
ヒロシはクリスに止めを刺されないようにその身を挺して全てを受け止めた。
その結果、全身はボロボロとなり手にしていたチェーンソーもいつのまにか停止していた。
しかし、再びシエルの視界がふら付いた。

『まっまたかっ一体何なんだ?』

そう言ったシエルの背後からその声は聞こえた。

「やっぱこれじゃだめかぁ~」

いつの間にかシエルの背後に回りこんでいたヒロシは手にしていたチェーンソーを横へ捨てた。
それに違和感を覚えつつもシエルはヒロシから距離を取る。

「さて、んじゃあソロソロ反撃と行きますかね!」

そして、ヒロシが動き出す!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

OLサラリーマン

廣瀬純七
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~

bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

処理中です...