召還勇者の真実

昆布海胆

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第1話 召還

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僕の名前はピピノ。
マリアハンという町に住む庶民の息子さ。
僕の町にはその昔、世界を滅ぼしかけた魔王を退治した勇者様を召還したって歴史があるのさ。
その勇者様の子孫であるこの町の王様が200年に一度勇者様を召還して王妃様に子を宿してもらい元の世界に帰って貰うという伝統がこの町にはあるのさ。
そして、その200年振りの勇者様を召還する日が今日って訳さ。

「ピピノ、準備はできたの?」
「母さん今行くよ!」

数えて6回目になる勇者様を召還するこの日は町の皆が仕事を休んで召還の儀式を見に行く。
別に強制って訳じゃないんだけど世界を救いこの国に平和と優秀な子孫を残して貰うこの日はそう言う日なんだと伝えられている。
っと言うのも前回は200年前だから前回を体験して生きてる人が居るわけもないし本当のところは分からないんだけど町中に通達があったから行くしかない。
大人は参加をすれば税金の免除や減額がどうたらって話をしていたからきっと参加するだけで一日仕事をするよりも得なんだろう。

町の中央にあるお城への跳ね橋を渡り門を潜ればそこは人で溢れ返っていた。
町中の人がここに集まってるのだから仕方無いだろう。

「よっと、これで見えるか?」

父さんが僕を肩車してくれた。
視界が一気に広がり城の様子がよく見える。
踊り場と言うのだろうか、そこに王様と王女様と召還士と呼ばれるこの日のためだけに鍛えられた魔法使いが居た。

「静粛に!これより勇者召還の儀式を執り行う!」

兵隊長と思われる男性が声をあげてそれに合わせて静まり返る住人達。
そして、召還士が見たことない躍りを披露し両手を天に掲げた!
さっきまで青空だった空がいきなり黒い雲で覆われ気温が一気に下がった気がした。
そして、召還士の目の前に雷が落ちた!

「えっ?」

僕は召還士の目の前に居た。
さっきまで確かに父さんに肩車されたまま見上げていた筈なのに王様と王女様のすぐ横に座っていたのだ。

「をををを…成功じゃ!勇者様、ようこそマリアハンへお越し下さいました」
「勇者様、私はこの国の王女マリアと言います。お名前を伺ってても宜しいですか?」
「えっ?僕?僕はピピノですけど…」
「皆の者!勇者ピピノ様が降臨なされた!今日は盛大に祝ってくれ!」

城下の人々の歓声が聞こえる中、僕は意味が分からずただ王の言葉を聞きながら見ているだけだった
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