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※第1章※ 俺の異世界はここだと言って

※2※ 俺のユートピアはどこですか?

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俺は姉が見えないことを忘ればあちゃんに詳しく聞いた。

「ばあちゃん!ここが霊界ってどういうことだよ?
俺は……俺は……異世界ハーレムするはずだったんだぞ!どうしてくれんだよ!」

「あんたいきなり何言ってんの?異世界ハーレムとかキッモうっざ!
ばあちゃんとかいきなり変なとこ見て話し出すなよ ここに何があんだよ!」

もうこの見えない姉誰か引き取ってくれよ……話しが進まない
あんたには何も見えなくても俺にはばあちゃん見えてんだよ!

そんな話が噛み合わない姉弟を無視するかのように
ばあちゃんは台所へ行き俺らの好きなお菓子を持ってきた。

俺には普通にばあちゃんがお菓子を持ってくる図なのだが
見えない姉はお菓子だけが宙に浮いてこちらに向かってくるもんだから
パニックで大きく開いた口が閉まらないよだった。

「え?は?なんでお菓子が浮いてるの?」

「だからさっきから言ってんじゃん!そこにばあちゃんがいるんだって!」

説明を何度もしたが理解しようとしない脳筋な姉の為に俺は
最終手段としてばあちゃんの顔を触らせた。

「はい!ここにおばぁがいるから触ってみ!人の顔じゃろが!」

「うわっ何これキッモ……マジで人の顔の感触だわ……」

ばあちゃんもまさか自分の顔を触られてキモいと言われると思わず物凄い不機嫌顔である。

「姉ちゃんちょっとこのお菓子を食べて大人しくしてて俺ばあちゃんから詳しく聞くから」

姉ちゃんは納得がいってないようだが今までに見たことの無い真剣な顔で頼んだので
しぶしぶ出されたお菓子をつまんでいる。

『よっこらしょっと!さぁてと話してもええのが?』

ばあちゃんがみんな分のお茶を配り終えてこたつにあたり始めた。

「おぅ!覚悟はできている!ここがなぜ異世界ではないのか教えてくれ!」

『まぁだそったらごといってらのが……はぁ……
ここはな異世界っちゅうとこじゃなくてな 
そうさなぁそっちの言葉でいえば霊界やあの世って所じゃ
おめぇらの居た世界から見たら鏡の中の世界って感じかのぉー わがっか?
なして鏡の中が霊界がっていうとな、こっちの神様がな住み慣れたところさ住んで好きな時に
孫や親族を鏡の中から見て見守っていられるようにって作ってくださったんじゃ 』

「鏡の中で霊界?え?待って俺達天国に来たの?それとも地獄?」

『ここは天国に一番近い所じゃよ。そんで地獄はな富士山の穴の中のその奥にあるんじゃ
そんでな富士山におる神さんが現世で物凄い悪さした奴らをすぐ地獄に落としたり、
転生したいと願って富士山に来た者を転生させたりしとるんじゃ』

ばあちゃんの物凄い話についていくのがやっとな俺はもはや冷めきってしまったお茶をすすった。

『さぁてとおめぇだちそろそろあっちの世界さ帰んねぇば おめぇだちはまだ生きてらのだすけ
元の世界さ帰んなせぇ』

帰る?帰るってどうやって?
おばぁの一言ではたと気づいた。俺はネットの掲示板で行く方法は見たが帰る方法までは見ていなかった。
なぜなら、異世界大好きな人ならわかってくれるだろう!

俺は異世界に永住する予定だったのだ!

一緒に連れてきた姉?
姉は異世界で見つけたイケメン王子でもくっつけときゃなんとかなるだろとか思ってました。(笑)
ゲスい顔をしながら姉を見下していると
「私に説明は?オメェだけなに納得した顔してんだ?ごらぁ!」
とおでこを鷲掴みされギリギリを締めあげてくる姉
「あでででででででで!!!!!!いやぁぁぁぁぁぁぁ!
やめてぇぇぇぇ!!!おねぇさまぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
あまりの痛さに床を転げ回り絶対3回仕返ししたると心に決める弟であった。

しばらく痛みに転げ回っていると
「ばあちゃぁぁぁん 神様に言われて来たよぉー」
と聞きなれない子供の声が近づいてきた。

ふと目を向けるとそこにはあっちの世界で飼っている茶トラ子猫のシュマリだった。
赤と白の交差した紐でできた首輪をしたシュマリはお稲荷様のようだった。

「あっご主人様方こちらにいらしたのですね!神様に頼まれてお迎えにきました。」

開いた口が塞がらずなぜ猫が喋っているのか不思議でならなかった。
「ここここれは……もう異世界でしょ!猫が喋るとか異世界認定でしょ!」
猫が話すという単語だけで舞い上がる弟を尻目に姉は冷静だった。

「あのバカはほっとくとして、シュマリ一つ聞いていいかな?なんでここにいるの?そんでなぜ喋れるの?」
どうやら霊が見えず話せず聞こえない姉にもシュマリの声が聞こえているようだった。

「はい!御主人様。実は神様にあっちの世界から迷い込んだ者がいて、どうやらお前の主人達のようだと。
こちらの世界は、死んだ者とそれをこちらに導く猫や狐や狸等の動物しか入れない空間なんだそうです。
そこに迷い込んだ御主人様達を神様のところに連れて来いと言われたです。
なぜ話せるかというと、死んだ方達を迷わす事なくこちらへ導くためだそうです。
しかし、あっちの世界だと神様の力は及ばないので御主人様方には通じないのだと言っていました。」

「なるほどね。そこは理解したわ。でもなぜここに私たちは迷い込んだの?」
意外とすんなり理解した姉は、シュマリに迷い込んだ理由を聞こうとした。
すると、
「それは……」
と言うと弟の方をチラチラと横目で見た。

猫が喋ったことに舞い上がっていた弟は、ドス黒い殺気を感じ振り向いた。
今にも噴火しそうな怒りに支配された姉が大きな握り拳を振り上げこちらに近づいて来ていた。

「あれ?どどどどどどうしたの?お姉ちゃん?お姉様?」

「こっち来たのって全てお前のせいなのか?」

(やばいこれは殺されるどころかサメの餌にされる……)


ドガッ!ドゴッ!

「ギャァァァァァァァァァ!!!!!!」
弟はその場にヘタリこみ半べそをかきながら姉に今までの経緯とおばぁの言った内容を聞かせた。
どうやら姉は半信半疑だったが、猫が話したりお菓子が浮くのを目の当たりにしなんとか納得してくれ、
ゲンコツ一つで怒りを納めてくれた。
いったいどう生きてきたらあんな暴君に育つのだろうか、それに比べて俺はこんなに繊細に育っているのに

姉に殴られたたんこぶをさすりながらシュマリを観察していると、姉が俺のTシャツの襟首をつかみ
「さ!元の世界に帰るためにシュマリと富士山まで行くよ!」
と言いだした。

俺的には猫が喋ったことに嬉しさを覚え、もしかしたらエルフたんとも会えるのではと思い
「俺は行かない!俺はこの世界でユートピアを作る!そしてエルフたんを探し出す!」
と姉の意見に意を唱えた!

すると姉が反論を唱えようとした時
「何がユートピアですか!エルフなんてこの世にもあの世にも存在してないんですよ!
いい年こいて何子供みたいな事言ってるんですか!」
「そうだ!お前の頭の中がユートピアだろうがドアホ!」
と齢3ヶ月の子猫に一掃され、姉に蹴りを食らうのだった。
後数日で三十路を迎える僕はしぶしぶ富士山へ行くことを了承した。

おばぁに別れを告げ、旅立とうとした時だった。
『ちょっと待ちなっせぇ!わぁも一緒にいぐべぇ そったらちっこいのさ道案内は任せらんねぇし
心配だべ こっちの事ばよぉぐわがってらすけ お姉ちゃんさも伝えどいてくんろ 』
と何故かおばぁも一緒に行くことになり姉に伝えた。

『んだば 行ってくるすけぇ。留守番は頼んだよぉー』
とおばぁが大きな声で玄関先から奥の方に話しかけると
「了解しました。お気をつけて!」
と小さな声が聞こえた。
誰なのだろう?と思いおばぁに聞くと
『後でわがるすけ』
と一言だけ言われもやもやする弟であった。
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