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小さな争い ②
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翌日。
エネルギー不足でふらふらとしながらも髪を切ることを諦めないロークはリェットを追いかけ回す。
「(夕飯、朝食を抜いただけで脳筋のこいつがこんなに顔色悪くなるのか…?)」
顔色を若干青くしながらも必死に追いかけてくるロークに違和感があった。普段獲物が自分の意図に気が付くことがないように音を隠す足音も、呼吸音もはっきりと聞こえる。
リェットも魔法使いとはいえ少しぐらいは護身術を嗜んでいる。だからこそ色んなところから差し向けられた暗殺者などを簡単に撃退していたのだが…。
そんな彼でもロークの戦闘術には舌を巻く思いをしていた。足音、呼吸音、動き方全てが予測出来ない。わざと立てているかと思えば陽動だったり、聞こえない故に安心していたら捕まっていたり全てがロークの戦術だった。
だが、今日はそれがない。音が途切れることはないのでずっと追跡されているのはわかる。逆に言えば音を消せていないのだ。こんなことは今まで一度もなかったことなのでリェット自身動揺していた。
そんなとき、ふっと音が消える。ロークがやっと本気を出した?
…違う。これは__。
彼は忘れていたのだ。ロークだって人間だということを。
「っげほ、…は、」
息ができない。苦しい。辛い。
いつもなら意識しなくても出来ることなのに、今は意識していても上手くできない。
ひゅーひゅーと喉がなり、足元だっておぼつかなくなってきた。今までそんなことなかったのに。
あいつは、頭がいいし身体能力もある。引きこもっていたということはそれなりの理由があるということで、人から逃れるのも上手い。それは、今までしてきた鬼ごっこからもわかりえていた。だから、今も俺が追跡していることに気づいているだろう。
油断させるには、自分がいるとわからせないように音を消さないといけないのに。どうしてもできない。止まることもできない。頭がぼうっとする。視界が歪んで、ぐるぐるする。
なんで、地面がなくなって、空が傾いて見えるんだろう。
「おいっ!!どこだローク!!」
音が不自然に消えた。意図的に消したというより、なにかがあって消えたように。
リェットは嫌な予感に背筋を凍らせ来た道を切り返し、追跡者の姿を探す。あの、銀髪と紅い煌めきを。自分にとってなくてはならなくなっているその姿を。
『こっち。蒼い守護者さん』
『あそこ。紅い殺戮者さんが倒れてる』
ふわふわと漂いながら現れた精霊たちが指す先。そこから紅い何かが輝いていることに気づいた。箒を異空間にしまい、本来の方法で空を飛ぶ。そのほうが早いからだ。
赤い輝きの元、倒れているロークの隣にリェットは軽やかに着地する。
リェットが隣に来ても動かないロークの首に手を当て脈を確認した。いつもより遅くなっている。意識が飛んでいるからだろう。だが、普通の人からしたらその脈拍は遅かった。
「こいつ…なんでこんなに拍が遅いんだ?それよりも…」
ぺたぺたと他に異常がないか調べていくと、普段の彼に比べたら異常なほどの発汗と発熱、息の合間に高い音が聞こえるので気道も狭まっているのだろうことがわかる。
つまり、症状から考えて。
「…風邪か。昨日風呂で湯冷めしたせいだな」
熱が出て気道が細くなって咳が出ている時点で気づくだろうと思ったがこの脳筋、まさか風邪をひいたことがないのか?と首を傾げ、それもありうると考えを改めた。
自分も不老不死となってから病気などとは無縁だが、動物であるあいつらがたまに貰ってくるのでその治療はしている。だからこそ症状を見てどの病気だかある程度推測がたった。
どれだけ化け物じみていても、やはりロークは人なんだな…としみじみと思い直し専用の笛を吹いて救助してくれそうなやつを呼び出す。
数分後、大きな羽音を響かせてやってきたのは大きな翼を背に生やし、四足歩行をする鷹のような鳥だった。
エネルギー不足でふらふらとしながらも髪を切ることを諦めないロークはリェットを追いかけ回す。
「(夕飯、朝食を抜いただけで脳筋のこいつがこんなに顔色悪くなるのか…?)」
顔色を若干青くしながらも必死に追いかけてくるロークに違和感があった。普段獲物が自分の意図に気が付くことがないように音を隠す足音も、呼吸音もはっきりと聞こえる。
リェットも魔法使いとはいえ少しぐらいは護身術を嗜んでいる。だからこそ色んなところから差し向けられた暗殺者などを簡単に撃退していたのだが…。
そんな彼でもロークの戦闘術には舌を巻く思いをしていた。足音、呼吸音、動き方全てが予測出来ない。わざと立てているかと思えば陽動だったり、聞こえない故に安心していたら捕まっていたり全てがロークの戦術だった。
だが、今日はそれがない。音が途切れることはないのでずっと追跡されているのはわかる。逆に言えば音を消せていないのだ。こんなことは今まで一度もなかったことなのでリェット自身動揺していた。
そんなとき、ふっと音が消える。ロークがやっと本気を出した?
…違う。これは__。
彼は忘れていたのだ。ロークだって人間だということを。
「っげほ、…は、」
息ができない。苦しい。辛い。
いつもなら意識しなくても出来ることなのに、今は意識していても上手くできない。
ひゅーひゅーと喉がなり、足元だっておぼつかなくなってきた。今までそんなことなかったのに。
あいつは、頭がいいし身体能力もある。引きこもっていたということはそれなりの理由があるということで、人から逃れるのも上手い。それは、今までしてきた鬼ごっこからもわかりえていた。だから、今も俺が追跡していることに気づいているだろう。
油断させるには、自分がいるとわからせないように音を消さないといけないのに。どうしてもできない。止まることもできない。頭がぼうっとする。視界が歪んで、ぐるぐるする。
なんで、地面がなくなって、空が傾いて見えるんだろう。
「おいっ!!どこだローク!!」
音が不自然に消えた。意図的に消したというより、なにかがあって消えたように。
リェットは嫌な予感に背筋を凍らせ来た道を切り返し、追跡者の姿を探す。あの、銀髪と紅い煌めきを。自分にとってなくてはならなくなっているその姿を。
『こっち。蒼い守護者さん』
『あそこ。紅い殺戮者さんが倒れてる』
ふわふわと漂いながら現れた精霊たちが指す先。そこから紅い何かが輝いていることに気づいた。箒を異空間にしまい、本来の方法で空を飛ぶ。そのほうが早いからだ。
赤い輝きの元、倒れているロークの隣にリェットは軽やかに着地する。
リェットが隣に来ても動かないロークの首に手を当て脈を確認した。いつもより遅くなっている。意識が飛んでいるからだろう。だが、普通の人からしたらその脈拍は遅かった。
「こいつ…なんでこんなに拍が遅いんだ?それよりも…」
ぺたぺたと他に異常がないか調べていくと、普段の彼に比べたら異常なほどの発汗と発熱、息の合間に高い音が聞こえるので気道も狭まっているのだろうことがわかる。
つまり、症状から考えて。
「…風邪か。昨日風呂で湯冷めしたせいだな」
熱が出て気道が細くなって咳が出ている時点で気づくだろうと思ったがこの脳筋、まさか風邪をひいたことがないのか?と首を傾げ、それもありうると考えを改めた。
自分も不老不死となってから病気などとは無縁だが、動物であるあいつらがたまに貰ってくるのでその治療はしている。だからこそ症状を見てどの病気だかある程度推測がたった。
どれだけ化け物じみていても、やはりロークは人なんだな…としみじみと思い直し専用の笛を吹いて救助してくれそうなやつを呼び出す。
数分後、大きな羽音を響かせてやってきたのは大きな翼を背に生やし、四足歩行をする鷹のような鳥だった。
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