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目覚め3
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とうとう、6日目の朝が来た。
具体的に何をしないとならないのか全く判らないが連絡は親父達の方からしか取れない場所にいるらしく、貴美恵さん曰く今日その電話を掛けてくる話になっているそうだ。
召還は夜行われるので、雅鷹さんは会社へ蕾紗さんは大学の研究室、久志は部活へといつも通り出掛けて行った。
だから俺もいつも通り朝食後は自室で柔軟、腹筋・背筋150回、腕立て伏せ100回、スクワット150回を行い、次に中庭で足裁きのおさらいに素振り200回を行った。
その後はシャワーで汗を流し、タオルで髪を拭きながらベッドに腰掛けて休んでいた所でドアがノックされた。
「彰ちゃん、今良~い?」
「はい!」
入ってきた貴美恵さんの手には受話器があり「彰信さんからよ♪」と手渡された。
「もしもし?」
「もしもし、彰か?元気か?」
「うん、まぁね」
受話器の向こうからは木々の葉が擦れ合う様な音が聞こえた。
雑音も入らないし会話に間が入らないから、やはり国内にいる可能性が高い。
「手紙、読んだよ。何か色々驚かされたんだけど」
「そうか…。その……隠していて、本当に……すまなかった」
親父の声は苦し気に掠れ、消え入りそうだった。
「良いよ。そりゃあ、まだピンと来なくて信じきれてない気持ちもあるけど。父さん達の所為じゃ無いし、父さん達の方が辛かったんだろうなって思うよ。それに俺は知らなかったおかげで逆に助かったよ。知っていたらきっと心が耐えられなかった」
「そうか、……そう言ってもらえるなんて、私達は果報者だな。ありがとう、彰。……もう、この名前を呼べなくなるのも何だか寂しく感じるな」
「何言ってんだよ、父さん」
さっきから普段の親父らしくなくて、俺は苦笑いした。
「そう言えば、母さんや煌夜は?」
「母さんは、まだ瞑想中だ。ギリギリまで力を溜めたいらしい。煌夜は私の隣にいる。…変わるか?」
「うん、お願い」
「…もしもし?彰?」
「あぁ、煌夜か?」
相変わらず兄さんとは呼んでくれない弟に、つい吹き出した。
「?…何笑ってんの?」
「いや、お前は今日まで兄さんとは呼んでくれなかったなって思ってさ」
「だって、“兄さん”じゃ、ないじゃん」
「……やっぱり知っていたんだな。いつから知っていたんだ?」
「生まれた時から?」
「!?」
え? お前 今、何て言った???
「俺さ。母さんのお腹に居た時からみんなの声が聞こえていて、会話も理解出来ていたんだ。しかも、今でもソレ覚えているんだ。だから、彰が“姉さん”だって知ってた。あっ、でもコレって母さんのお腹に居た時の魔力のおかげで、俺が天才とかそう言う便利な能力を持っているとかそんなんじゃないから」
だって、俺勉強嫌いだもん。と受話器越しにアハハハ!と弟は明るく笑った。
「じゃあ、煌夜、お前……」
「うん♪俺もあるんだ。魔力♪」
俺が母さんの魔力を奪ってしまったのに、弟も魔力を俺の様に保有して生まれてきたらしい。親父との子だからかは判らないが、おかげで小さい頃から魔法を教わっていて彰より色々知ってるよ♪と得意気な声。
「あぁ、そうだ、母さんから伝言。え~と、「真名を思い出して」って」
「マナ?」
「真の名って書いてまなって言って、彰が母さんのお腹に居た時に呼ばれていた名前だって」
ファルリーアパファルの女性は、妊娠をして胎児の動きを体感する様になると、自然と頭にその胎児の名が浮かび生まれて来るまで夫と自分だけで呼び掛けるのだそうだ。それはスニャタラーマ(真名)と呼ばれ、胎児も真名を覚えて生まれて来る。ただ、真名は大切な名前なので生まれた後は両親が新たに別の名前を贈る。
竜人や獣人の様に一目で番と判る力を持つ種族もいるが、その様な力が無い種族は真名の持つ力で唯一の番と巡り合う。真名には不思議な力が含まれていて、唯一の番に出逢うと心に互いの真名が響くのだ。
「だから、彰も俺もちゃんと真名があるんだ。俺は自分のは覚えているけど、彰のは判らない。彰は魔力と身体を封印してしまったから忘れてしまっているそうなんだ。だけど、母さん達に聞いて知ってはいけないって。魔力を戻す為にも身体が戻ったら必ず思い出さないといけないって母さんが言ってた」
俺からの話は以上だから父さんに変わるね、と弟は話すだけ話したら親父と電話を変わった。
「私もリリーからの伝言なんだが、今夜月が中天に来たら召還が始まる。日が暮れたら御祓を済ませて屋上で待機していて欲しいそうだ」
ファルリーアパファルの御祓のやり方や白い服はリリーが前もって貴美恵さんに伝えて用意されているから電話が終ったら聞いてくれ、と親父。
「それから、召還とお前の身体を戻す魔術はリリーとお前に血の繋がりがある親子だから離れた場所からでも問題無いので心配しないで良いそうだ」
最後に、俺の身体を戻す魔術が終ったら親父達も戻って来ると言われ、3日後には再会出来る様だ。
正直、俺自身自分がどんな姿に変わるのか判らないので不安だが、親父達は変わった後の俺と再会するから、かなり驚くのだろうな、と思った。
具体的に何をしないとならないのか全く判らないが連絡は親父達の方からしか取れない場所にいるらしく、貴美恵さん曰く今日その電話を掛けてくる話になっているそうだ。
召還は夜行われるので、雅鷹さんは会社へ蕾紗さんは大学の研究室、久志は部活へといつも通り出掛けて行った。
だから俺もいつも通り朝食後は自室で柔軟、腹筋・背筋150回、腕立て伏せ100回、スクワット150回を行い、次に中庭で足裁きのおさらいに素振り200回を行った。
その後はシャワーで汗を流し、タオルで髪を拭きながらベッドに腰掛けて休んでいた所でドアがノックされた。
「彰ちゃん、今良~い?」
「はい!」
入ってきた貴美恵さんの手には受話器があり「彰信さんからよ♪」と手渡された。
「もしもし?」
「もしもし、彰か?元気か?」
「うん、まぁね」
受話器の向こうからは木々の葉が擦れ合う様な音が聞こえた。
雑音も入らないし会話に間が入らないから、やはり国内にいる可能性が高い。
「手紙、読んだよ。何か色々驚かされたんだけど」
「そうか…。その……隠していて、本当に……すまなかった」
親父の声は苦し気に掠れ、消え入りそうだった。
「良いよ。そりゃあ、まだピンと来なくて信じきれてない気持ちもあるけど。父さん達の所為じゃ無いし、父さん達の方が辛かったんだろうなって思うよ。それに俺は知らなかったおかげで逆に助かったよ。知っていたらきっと心が耐えられなかった」
「そうか、……そう言ってもらえるなんて、私達は果報者だな。ありがとう、彰。……もう、この名前を呼べなくなるのも何だか寂しく感じるな」
「何言ってんだよ、父さん」
さっきから普段の親父らしくなくて、俺は苦笑いした。
「そう言えば、母さんや煌夜は?」
「母さんは、まだ瞑想中だ。ギリギリまで力を溜めたいらしい。煌夜は私の隣にいる。…変わるか?」
「うん、お願い」
「…もしもし?彰?」
「あぁ、煌夜か?」
相変わらず兄さんとは呼んでくれない弟に、つい吹き出した。
「?…何笑ってんの?」
「いや、お前は今日まで兄さんとは呼んでくれなかったなって思ってさ」
「だって、“兄さん”じゃ、ないじゃん」
「……やっぱり知っていたんだな。いつから知っていたんだ?」
「生まれた時から?」
「!?」
え? お前 今、何て言った???
「俺さ。母さんのお腹に居た時からみんなの声が聞こえていて、会話も理解出来ていたんだ。しかも、今でもソレ覚えているんだ。だから、彰が“姉さん”だって知ってた。あっ、でもコレって母さんのお腹に居た時の魔力のおかげで、俺が天才とかそう言う便利な能力を持っているとかそんなんじゃないから」
だって、俺勉強嫌いだもん。と受話器越しにアハハハ!と弟は明るく笑った。
「じゃあ、煌夜、お前……」
「うん♪俺もあるんだ。魔力♪」
俺が母さんの魔力を奪ってしまったのに、弟も魔力を俺の様に保有して生まれてきたらしい。親父との子だからかは判らないが、おかげで小さい頃から魔法を教わっていて彰より色々知ってるよ♪と得意気な声。
「あぁ、そうだ、母さんから伝言。え~と、「真名を思い出して」って」
「マナ?」
「真の名って書いてまなって言って、彰が母さんのお腹に居た時に呼ばれていた名前だって」
ファルリーアパファルの女性は、妊娠をして胎児の動きを体感する様になると、自然と頭にその胎児の名が浮かび生まれて来るまで夫と自分だけで呼び掛けるのだそうだ。それはスニャタラーマ(真名)と呼ばれ、胎児も真名を覚えて生まれて来る。ただ、真名は大切な名前なので生まれた後は両親が新たに別の名前を贈る。
竜人や獣人の様に一目で番と判る力を持つ種族もいるが、その様な力が無い種族は真名の持つ力で唯一の番と巡り合う。真名には不思議な力が含まれていて、唯一の番に出逢うと心に互いの真名が響くのだ。
「だから、彰も俺もちゃんと真名があるんだ。俺は自分のは覚えているけど、彰のは判らない。彰は魔力と身体を封印してしまったから忘れてしまっているそうなんだ。だけど、母さん達に聞いて知ってはいけないって。魔力を戻す為にも身体が戻ったら必ず思い出さないといけないって母さんが言ってた」
俺からの話は以上だから父さんに変わるね、と弟は話すだけ話したら親父と電話を変わった。
「私もリリーからの伝言なんだが、今夜月が中天に来たら召還が始まる。日が暮れたら御祓を済ませて屋上で待機していて欲しいそうだ」
ファルリーアパファルの御祓のやり方や白い服はリリーが前もって貴美恵さんに伝えて用意されているから電話が終ったら聞いてくれ、と親父。
「それから、召還とお前の身体を戻す魔術はリリーとお前に血の繋がりがある親子だから離れた場所からでも問題無いので心配しないで良いそうだ」
最後に、俺の身体を戻す魔術が終ったら親父達も戻って来ると言われ、3日後には再会出来る様だ。
正直、俺自身自分がどんな姿に変わるのか判らないので不安だが、親父達は変わった後の俺と再会するから、かなり驚くのだろうな、と思った。
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