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解け合い6
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「……サラ、着いたよ」
「?」
ルーからの気持ち良すぎるキスに頭の中がボーッとしてしまい私の口の中から絡めていたルーの舌が出ていき、唇が離れ、声をかけられ、抱き上げられていた身体を下に降ろしてもらっても、私はルーに抱き付いたままだった。
「……俺としてはそんな顔をしたサラを見れて幸せだけど、サラはこのままじゃマズイんじゃない?」
「え?………」
そっと耳に囁かれ初めて回りを見渡すと、そこには目を輝かせた母と貴美恵さんと蕾紗さん。にこやかに微笑む雅鷹さん。顎が外れちゃんじゃ?と心配になる程口を開けた弟。……そして、全身からもの凄い怒気を漂わせた父と久志が居た。
「キャーッ!!!」
庭木の鳥が一斉に飛び立つ程の大きな叫び声を上げ、その場で踞ってしまった。
『なっ、何でみんな揃っているの~!?今の見られていたって事よね!?……イッヤーーーーッ!!』
「…サラ、サラ。その姿めちゃくちゃ可愛いけど、座り込んでいたら身体に障るよ?」
プルプルプルプル小さくなって震える私に、一緒に屈んだルーは頭を撫でながらそっと囁いた。
「!? その言い方は誤解を生んじゃう!!」
愛称は私にしか聞こえない程度だったけど、後半は絶対回りに聞こえるトーンの台詞に私はガバッと勢いよく立ち上がり叫ぶと、やはり聞こえていたらしく全員三者三様な表情で私を見つめていた。特に父と久志の表情が今なら世界中のあらゆる邪気を呼び寄せて従えちゃうんじゃないかと思える程恐い!!!
「………佳夜、そちらの人は?」
煌夜が恐る恐る口を開いた。
「あ、の……」
どう紹介したら良いか迷っていると、横に並んで立っていたルーが少し前に出て、右手を胸に当て腰を90度に折り曲げ頭を下げた。
「自分は、グヴァイラヤー・タル・マーツルンドと言います。イルツヴェーグ宮、第二騎士団に所属しています。……彼女の唯一無二の番としてご挨拶に伺わせて頂きました。」
「まぁまぁまぁ!あのイルツヴェーグ宮の騎士なの!?」
1人話の内容が解る母だけがルーの自己紹介に目を更に輝かせ両手で両の頬を挟み、嬉しそうな声を上げた。
「はっ!そうです!では、貴女様が稀代の魔術師リルーリリア様でいらっしゃいますか?」
「やっだ~!元よ元!様付けなんて要らないわ♪今は只のリリー・メルス・笹間よ♪」
1人盛り上がる母に煌夜は母の服を引っ張り、声をかけた。
「か、母さん。母さん以外みんな話が見えてないよ?」
ついでに、父さん達を見て?と促す。(ナイス弟!)
父と久志は未だに邪気を呼び寄せまくっていて周りが一際暗い。今にも魔界の門が開きそうだった。
「あらあら♪そうね!ここではゆっくり話が出来ないわね!貴美ちゃん、良いかしら?」
「もっちろん!私達の大切な佳夜ちゃんの事ですもの♪リビングでゆっくり話を聞きましょう!」
完っ全に、真っ黒な父と久志の存在を無視して盛り上がる息の合う母達。(剛胆!!)
その2人を先頭にルーと私、その後ろに雅鷹さんと弟と蕾紗さん、そしてゆらりと動く(蠢く?)残りの2人(怖すぎて振り向けません!)の順で屋上を下りて1階のリビングへ移動した。
9人全員が銘々余裕で座れる大きなソファセットとリビングの広さも凄いが、私を真ん中に左に久志、右にルーの配置はどうにか避けられなかったのだろうか?
右側の1人掛け用ソファに座る弟に目で訴えるも、物凄い勢いで首を横に振られて断られた。
そして、真向かいに座る父のルーを見る眼が怖い!
父も目力レーザーの持ち主だったのねぇ!
「先ずは~。お帰り、佳夜♪無事に帰って来てくれて良かったわ!それに魔力も戻ったのね!更に、番まで見付けて来ちゃうなんて!もうっ!流石私の娘ね~!!」
全員に紅茶が行き渡った所でかなりテンション高めに話始めた母。そしてその言葉に落ち着きかけていたはずの怒気を再び纏い始めた父と久志。
私の心臓が圧死しそうだった……。
「あの、どうしてみんな屋上にいたの?後、私夜に連れて行かれた気がするんだけど、今って何日で何時なの??」
隣から駄々漏れる怒気をどうにか静めたくて、話を進める事にした。
「私達があそこに居たのは、どうにかファルリーアパファルへ渡る方法を探していた所だったのよ。それに佳夜が居なくなってから半日しか経っていないわ♪」
ファルリーアパファルとこちらの時間軸の流れは同じらしく、夜中(と言ってもたしか22時頃だったはず)に拐われて夜が明けた今は朝の8時過ぎらしい。
およそ10時間の短期異世界滞在。
……本の世界では異世界に渡るのってかなり色々大変だった気がするんだけど、ちょっと隣の県に行っちゃう位の気安さで行けるものなの???
「本来は、こんなに簡単に行き来は出来ないわよ?だって仮にも異世界だし?次元を簡単に越えれちゃったら世の中めちゃくちゃになっちゃうもの。サーヴラーの力と佳夜の魔力が合わさったからこそ意図も簡単に渡れちゃっただけなのよ♪」
私の顔に浮かんだ疑問に気付いた母がにこにこと説明してくれた。
「…そうなの?」
サーヴラーの力って他人の魔力を真似れるだけじゃないんだ。と驚きルーを見つめた。
「うん。この能力はサーヴラーが全員出来る訳では無いんだけど。君の家族がこちらにいる事で先ず細い道が出来て、次に君が俺の番だからお互いの魔力を交ぜやすいんだ。その交わった魔力が太いロープみたいにファルリーアパファルとこちらを繋いでいるんだ。だから魔方陣を簡単に構築しやすいし渡りやすいんだ」
ルーはとても簡単そうに言うけれど、きっとルーって物凄く優秀な魔術使いなんじゃないかしら?
だって同じく話を聞いている母さんが「そんなに簡単に構築出来る魔方陣じゃないんだけどね~」と小さな声で呟きながら苦笑していた。
「……所で」
今までずっと黙っていた魔王 もとい!父! が地を這う様な超低音(低温でも合ってる!)ヴォイスで喋りだした。
「マーツルンド、君、と言ったかな?君は私達の最愛の娘の番だと言ったが、それは本当かい?それから身体に障る、とは一体どういう意味か説明してくれるかな?」
両膝の上に両の肘を乗せ、手を組み顎を乗せ眼だけをこちらに向けるその迫力有りまくりの姿は正に魔王!
お父様!いつから地球人辞めたんですか!?(←娘が彼氏連れて帰って来てからで~す。と弟のテレパシーを受けた気がする)
私の心の中の1人ツッコミはさておき、目力レーザーがキャノン砲並の威力なのを物ともせずルーは真っ直ぐ父と目線を合わせていた。
「はっ」
そう言うと、ルーはソファから降り、床に片膝をつき深く頭を下げた。
「先に、10年前お嬢さんを私と私の仲間で襲い、その後不遇を強いて誠に申し訳ございませんでした。そしてリルーリリア様の故郷までも襲い、お嬢さんを拐ってしまい重ね重ね申し訳ございませんでした」
深く深く頭を下げたままルーは父と母に謝った。
じっとルーを見つめ、何も言わない父に母は小声で「……あの謝り方はファルリーアパファル式の最大の陳謝の礼でこちらで言う土下座みたいなものよ」と助言していた。
「…私達よりその不遇を強いられた佳夜にはもう謝罪したのか?」
「はい」
「佳夜、お前は彼の事をどう思った?許せるのか?」
「うん…。どうしてなのか私にも良く判らないのだけど、私、彼に対して怒りとか許せないとかそう言う気持ちが沸かないの」
「……そうか。リリー、私の中の常識で物事を図りたくないからリリーの思った事を聞かせてくれないか?」
日本とファルリーアパファルとでは色々違うと母と結婚した父は解っているからか母の考えを求めた。
「そうねぇ、若い内に番を見つけたばかりに起きちゃった誤解からの事件よねぇ、これって」
同じ世界だったならこんなにややこしい事態に発展しなかっただろうし、アキュミーラの街が襲われたと言っても長が佳夜の身体と魔玉を守っていた場所は街外れの修行用の山中だったから街事態に被害は一切無かったし、竜人や獣人が起こす番への求愛暴走に比べたらファルリーアパファルの常識内で収まるものよね。と笑って言ったのだった。
「……そ、そうなのか?」
母があまりにも軽~く言うものだから、父は怒気を抜かれ目を見開いた。
私の隣の久志も同様に驚き固まって怒気は霧散していた。
「ふふふ♪グヴァイラヤーさん、どうかもう頭を上げて下さいな。佳夜と出逢ったのが早過ぎたんですもの、致し方がないわ。さあ、どうぞソファに座り直して下さいな」
「…有難うございます」
母に促され、ルーはそっと顔を上げ私の隣に座り直した。
「……そう言えば、佳夜ってば、赤ちゃん出来たの?」
突然の爆弾投下~!!!!
母の天然(?)発言にせっかく収まった父と久志の魔界召還(!?)が再発!
「ちっ、違うから!私達そこまで致してないから!!」
「「そ こ ま で …… ?」」
動揺し過ぎて余計な事を口走ってしまった。
「マーツルンド君?」
「佳夜……?」
真正面の父、左隣の久志から先程とは比べ物にならない程の怒気が溢れ出てきた。
深海にいるんじゃないかと思える程の圧力で息が出来ず声を出せなかった私とは違ってルーは気になっていない様で、初めて久志を見て口を開いた。
「カヤ、彼が君のもう1人の唯一かい?」
そう言えば、私は久志への気持ちを確かめたくて戻って来たんだった。
それに、先程からの久志の態度はまるで私への独占欲からの怒りみたいにも取れる。
ルーからの言葉に久志はハッとし、ルーを一瞬見た後再び私を見つめた。
「……少し2人っきりで話せないか?」
スッと立ち上がった久志は私に手を伸ばした。
「うん……」
「?」
ルーからの気持ち良すぎるキスに頭の中がボーッとしてしまい私の口の中から絡めていたルーの舌が出ていき、唇が離れ、声をかけられ、抱き上げられていた身体を下に降ろしてもらっても、私はルーに抱き付いたままだった。
「……俺としてはそんな顔をしたサラを見れて幸せだけど、サラはこのままじゃマズイんじゃない?」
「え?………」
そっと耳に囁かれ初めて回りを見渡すと、そこには目を輝かせた母と貴美恵さんと蕾紗さん。にこやかに微笑む雅鷹さん。顎が外れちゃんじゃ?と心配になる程口を開けた弟。……そして、全身からもの凄い怒気を漂わせた父と久志が居た。
「キャーッ!!!」
庭木の鳥が一斉に飛び立つ程の大きな叫び声を上げ、その場で踞ってしまった。
『なっ、何でみんな揃っているの~!?今の見られていたって事よね!?……イッヤーーーーッ!!』
「…サラ、サラ。その姿めちゃくちゃ可愛いけど、座り込んでいたら身体に障るよ?」
プルプルプルプル小さくなって震える私に、一緒に屈んだルーは頭を撫でながらそっと囁いた。
「!? その言い方は誤解を生んじゃう!!」
愛称は私にしか聞こえない程度だったけど、後半は絶対回りに聞こえるトーンの台詞に私はガバッと勢いよく立ち上がり叫ぶと、やはり聞こえていたらしく全員三者三様な表情で私を見つめていた。特に父と久志の表情が今なら世界中のあらゆる邪気を呼び寄せて従えちゃうんじゃないかと思える程恐い!!!
「………佳夜、そちらの人は?」
煌夜が恐る恐る口を開いた。
「あ、の……」
どう紹介したら良いか迷っていると、横に並んで立っていたルーが少し前に出て、右手を胸に当て腰を90度に折り曲げ頭を下げた。
「自分は、グヴァイラヤー・タル・マーツルンドと言います。イルツヴェーグ宮、第二騎士団に所属しています。……彼女の唯一無二の番としてご挨拶に伺わせて頂きました。」
「まぁまぁまぁ!あのイルツヴェーグ宮の騎士なの!?」
1人話の内容が解る母だけがルーの自己紹介に目を更に輝かせ両手で両の頬を挟み、嬉しそうな声を上げた。
「はっ!そうです!では、貴女様が稀代の魔術師リルーリリア様でいらっしゃいますか?」
「やっだ~!元よ元!様付けなんて要らないわ♪今は只のリリー・メルス・笹間よ♪」
1人盛り上がる母に煌夜は母の服を引っ張り、声をかけた。
「か、母さん。母さん以外みんな話が見えてないよ?」
ついでに、父さん達を見て?と促す。(ナイス弟!)
父と久志は未だに邪気を呼び寄せまくっていて周りが一際暗い。今にも魔界の門が開きそうだった。
「あらあら♪そうね!ここではゆっくり話が出来ないわね!貴美ちゃん、良いかしら?」
「もっちろん!私達の大切な佳夜ちゃんの事ですもの♪リビングでゆっくり話を聞きましょう!」
完っ全に、真っ黒な父と久志の存在を無視して盛り上がる息の合う母達。(剛胆!!)
その2人を先頭にルーと私、その後ろに雅鷹さんと弟と蕾紗さん、そしてゆらりと動く(蠢く?)残りの2人(怖すぎて振り向けません!)の順で屋上を下りて1階のリビングへ移動した。
9人全員が銘々余裕で座れる大きなソファセットとリビングの広さも凄いが、私を真ん中に左に久志、右にルーの配置はどうにか避けられなかったのだろうか?
右側の1人掛け用ソファに座る弟に目で訴えるも、物凄い勢いで首を横に振られて断られた。
そして、真向かいに座る父のルーを見る眼が怖い!
父も目力レーザーの持ち主だったのねぇ!
「先ずは~。お帰り、佳夜♪無事に帰って来てくれて良かったわ!それに魔力も戻ったのね!更に、番まで見付けて来ちゃうなんて!もうっ!流石私の娘ね~!!」
全員に紅茶が行き渡った所でかなりテンション高めに話始めた母。そしてその言葉に落ち着きかけていたはずの怒気を再び纏い始めた父と久志。
私の心臓が圧死しそうだった……。
「あの、どうしてみんな屋上にいたの?後、私夜に連れて行かれた気がするんだけど、今って何日で何時なの??」
隣から駄々漏れる怒気をどうにか静めたくて、話を進める事にした。
「私達があそこに居たのは、どうにかファルリーアパファルへ渡る方法を探していた所だったのよ。それに佳夜が居なくなってから半日しか経っていないわ♪」
ファルリーアパファルとこちらの時間軸の流れは同じらしく、夜中(と言ってもたしか22時頃だったはず)に拐われて夜が明けた今は朝の8時過ぎらしい。
およそ10時間の短期異世界滞在。
……本の世界では異世界に渡るのってかなり色々大変だった気がするんだけど、ちょっと隣の県に行っちゃう位の気安さで行けるものなの???
「本来は、こんなに簡単に行き来は出来ないわよ?だって仮にも異世界だし?次元を簡単に越えれちゃったら世の中めちゃくちゃになっちゃうもの。サーヴラーの力と佳夜の魔力が合わさったからこそ意図も簡単に渡れちゃっただけなのよ♪」
私の顔に浮かんだ疑問に気付いた母がにこにこと説明してくれた。
「…そうなの?」
サーヴラーの力って他人の魔力を真似れるだけじゃないんだ。と驚きルーを見つめた。
「うん。この能力はサーヴラーが全員出来る訳では無いんだけど。君の家族がこちらにいる事で先ず細い道が出来て、次に君が俺の番だからお互いの魔力を交ぜやすいんだ。その交わった魔力が太いロープみたいにファルリーアパファルとこちらを繋いでいるんだ。だから魔方陣を簡単に構築しやすいし渡りやすいんだ」
ルーはとても簡単そうに言うけれど、きっとルーって物凄く優秀な魔術使いなんじゃないかしら?
だって同じく話を聞いている母さんが「そんなに簡単に構築出来る魔方陣じゃないんだけどね~」と小さな声で呟きながら苦笑していた。
「……所で」
今までずっと黙っていた魔王 もとい!父! が地を這う様な超低音(低温でも合ってる!)ヴォイスで喋りだした。
「マーツルンド、君、と言ったかな?君は私達の最愛の娘の番だと言ったが、それは本当かい?それから身体に障る、とは一体どういう意味か説明してくれるかな?」
両膝の上に両の肘を乗せ、手を組み顎を乗せ眼だけをこちらに向けるその迫力有りまくりの姿は正に魔王!
お父様!いつから地球人辞めたんですか!?(←娘が彼氏連れて帰って来てからで~す。と弟のテレパシーを受けた気がする)
私の心の中の1人ツッコミはさておき、目力レーザーがキャノン砲並の威力なのを物ともせずルーは真っ直ぐ父と目線を合わせていた。
「はっ」
そう言うと、ルーはソファから降り、床に片膝をつき深く頭を下げた。
「先に、10年前お嬢さんを私と私の仲間で襲い、その後不遇を強いて誠に申し訳ございませんでした。そしてリルーリリア様の故郷までも襲い、お嬢さんを拐ってしまい重ね重ね申し訳ございませんでした」
深く深く頭を下げたままルーは父と母に謝った。
じっとルーを見つめ、何も言わない父に母は小声で「……あの謝り方はファルリーアパファル式の最大の陳謝の礼でこちらで言う土下座みたいなものよ」と助言していた。
「…私達よりその不遇を強いられた佳夜にはもう謝罪したのか?」
「はい」
「佳夜、お前は彼の事をどう思った?許せるのか?」
「うん…。どうしてなのか私にも良く判らないのだけど、私、彼に対して怒りとか許せないとかそう言う気持ちが沸かないの」
「……そうか。リリー、私の中の常識で物事を図りたくないからリリーの思った事を聞かせてくれないか?」
日本とファルリーアパファルとでは色々違うと母と結婚した父は解っているからか母の考えを求めた。
「そうねぇ、若い内に番を見つけたばかりに起きちゃった誤解からの事件よねぇ、これって」
同じ世界だったならこんなにややこしい事態に発展しなかっただろうし、アキュミーラの街が襲われたと言っても長が佳夜の身体と魔玉を守っていた場所は街外れの修行用の山中だったから街事態に被害は一切無かったし、竜人や獣人が起こす番への求愛暴走に比べたらファルリーアパファルの常識内で収まるものよね。と笑って言ったのだった。
「……そ、そうなのか?」
母があまりにも軽~く言うものだから、父は怒気を抜かれ目を見開いた。
私の隣の久志も同様に驚き固まって怒気は霧散していた。
「ふふふ♪グヴァイラヤーさん、どうかもう頭を上げて下さいな。佳夜と出逢ったのが早過ぎたんですもの、致し方がないわ。さあ、どうぞソファに座り直して下さいな」
「…有難うございます」
母に促され、ルーはそっと顔を上げ私の隣に座り直した。
「……そう言えば、佳夜ってば、赤ちゃん出来たの?」
突然の爆弾投下~!!!!
母の天然(?)発言にせっかく収まった父と久志の魔界召還(!?)が再発!
「ちっ、違うから!私達そこまで致してないから!!」
「「そ こ ま で …… ?」」
動揺し過ぎて余計な事を口走ってしまった。
「マーツルンド君?」
「佳夜……?」
真正面の父、左隣の久志から先程とは比べ物にならない程の怒気が溢れ出てきた。
深海にいるんじゃないかと思える程の圧力で息が出来ず声を出せなかった私とは違ってルーは気になっていない様で、初めて久志を見て口を開いた。
「カヤ、彼が君のもう1人の唯一かい?」
そう言えば、私は久志への気持ちを確かめたくて戻って来たんだった。
それに、先程からの久志の態度はまるで私への独占欲からの怒りみたいにも取れる。
ルーからの言葉に久志はハッとし、ルーを一瞬見た後再び私を見つめた。
「……少し2人っきりで話せないか?」
スッと立ち上がった久志は私に手を伸ばした。
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