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アンソニー編
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「チェルシー・ターミルドという名に覚えはないか?」
ナーチェの手紙を読んでアンソニーはトーニャに訊ねたが、彼女は首を振って「存じません」と答えた。
2通の手紙に困惑するアンソニーは再び先程の手紙を読み返そうと執務室へ向かう、その途中で家令から来客を告げられた。
「なっ!騎士団長がどうして?」
伝えに来た家令も分からないと答えるのみで、取り敢えず案内したという応接室へとアンソニーは行き先を変えた。
部屋に入ると王家直轄の王宮騎士団長ユースティオが優雅に出されたお茶を飲んでいる所だった。
彼とは面識はあるが親しい仲ではない為、アンソニーは困惑する。あの手紙を読んでから今日はずっと困惑しっぱなしだった。
「王宮騎士団長が先触れもなく来られるとは。本日はどの様なご用件でしょうか?」
「⋯⋯⋯⋯⋯聞いていないのだな。やはり無関係という事か?」
アンソニーには理解できない内容の言葉を呟く騎士団長の声が耳に響く。
「何があったの「君の奥方は捕縛されている」でしょうか?」
アンソニーの言葉にユースティオは被せて信じられない言葉を放った。
「ど、どうして!どうして!我が妻が何をしたというのです!ナーチェはそんな犯罪など犯す人物ではありません!」
アンソニーの言葉にユースティオは首を振りながら残酷な事実を告げた。
「君の奥方は、いや君が奥方だと信じているナーチェ・ルーディストはナーチェという名ではない事が判明した、これは立派な犯罪だ」
「まっ、まさか!そんな筈はありません。初めて会ってからずっと彼女は私の婚約者でそして一緒に学園にも通っていましたし、なんなら学友に確かめてもらっても」
立て続けにアンソニーは妻の潔白を証明しようとユースティオに怒鳴るように言い募るが、全てにユースティオは首を振る。
「そもそもが間違っている。おそらく君との初顔合わせの時には成りすましていたのだから」
「えっ?」
「ナーチェいやチェルシー・ターミルドの供述は間違いないようだな。君はこの件には無関係だったと言う事か。お気の毒にとしか私からは言えないな」
「どういうことですか?」
「無関係と分かったら陛下の所へ連れて来いと命じられている。陛下から話があるのだろう、謁見の準備をしたまえ、私はここで待つから」
困惑から混乱しているアンソニーにユースティオは慮ることなく告げた。
ノロノロとソファから立ち上がりアンソニーは自室へと向かった。
ユースティオと同じ馬車に乗せられたアンソニーは馬車の中でもずっと妻の事を考えていた。
(ナーチェがナーチェじゃない、チェルシー・ターミルド?あの手紙の名ではないか!どうなってるんだ?初顔合わせの時から成りすましていた?だがカールトンは公爵家だ。そんな事できるはずないだろう。公爵が流石に娘が違えば気付くはずだ)
悶々としたアンソニーを尻目にユースティオの方は、この厄介な案件が隣国を巻き込んでいる事に頭を痛めていた。
(厄介な事この上ない)
ユースティオの憂鬱な心持ちはこの後も続くのだった。
ナーチェの手紙を読んでアンソニーはトーニャに訊ねたが、彼女は首を振って「存じません」と答えた。
2通の手紙に困惑するアンソニーは再び先程の手紙を読み返そうと執務室へ向かう、その途中で家令から来客を告げられた。
「なっ!騎士団長がどうして?」
伝えに来た家令も分からないと答えるのみで、取り敢えず案内したという応接室へとアンソニーは行き先を変えた。
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アンソニーには理解できない内容の言葉を呟く騎士団長の声が耳に響く。
「何があったの「君の奥方は捕縛されている」でしょうか?」
アンソニーの言葉にユースティオは被せて信じられない言葉を放った。
「ど、どうして!どうして!我が妻が何をしたというのです!ナーチェはそんな犯罪など犯す人物ではありません!」
アンソニーの言葉にユースティオは首を振りながら残酷な事実を告げた。
「君の奥方は、いや君が奥方だと信じているナーチェ・ルーディストはナーチェという名ではない事が判明した、これは立派な犯罪だ」
「まっ、まさか!そんな筈はありません。初めて会ってからずっと彼女は私の婚約者でそして一緒に学園にも通っていましたし、なんなら学友に確かめてもらっても」
立て続けにアンソニーは妻の潔白を証明しようとユースティオに怒鳴るように言い募るが、全てにユースティオは首を振る。
「そもそもが間違っている。おそらく君との初顔合わせの時には成りすましていたのだから」
「えっ?」
「ナーチェいやチェルシー・ターミルドの供述は間違いないようだな。君はこの件には無関係だったと言う事か。お気の毒にとしか私からは言えないな」
「どういうことですか?」
「無関係と分かったら陛下の所へ連れて来いと命じられている。陛下から話があるのだろう、謁見の準備をしたまえ、私はここで待つから」
困惑から混乱しているアンソニーにユースティオは慮ることなく告げた。
ノロノロとソファから立ち上がりアンソニーは自室へと向かった。
ユースティオと同じ馬車に乗せられたアンソニーは馬車の中でもずっと妻の事を考えていた。
(ナーチェがナーチェじゃない、チェルシー・ターミルド?あの手紙の名ではないか!どうなってるんだ?初顔合わせの時から成りすましていた?だがカールトンは公爵家だ。そんな事できるはずないだろう。公爵が流石に娘が違えば気付くはずだ)
悶々としたアンソニーを尻目にユースティオの方は、この厄介な案件が隣国を巻き込んでいる事に頭を痛めていた。
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ユースティオの憂鬱な心持ちはこの後も続くのだった。
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