知らされた真実〜それぞれの選択〜

maruko

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ナーチェ編

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「アンソニー・ルーディストが夜会に参加し始めたようだよ」

ユースティオ・ソルバンジーは対面に座るナーチェ・カールトンに言い聞かせるように話し始めた。
王宮御用達の家具職人がその人生の集大成と称した豪奢な革張りのソファに、背筋をピンと伸ばして座り、これまた古の巨匠がその心血を注いだ茶器に淹れられた紅茶に、優雅に口を付ける彼女は少しの上目遣いで彼を見た。

「君のメッセージは伝わらなかったようだね」

心の底でホッとしながらも皮肉めいて話すユースティオにナーチェは溜息を吐いてカップをソーサーに戻した。

「礼儀として書いただけよ。伝わらなくても構わなかったもの」

『アンソニー・ルーディスト様

初めましてナーチェ・カールトンです。

お元気でお過ごしですか?

10年前のお約束を果たしに参りました。

侯爵様も諸々ご準備をよろしくお願いします。

    チェルシー・ターミルド 』

ナーチェがアンソニーに宛てて書いた手紙の事を何時までも当て擦るユースティオに、ナーチェはその悋気を最近持て余している。
それもこれもアンソニーが再婚相手を探していると貴族達の間で噂が立ち始めているからだ。

「ティオ、いい加減にして!私は一応礼儀かなと思って書いただけ、彼はチェルシーに騙されて婚姻を結んだ、しかも子まで成してしまってる。それは彼のせいではないわ。しかもその婚姻が無効になってしまったのよ。父が婚約を持ちかけたから彼の人生は狂ったのよ。その子供の人生もね。その責任を取れるなら取ろうと思ったから書いたの。だけど強要するつもりはないわ、だから気が付かなくても構わなかったのよ。それを貴方が裏切りと言うならそう思ってもらっても構わない!」

「俺はただ!君が彼に振り回される必要は無いと言ってるんだ。それに俺の気持ちは?俺の気持ちは考えてはくれないのか?」

カールトン公爵家乗っ取りの事件はまだ公になってはいない。それはナーチェが渋っているからだ。
アンソニーとランディの行く末が決まってからで言いとナーチェは考えていた。

彼等はチェルシー達の所業が公になれば生活は一変するのが目に見えている。その混乱の中ではきっと穏やかに過ごす事が出来なくなるかもしれない。
それならば、行く末が決まってから彼等を領地にでも避難させてから公表しても構わないのではないかとナーチェは思っていた。

もし再婚相手が見つからなければ⋯⋯。

そう思った時、ナーチェは目の前にいるユースティオを見つめて膝に置かれた手にギュッと力を込めた。

何年経ってもナーチェの心が求めるのはユースティオである。だがアンソニーを巻き込んでしまった父の責任はナーチェも取らなければならないのではないか?

ナーチェの心は罪悪感に支配されていた。
アンソニーにも、ユースティオにも。

10年前の約束とはアンソニーとの婚約のことであった。

だがアンソニーには伝わってはいなかった。


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