知らされた真実〜それぞれの選択〜

maruko

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ナーチェ編

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ナーチェが物心ついた時には、ナーチェの母はいなかった。いつも側にいたのは父のセルディストで、ナーチェは教育も父から施された。

ナーチェの世界はカールトン公爵家のカントリーハウスの敷地内だけが全てだった。

屋敷にいるのは数名の使用人と父と祖母。
その祖母は体が弱く、いつも何処か遠くを見ているような目をしていた。

そして何故かナーチェの名を呼んでくれなかった。
ナーチェを呼ぶ時は必ず『サーフ』と優しく呼びかけていた。

そんな祖母がある日居なくなった。
屋敷中を探しても居なくて滔々皆で外を探しに行くことになり、人少ななカントリーハウスでナーチェは侍女と二人取り残された。

庭のガゼボから先には行ってはいけないと常から言われていたけれど、その日は祖母が心配のあまりナーチェは侍女の目を盗んでその先へと進んだ。

するとその先にあったのは湖だった。
そこに膝を抱えて蹲っている子を見かけた。その子は湖に向け何かを投げていた。
よく見るとそれはその子が座っている周りにあった石のようだ。

「なにしてるの?」

ナーチェの呼び掛けにその子の肩がビクッと跳ねた、そして此方に振り向いたのはとても綺麗な顔をした男の子だった。
肩に合わせて切りそろえられている金色の髪は風に揺れていた。少し大きめの瞳は緑色でその目には涙が光っている。

「ないてるの?」

「来るな!」

ナーチェが近づこうとすると大きな声で止められた、大きな声は少し怖いと思ったけれどナーチェは何故か側に居てあげなければと思い、勇気を出して隣に座った。

男の子はナーチェが横に座ると怒鳴りはしなかったけれど、俯いてしまったからナーチェは首を傾げて顔を覗きこんだ。
男の子の涙はまだ止まっていなくて、ナーチェはスカートのポケットからハンカチを取り出して渡した。
驚く男の子はハンカチとナーチェを暫く交互に見ていたが、ハンカチを受け取って涙を拭った。

それを見てナーチェは安心して立ち上がり「またね」と言って屋敷に戻ったのだった。
それがユースティオとの出会いで、その時ナーチェは8歳だった。

その日祖母は公爵家に隣接していた森の中で発見され帰らぬ人となった。
葬儀が行われ今まで会ったことのない人達が数人カントリーハウスを訪れた、その中には王都のタウンハウスを管理していた執事のトールもいた。

バタバタと落ち着かない日々が1週間ほど過ぎた頃、父が王都へと出かけて留守にした日、ナーチェは再び湖に向かった。
どうしてもあの男の子に会いたいと思ったからだ。

その男の子はあの日と同じ様に湖の方に向けて膝を抱えて座っていた。

「またあえたね」

ナーチェが声をかけると男の子は振り返って立ち上がった。
思ったよりも背が高くてナーチェは吃驚してしまった。





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