知らされた真実〜それぞれの選択〜

maruko

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ナーチェ編

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「これありがとう」

男の子が小さな包み紙に包まれた物をナーチェに差し出した。

「これなぁに?」

「開けて」

言われるがまま開けると、それはナーチェのハンカチと可愛いウサギの刺繍が刺してあるハンカチ、2枚のハンカチが入っていた。

「ハンカチ洗ったんだけどシワの伸ばし方が分からなくて、可愛いの見つけたからやる!」

そう言われてよく見るとナーチェのハンカチは少し縒れていた。ナーチェにもハンカチのシワの伸ばし方なんて分からないけれど、男の子が自分でナーチェのハンカチを洗ってくれたことに驚いた。

「あらってくれたの?ありがとう。これもとってもかわいい」

ナーチェがそう言って笑うと男の子は顔を真っ赤にして頷いた。

「僕はユースティオ、隣の領地から来たんだ」

「となりのりょうち?」

ナーチェはユースティオの指差す方を見ながら不思議に思った。ナーチェの世界は公爵家しかなかったから、隣と言われてもピンと来るものがなかったからだ。それでも「ハッ!」と気づき自分も、とナーチェは名乗る。

「わたしはナーチェ。おうちいがいのひとにあったのははじめて」

瞳をキラキラと輝かせてナーチェが言うと、ユースティオは驚きながらも益々顔を赤らめた。

それから二人はその場に座り込み沢山話をした。普段家以外の人と接しないナーチェは、ユースティオの話がどれもこれも新鮮で楽しかった。

ユースティオは王都に住んでいて滅多にこちらへは来れないらしい。来た時もここに来るのではなく領地のもっと先にあるカントリーハウスに行くことになっていて、此方には内緒で隠れていつも来ているのだと不思議なことを言ってナーチェを驚かせた。
でもよく考えればナーチェもこの湖には内緒で来ているから、そういう感覚でユースティオの話を聞いていた。

少し時間が経った頃、ナーチェを呼ぶ侍女の声が微かに聞こえた。

「あっ!よばれてる。ないしょできたの、かえらなきゃ」

ナーチェが立ち上がるとユースティオも立ち上がった。そしてナーチェの手を両手で包むように握りながら懇願するように言った。

「暫くは会えないかもしれないけど、また会えた時はティオって呼んで!」

「ティオ?」

「そう」

「どうしてティオは、ないてたの?どうしてすぐはあえないの?」

「弟が死んだんだ。だからこっちにはもう来るつもり無かった。でもナーチェに会いにまた来年来るよ。ナーチェ1年後って分かる?」

「いちねんご」

「そう約束だ、1年後にまた会おうな!」

ユースティオはそう言ってナーチェに手を振って走って行ってしまった。
その背中を見てナーチェはドキンと胸が音を立てて跳ねた。それと同時に直ぐに会えない事が悲しくて涙が溢れた。

どうしてかはその時は分からなかった。

その胸の音がナーチェの初恋を告げる音だと気づいたのは数年後の事だった。





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