知らされた真実〜それぞれの選択〜

maruko

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ユースティオ編

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ユースティオは馬から降りて男をもう一度じっくりと見つめた。

「ラオス、どうして?」

「兄様お久しぶりです」

少し疲れの見える顔でラオスは真っ直ぐにユースティオを見つめている。
幼い頃はユースティオよりも体が小さく肩よりも下だった身長は、今はユースティオと同じくらいに成長していた。
無造作に切った髪が見窄らしく映る。

「お前、生きてたのか?」

頷くラオスにユースティオは驚愕したが動揺を悟られぬように手で口を隠した。
あの時、確かに孤児院の院長は死んだと言って、墓まで教えてくれたのに、ユースティオの義弟は今ここで、目の前で息をしている。
感極まって抱きしめようとした時、馬上から声がかかった。

「ユース何してるんだ!時間がないんだぞ」

ルディックの側近仲間のファビィックがイライラした目でユースティオを睨んでいた。
そうだ!今は職務中だ、思い出したユースティオはラオスに聞く。

「今はゆっくり話せない、ラオスは宿に泊まっているのか?」

「ここに」

前もって書いていたであろうメモをラオスはユースティオに渡す。それを受け取り大事そうに胸の内ポケットに仕舞い「後で行く」と言い残してその場は別れた。

王城に帰ってからもユースティオはソワソワと落ち着かない。突然現れたラオスに戸惑いと嬉しさが合わさって何とも言えない心地だった。

「どうしたユース落ち着けよ!」

ファビィックが堪らず声をかけた。1分おきに時計を見るユースティオに周りが気が散ってしょうがなかったからだ。
今は王城の財務部へ今回の視察の精算をしている所だった。1ピル(1円)たりとも間違えられないのに、ユースティオは心ここにあらずという感じで集中できていない。それが周りにも伝染していっていた。

「悪い、ちょっと珈琲を飲ませてくれ」

落ち着くためにユースティオは文官に目配せして珈琲を淹れてもらった。
その芳醇な香りとコクのある味わいで幾分落ち着いたユースティオはもう一息とばかりに深呼吸まで繰り出した。

「冷静沈着なユース君、その姿は本当に珍しいね。いや初めてか?」

ファビィックに揶揄われてもユースティオは気にならない、早くラオスの待っている宿に向かいたくて1秒たりとも残業などしたくなかった。
さっきまで呆けて落ち着かなかったユースティオは何時ものユースティオへとやっと復活した。


帰りにファビィックに食事に誘われたが丁重に断り、急いでメモの宿へと馬車を走らせた。
ユースティオが聞いたことのない宿だったのでそのメモをそのまま御者に渡し「此処へ行ってくれ!」と言うと御者は怪訝な顔をして「承知しました」と言ったが、馬車に乗り込んだユースティオは彼の顔が気になった。

(そんなに酷い宿なのか?)

ユースティオの心配は大当たりで「着きました」と御者に言われて降り立ったユースティオは、貧民街と市街の境目に位置するその古ぼけた宿に目を丸くした。

宿に入るといきなり食堂になっていて酔っ払いの怒声が飛び交っていた。
その様子に目を細めてユースティオは一旦外に出る。今日のユースティオの服装はいかにもな貴族の装いだった。
この格好でこの宿のなかに入るのは危険行為だ、あまり治安の良くない地域だった為、ユースティオは御者を呼んだ。

「ここに泊まってる男を呼び出したいんだが、名前が⋯⋯ドウンだ。その時に宿も精算してきてくれ」

ユースティオが御者にメモと金貨を渡すと彼が吃驚した顔で手を振った。

「旦那様、これじゃ釣りも出ないし足元見られてぼったくられます。銀貨と銅貨を5枚ずつ下さい」

御者に言われたユースティオはポケットを探って銀貨3枚と銅貨5枚を渡した。

「銀貨や銅貨なんてあまり使わないから、あってよかった」

ホッとしながら言うと御者は笑いながら宿に入っていった。
暫く馬車の中で待つ間、ユースティオはどうしてラオスはこの国に来たのだろうと考えていた。
生きていた事も驚いたし、身形からあまりいい生活をしていないようにも見受けられた。
泊まっている宿もこんな所だったから、ひょっとしたらラオスは金に困ってるのではないかとユースティオは考えた。
困っているなら手助けをしてやりたい、今自分の個人資産は幾らだったか?そんな事を考えていたら、扉がノックされて御者の声がした。

「お連れしました」

馬車の内鍵を開けるとラオスがニッコリと笑って立っていた。

「兄様!」

「ラオス今日からうちに泊まるんだ、荷物は持ってきたか?」

ユースティオの言葉にラオスは困惑してるようだった。

「いいの?」

「当たり前だ、早く乗れ!それにしても生きていたんだな。良かった」

ユースティオの言葉にまたラオスはニッコリと笑った。でもその顔が直ぐに曇った。

「兄様に相談があったんだ」

「家に帰ってから聞こう」

「うん」

それから兄弟は無言で家路へと急いだ。



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