知らされた真実〜それぞれの選択〜

maruko

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ユースティオ編

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「ラオス子供がいるのか?」

「はい男の子と女の子です。年子で生まれました。とても可愛いですよ、僕はマジェルノが侯爵家に入ってから、漸く父様と会えたのでこの2年は父様の指示で動いていたので偶にしか会えてませんけど」

「そうか、その⋯おめでとう」

「ありがとう、兄様、子供の事はまた今度自慢させて。実はね父様と会えて漸く少しだけ進展したんです。マジェルノの探りも大きかったかもしれませんが」

ラオスは父に会えたのは彼の療養先でだった。嫡男に家督を譲った父は、体調を崩し領地のカントリーハウスとはまた別の別邸に住んでいた。

「父様が言ってたんだ、カールトン公爵が可怪しいって、ただ二人は元々夫人のこともあって踏み込める距離じゃなかったから確かめる術がなかったって」

「どういうことだ?」

「ぼくの事を定期的にカールトン公爵は教えてくれてたそうだよ。カールトン公爵が一年に一度だけは王都の夜会に参加していたらしくてその時にすれ違いざまにメモをわたしてくれてたんだって、そこに僕の様子を書いて教えてくれてたって。それがナーチェ様が王都に拠点を移してからは公爵は年に一度の夜会も欠席してたそうだよ。偶に夜会ではなく昼に王都で見ることもあったそうだけど、父にもうメモ書きを渡すことはなかったって。それで何か可怪しいとは思って一度カールトン公爵に手紙を送ったけれど返事はなかったらしいんだ」

「そうか」

「それからね、マジェルノがルーディスト侯爵家で確かめたけど、やっぱり今そこにいるナーチェ・カールトンいや結婚したからルーディストかな。その女はナーチェ様じゃないって」

「なんだと!じゃあナーチェはどこに行ったんだ!」

「ねぇ兄様、落ち着いて。父様はナーチェ様の顔を知らないんだ、だから父様が訴えることは出来なかったんだよ。だからずっと兄様に帰ってきてほしくて手紙を送ってたのに、一度も返事が来ないから父様に言われて住所を頼りに僕が来たんだ」

「あっ!」

ユースティオは5年前から父に安否確認の手紙を送るのをやめていた。その後1年くらいは父の手紙も読んではいたが、中身はいつも結婚の催促だったため、ここ3年ほどは手紙が来ても全てそのまま捨てていたのだ。
ユースティオは頭を抱えた。

「ごめん、ラオス」

「ねぇ兄様、ナーチェ様を探してください。お願いします」

ラオスは立ち上がり深々と頭を下げて懇願した。
ユースティオは体の震えが止まらなくなった。ラオスの話を聞いてナーチェが行方不明だという現実が急にユースティオを襲う。
ナーチェから振られて自棄になってこの国に逃げてきた。それ以降も忘れられなかったナーチェはユースティオの知らない間にその存在がなくなってしまっていただなんて、彼は自身の行いを後悔した。
留学なんかしなければこんな事にはならなかったんじゃないか?ナーチェも居なくならなくてラオスはこんな苦労しなくても良かったんじゃないか?
後悔の自問自答が頭の中で爆発しそうだった。

「兄様、兄様!取り敢えず父様の指示を伝えるよ!しっかりしてよ!僕らにはもう兄様しか頼れないんだ!お願いだから!」

頭を抱えたままのユースティオにラオスは叱咤しながら体を揺すぶった。

「父上の指示?」

「うん、父様が言うにはね。やっぱり今僕等が訴えても何の証拠もないから意味がないんだって。ナーチェ様を見た事があるのはマジェルノと僕と兄様だけ。ジェインは小さすぎてあまり覚えてないし。兄様が貴族だから少しは違うかもしれないけどそれでもナーチェ様が別人だって証拠がないんだ」

「あ、あぁ」

ラオスに揺さぶられながら漸く頭を抱えるのを止めたユースティオは呆然としたまま返事を返した。

「マジェルノはカールトン公爵も偽物じゃないかって疑ってるけど、僕には同じ人にしか見えなかった。父様もなんとなく可怪しいとは思っても、それだってちゃんとした証拠がないんだ。兄様は公爵とも会ってるんだよね」

「あぁ」

「だから僕と帰って調べて欲しい、兄様は貴族だし伝もあるでしょう。父様はベッドからあまり起きれないんだ、今動けるのは兄様だけなんだ!」

ラオスの必死の訴えにユースティオは頷いた。

「あぁ明日、休みをもらってくる。話によってはこちらの爵位を返上してくるよ」

「ありがとう兄様」

ユースティオは朝一番にルディックへの面会が叶うように急ぎ早馬で王家に届ける手配をした。


◇◇◇◇


「どうしたのユース、こんな朝早くから面会だなんて。昨夜は吃驚したよ」

夜中にユースティオからの早馬で起こされたルディックは、少し眠そうに執務室のソファに体を深く沈ませていた。

「申し訳ない、急いでお願いしたいことがあるんだ。俺、いや私に長期の休暇をください。そして行く行くは爵位の返上もお願いするかもしれない」

ユースティオの言葉に、眠気も吹っ飛んだルディックは深く沈ませていたソファから身を乗り出してユースティオに迫った。

「何言ってるんだ、ユース。何かあったのか?」

ユースティオはラオスから聞いた話を簡潔に纏めてルディックに話した。

「そうか、ユースの拗らせた彼女が行方不明ってことか」

「あぁそれを俺は今まで知らずにこの国で生きてきた」

「自分を責めるな、それにしても初めて彼女の家名を聞いたがカールトンだろう。聞いたことがあるんだが」

「⋯⋯えっ?ルディックは、あっ殿下はカールトン公爵を知っていらっしゃるのですか?」

「おい、ユースもう今更だ!お前には二人の時は気安く話すように言っただろう。頼みごとするから急に変えたのか?」

ユースティオは自身の頼みを聞いてもらうのに今更ながら不敬だと気づいて言葉を改めたがルディックに鼻で嘲笑われてしまった。

「まぁ良い。その者はおそらく知らないが家名を聞いた気がするんだ」

ユースティオはルディックがカールトン公爵を知ってるなら何か手掛りになるような話が聞けないかと喜んだが、顔を知らないなら意味がないと落胆した。

「直ぐに立つのか?」

「できるだけ早く戻りたいんだ、こうしてる間にも命の危険に晒されているかもしれない」

「⋯⋯⋯そうか。分かった」

ルディックはもうナーチェは亡くなっているのではないか?と口にしそうになったが、ユースティオの前で言うのは憚られて、帰国の了承を出すのみに留めた。

王太子の執務室を出てユースティオは隣の部屋へと移動した。ユースティオの働く側近達の執務室がそこにある。急ぎの引き継ぎが必要なものだけ書類をまとめ、自分の机に置いていたとき扉が開いてファビィックが入ってきた。

「ユース、俺知ってるぞ!カールトン公爵家!」

「何だと!」

ファビィックの言葉にユースティオは椅子から立ち上がり彼を見つめた。





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