最後の人生は⋯。

maruko

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22 不服

 いくら箝口令を強いたところで、学園内の出来事、ましてや授業中に起きた事はどれだけ隠しても、皆の知られるところとなった。
 その件で酷い噂が出回り始めて、その出処を探っていたリヒトール達に、実行犯の後ろにいた黒幕が直ぐに明らかになった。

 イシュエルは、その黒幕の名を聞き、やはりと怒りが湧いた。

 イシュエルの宮に集まったのは国王夫妻とリヒトールだ。
 兄のカリムトロと隣国の王太子であるラムヒルドには遠慮してもらった。

「ソフィアは何がしたかったの?」

 王妃はわけがわからないと言うように首を横に振って手を額に当てながら言った。

「自分を差し置いてラムヒルド様と食事をする事が許せなかったそうです」

「「「は?」」」

 リヒトールはマリエンナの事なので、ソフィアの聞き取りに参加していた。
 参加といっても事情を聞く学園長の横に座っていただけで口は出してはいなかった。だがしっかりと話の内容は頭に入れていた。
 あまりにもその短絡的な動機にイシュエルは驚いた。
 その為に、少なくとも人が二人亡くなっている。

「そんな浅はかな事でか?」

「あぁ、しかも何も悪びれずに言ってましたよ」

 そんな女を王太子妃にするつもりか、と案に父親に示唆しながら、リヒトールは怒りを顕に言い放った。

「捕縛はできないのね」

「えぇ無理ですね。証拠がないんです。あくまでも自分のポロッとこぼしだ愚痴で勝手に彼等が動いたのだと、そういう方向で話していましたよ」

 黒幕はカリムトロの婚約者であるソフィアだった。だが彼女は、彼らに命じていないと言い張った。
 今の時点では彼女を裁くことはできない。証拠がないからだ。
 だが、罪は存在している。
今国王が出来るのは愚痴だとしてもそんな浅慮な事を、ポロッと口にする迂闊さで王子妃の資質を問い、準王族の身分を剥奪することを提案することしかできない。

「破棄一択だな」

「お兄様が納得しますか?」

 イシュエルの疑問は、皆の心の中での危惧だった。

 学園でのソフィアの振る舞いや、イシュエルに対しての無礼な態度など、今までにも散々カリムトロには王妃が苦言を呈していた。
 婚約者なら諫めろと言っていたし、婚約の解消や白紙の話までしていたのに、当のカリムトロがのらりくらりと躱して話にならなかったのだ。
 あからさまにソフィアを溺愛しているようには見えないが、気に入ってるのは間違いない。
イシュエルは彼等が“番”だと知ってるが、国王たちはそんな事は知らない。だから“気に入ってる”という表現で落ち着くのだ。

 今回の件よりも前にソフィアの資質は問題にもなっていたが、婚約に関して乗り気なのは間違いなくカリムトロの方だった。

 だからソフィアがあんなにも女王然として学園で過ごせるのだ。
 彼女を調子に乗らせたのは間違いなくカリムトロだった。

「承知しなければ、こちらにも考えがある」

 国王は鼻の下に蓄えた髭を指で弄りながらだが、今回ははっきりとカリムトロの進退について示唆した。

 (こんな罰でマリエンナの気持ちは晴れるかしら?)

 イシュエルは、未だ手の痛みに眠れぬ夜を過ごす友を思って心を痛めた。




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