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28 既視感
確かにその場所にあったはずの秘密基地は、古く朽ちた家になっていた。
兄と作った時は、父の部下になる公爵家で働く庭師が手伝ってくれて、丸太の小屋だったはずなのに、どう見てもそれは丸太では出来ていなかった。
「誰かが立て直したのね」
既に自分がルーチェだった時の名残は、そこには微塵も残っていなくて、物哀しくなった。
どうして自分は傷みを伴う最期のこの場所を見たかったのだろうと、改めて考えてみたが、自分でもよくわからなかった。
少し崩れかかった小屋を眺めていたら、不意に近くで鳥の声が聞こえた気がした。
─ピピ─
微かに聞こえた声の方に向かうと、どうやらこの小屋の中から聞こえてくるようだった。イシュエルは、今にも崩れそうな屋根や壁に気を付けながら中に入った。
中には驚く事に人が住んでいた残骸があった。
煤けたキッチン、片足が折れて斜めに倒れたテーブル、椅子は一つもなかった。
壁に何かが貼られていたのか、それとも布か?黒い物体がダランと垂れ下がっていた。
─ピピ─
歩くたびに、木のように見えるのに、土の上のような床はデコボコとした感覚が足に伝わる。
耳を澄まして集中すると、隅の方に引き出しが全て崩れたドレッサーがある。
キラリと光ったのは鏡の破片だろうか?
崩れた引き出しの板が、底に溜まっていてその上に黄色い小さな小鳥が二羽いた。
イシュエルが触ろうと手を差し伸べると、一羽が飛んで来てイシュエルの指を突いた。
「いっ!」
血が出たりはしなかったが、指の先端で少し痛みが強い。指を押さえながらよく見ると、飛んでいるのは一羽で、ただあまり遠くに飛ぼうとはせず、直ぐにもう一羽の側に寄り添う。
ひょっとして怪我をしている?
イシュエルはもう一度チャレンジしようと手を伸ばす。
が、また突かれそうになったので、手を引っ込めた。
「はぁ、手当したくても掴めないわ」
溜息を吐きながら二羽の鳥を見つめた時、既視感に陥った。
(同じ事が昔なかったかしら?)
今世ではこんなところまで来た覚えはない。
ならば前世かと考えてみたが、思い出せない。
建物を見ても秘密基地とは程遠いから、前世の懐かしさも感じなかった。
ただ森は前世と同じ匂いだと思った。
しばらく鳥を眺めて過ごす。
こうしていても、何にもならないと気付くのが少しだけ遅かった。
「イシュエル様、そろそろ帰らねは暗くなります」
一人でこっそり来てしまったイシュエルだったが、護衛はひっそりと付いてきていて促された。帰らなければならなくなったイシュエルだったが、小鳥をそのままに出来なかった。
「ごめんなさい、この鳥たちを城に連れて帰るわ」
一羽は直ぐに捕まえられたが、もう一羽が飛び回り突くから、二人いた護衛は朽ちた建物の中を、踏みしめる床が緩いことに難儀しながら、必死に小鳥と格闘していた。
怪我をしている小鳥を掌に乗せて、じっと見つめたイシュエルは、やはり既視感を感じるのだった。
兄と作った時は、父の部下になる公爵家で働く庭師が手伝ってくれて、丸太の小屋だったはずなのに、どう見てもそれは丸太では出来ていなかった。
「誰かが立て直したのね」
既に自分がルーチェだった時の名残は、そこには微塵も残っていなくて、物哀しくなった。
どうして自分は傷みを伴う最期のこの場所を見たかったのだろうと、改めて考えてみたが、自分でもよくわからなかった。
少し崩れかかった小屋を眺めていたら、不意に近くで鳥の声が聞こえた気がした。
─ピピ─
微かに聞こえた声の方に向かうと、どうやらこの小屋の中から聞こえてくるようだった。イシュエルは、今にも崩れそうな屋根や壁に気を付けながら中に入った。
中には驚く事に人が住んでいた残骸があった。
煤けたキッチン、片足が折れて斜めに倒れたテーブル、椅子は一つもなかった。
壁に何かが貼られていたのか、それとも布か?黒い物体がダランと垂れ下がっていた。
─ピピ─
歩くたびに、木のように見えるのに、土の上のような床はデコボコとした感覚が足に伝わる。
耳を澄まして集中すると、隅の方に引き出しが全て崩れたドレッサーがある。
キラリと光ったのは鏡の破片だろうか?
崩れた引き出しの板が、底に溜まっていてその上に黄色い小さな小鳥が二羽いた。
イシュエルが触ろうと手を差し伸べると、一羽が飛んで来てイシュエルの指を突いた。
「いっ!」
血が出たりはしなかったが、指の先端で少し痛みが強い。指を押さえながらよく見ると、飛んでいるのは一羽で、ただあまり遠くに飛ぼうとはせず、直ぐにもう一羽の側に寄り添う。
ひょっとして怪我をしている?
イシュエルはもう一度チャレンジしようと手を伸ばす。
が、また突かれそうになったので、手を引っ込めた。
「はぁ、手当したくても掴めないわ」
溜息を吐きながら二羽の鳥を見つめた時、既視感に陥った。
(同じ事が昔なかったかしら?)
今世ではこんなところまで来た覚えはない。
ならば前世かと考えてみたが、思い出せない。
建物を見ても秘密基地とは程遠いから、前世の懐かしさも感じなかった。
ただ森は前世と同じ匂いだと思った。
しばらく鳥を眺めて過ごす。
こうしていても、何にもならないと気付くのが少しだけ遅かった。
「イシュエル様、そろそろ帰らねは暗くなります」
一人でこっそり来てしまったイシュエルだったが、護衛はひっそりと付いてきていて促された。帰らなければならなくなったイシュエルだったが、小鳥をそのままに出来なかった。
「ごめんなさい、この鳥たちを城に連れて帰るわ」
一羽は直ぐに捕まえられたが、もう一羽が飛び回り突くから、二人いた護衛は朽ちた建物の中を、踏みしめる床が緩いことに難儀しながら、必死に小鳥と格闘していた。
怪我をしている小鳥を掌に乗せて、じっと見つめたイシュエルは、やはり既視感を感じるのだった。
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