4 / 48
崩御した王の英断
今日の午後の授業はダンスのみで組まれていた。
先日アルシェリーナとルーカスの婚約が決まるまでは、このクラスで婚約者がいるのは二人だけだった。
アルシェリーナの母方の従兄であるケリンも二人のうちの一人だった。
だが今日は5人が婚約者がいると手を上げた。
婚約者がいる者は授業の前に申告しなければならない決まりだ。
これは要らぬ誤解を防ぐ為に学園側が予防線を張っているのだ。
婚約者がいるのだからコナなどかけぬようにという事だ。
何故こんな事になったのかというと、これは現国王であるダートンと側妃のマリアの行いからくる物であった。
マリアが学園でダートンを口説いたのがダンスの授業中であったのは公にはなっていないが実しやかに囁かれた噂(事実)であった。
あくまでも噂で留めているだけなのだが。
マリアはダンスの授業にも胸元の開いたドレスを着用してあからさまにダートンを口説いた。
腕にも体にもその豊満な胸を押し付けてまさに体で陥落せしめたのだ。
それまでは初心な男であったのに、それからダートンの評判は地の底まで落ちることになる。
その際に正妃であるアネトスの生家の公爵家が学園に抗議により働きかけ、ダンス授業のドレスは学園が用意した物に決まり、婚約者のいる者には節度ある態度で接するように、2回の注意を無視した者は退学の処置を行うまで校則に記載させたのだ。
本来ならそんな事は校則にならずとも貴族間では暗黙のルールだったのだが⋯。
脳内も尻も軽いマリアはダートンの婚約者であるアネトスからの注意を受けた時に「婚約者がいるなんて知らなかったんですもの~」と宣った。
国内外にも発表されたその婚約を平然と知らなかったというマリアに、ダートンも「知らなかったならしょうがないじゃないか」と意味不明の反論をアネトスにした。
そして卒業後に正妃よりも側妃と先に婚姻するという暴挙に出たダートンだった。
それを初めてアルシェリーナが聞いたのは学園に入る前の事だった。
学園に入る時の注意事項として父より訓示されたことだった。
それを聞いたときのアルシェリーナの感想は「この国の王家は品がない」だった。
その際に序とばかりに祖父母達の件も聞かされたアルシェリーナは益々王家が嫌いになって、何故学園に入ってから兄のダイサスが王家嫌いになったのかを知ったのだった。
この日手を上げた5人の中には、先日王命で婚約者が決まったアルシェリーナも入っていた。
アルシェリーナが手を上げた時に、クラスの女子生徒達から憐憫の目で見られた事で彼女は泣きそうになった。
生贄その言葉が今のアルシェリーナにはぴったりだろう。
そして皆に見つめられた理由はもう一つある。
ダンスの授業の為に選んだ今日の衣装は偶々だったが濃紺だったからだ。
ルーカスの髪の色だ。
これはアルシェリーナが選んだわけではない、そもそもドレスは学園でいくつか同じ色の物を置いてある、形は皆一緒だ。
授業の度に順繰りと色を変えていく、今日が本当に偶々この色の日だったのだ。
だけどタイミングが良いのか悪いのか、この濃紺を手に取ったときアルシェリーナは思わず溜息が溢れた。
セリナもこの偶然に自分のドレスと交換しようかと思わず申し出る程でもあったのだが、アルシェリーナはそれを断り「どうせ何時かは着るのだから」と諦めた。
ルーカスの髪の色を纏ったアルシェリーナは地味なその衣装にも負けない華やかさを持っていた。
ルーカスと婚約するまでは学園の男子生徒の中では一番の婚約者候補であったのに、今はもうただ気の毒な薄幸の少女として皆に認識されている。
死ぬまでは碌でもない王だったと評判の前国王サイラスは、息女を持つ国内の貴族家全家から素晴らしい遺言を残したと、英断であると死してその名は上がるのだった。
先日アルシェリーナとルーカスの婚約が決まるまでは、このクラスで婚約者がいるのは二人だけだった。
アルシェリーナの母方の従兄であるケリンも二人のうちの一人だった。
だが今日は5人が婚約者がいると手を上げた。
婚約者がいる者は授業の前に申告しなければならない決まりだ。
これは要らぬ誤解を防ぐ為に学園側が予防線を張っているのだ。
婚約者がいるのだからコナなどかけぬようにという事だ。
何故こんな事になったのかというと、これは現国王であるダートンと側妃のマリアの行いからくる物であった。
マリアが学園でダートンを口説いたのがダンスの授業中であったのは公にはなっていないが実しやかに囁かれた噂(事実)であった。
あくまでも噂で留めているだけなのだが。
マリアはダンスの授業にも胸元の開いたドレスを着用してあからさまにダートンを口説いた。
腕にも体にもその豊満な胸を押し付けてまさに体で陥落せしめたのだ。
それまでは初心な男であったのに、それからダートンの評判は地の底まで落ちることになる。
その際に正妃であるアネトスの生家の公爵家が学園に抗議により働きかけ、ダンス授業のドレスは学園が用意した物に決まり、婚約者のいる者には節度ある態度で接するように、2回の注意を無視した者は退学の処置を行うまで校則に記載させたのだ。
本来ならそんな事は校則にならずとも貴族間では暗黙のルールだったのだが⋯。
脳内も尻も軽いマリアはダートンの婚約者であるアネトスからの注意を受けた時に「婚約者がいるなんて知らなかったんですもの~」と宣った。
国内外にも発表されたその婚約を平然と知らなかったというマリアに、ダートンも「知らなかったならしょうがないじゃないか」と意味不明の反論をアネトスにした。
そして卒業後に正妃よりも側妃と先に婚姻するという暴挙に出たダートンだった。
それを初めてアルシェリーナが聞いたのは学園に入る前の事だった。
学園に入る時の注意事項として父より訓示されたことだった。
それを聞いたときのアルシェリーナの感想は「この国の王家は品がない」だった。
その際に序とばかりに祖父母達の件も聞かされたアルシェリーナは益々王家が嫌いになって、何故学園に入ってから兄のダイサスが王家嫌いになったのかを知ったのだった。
この日手を上げた5人の中には、先日王命で婚約者が決まったアルシェリーナも入っていた。
アルシェリーナが手を上げた時に、クラスの女子生徒達から憐憫の目で見られた事で彼女は泣きそうになった。
生贄その言葉が今のアルシェリーナにはぴったりだろう。
そして皆に見つめられた理由はもう一つある。
ダンスの授業の為に選んだ今日の衣装は偶々だったが濃紺だったからだ。
ルーカスの髪の色だ。
これはアルシェリーナが選んだわけではない、そもそもドレスは学園でいくつか同じ色の物を置いてある、形は皆一緒だ。
授業の度に順繰りと色を変えていく、今日が本当に偶々この色の日だったのだ。
だけどタイミングが良いのか悪いのか、この濃紺を手に取ったときアルシェリーナは思わず溜息が溢れた。
セリナもこの偶然に自分のドレスと交換しようかと思わず申し出る程でもあったのだが、アルシェリーナはそれを断り「どうせ何時かは着るのだから」と諦めた。
ルーカスの髪の色を纏ったアルシェリーナは地味なその衣装にも負けない華やかさを持っていた。
ルーカスと婚約するまでは学園の男子生徒の中では一番の婚約者候補であったのに、今はもうただ気の毒な薄幸の少女として皆に認識されている。
死ぬまでは碌でもない王だったと評判の前国王サイラスは、息女を持つ国内の貴族家全家から素晴らしい遺言を残したと、英断であると死してその名は上がるのだった。
あなたにおすすめの小説
あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです
じじ
恋愛
「あんな女、金だけのためさ」
アリアナ=ゾーイはその日、初めて婚約者のハンゼ公爵の本音を知った。
金銭だけが目的の結婚。それを知った私が泣いて暮らすとでも?おあいにくさま。あなたに恋した少女は、あなたの本音を聞いた瞬間消え去ったわ。
私が金づるにしか見えないのなら、お望み通りあなたのためにお金を用意しますわ…ただし、利子付きで。
白い結婚のまま、旦那様は薔薇のような美人に夢中になりました
柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢リディアは、美貌で有名な侯爵レオンハルトに嫁いだ。
けれど結婚して二年、夫婦は一度も結ばれないまま――白い結婚だった。
それでも旦那様は優しかった。
冷たいわけではない。気づかいの言葉も、穏やかな笑顔もくれる。
だからリディアは、愛されてはいなくても、いつか少しは夫婦になれるのではないかと信じていた。
そんなある日、彼女は知ってしまう。
旦那様が薔薇の君と呼ばれる絶世の美女に心を奪われていることを。
彼が触れなかったのは私にだけだったのだと。
都合のいい奥方として、役に立っていたと悟る
静かに離縁を決意したリディアは、実家へ戻ったあと、女子学院で働き始める。
すると侯爵夫人時代には当たり前だった実務のすべてが、外では驚くほど必要とされていた。
感謝され、認められ、自分の足で立ち始めた彼女は、少しずつ見違えるほど美しくなっていく
婚約破棄された悪役令嬢ですが、面倒なので全部放置します
かきんとう
恋愛
王都の大広間に、どよめきが広がった。
天井から吊るされた巨大なシャンデリアが、何百もの蝋燭の光を反射し、きらきらと輝いている。その光の中心に立つ私は、妙に他人事のような気分で、その場の空気を眺めていた。
「エレノア・フォン・リーベルト! 私は貴様との婚約をここに破棄する!」
高らかに宣言したのは、第一王子であり私の婚約者でもあったアルベルト殿下だった。
周囲の貴族たちが一斉に息を呑み、次の瞬間には小声のざわめきが連鎖のように広がっていく。
――ああ、ついに来たのね。
【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。
婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!
みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。
幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、
いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。
そして――年末の舞踏会の夜。
「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」
エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、
王国の均衡は揺らぎ始める。
誇りを捨てず、誠実を貫く娘。
政の闇に挑む父。
陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。
そして――再び立ち上がる若き王女。
――沈黙は逃げではなく、力の証。
公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。
――荘厳で静謐な政略ロマンス。
(本作品は小説家になろう、カクヨムにも掲載中です)
とある令嬢の優雅な別れ方 〜婚約破棄されたので、笑顔で地獄へお送りいたします〜
入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済!】
社交界を賑わせた婚約披露の茶会。
令嬢セリーヌ・リュミエールは、婚約者から突きつけられる。
「真実の愛を見つけたんだ」
それは、信じた誠実も、築いてきた未来も踏みにじる裏切りだった。だが、彼女は微笑んだ。
愛よりも冷たく、そして美しく。
笑顔で地獄へお送りいたします――
すみっこ婚約破棄同盟〜王子様による婚約破棄のすみっこで〜
まりー
恋愛
ある夜会で王子とその側近達の婚約破棄が行われた。腕に恋人をぶら下げて。所謂、王道断罪劇である。
でもこのお話の主役は麗しのヒロインでも、キラキラ王子でも、学園一の秀才や騎士団期待のホープでもない。これは王道のすみっこで行われた、弱小貴族と商人の子息たちの婚約破棄のお話である。
_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _
「もう俺ら、恋なんてしない!」と言う小学生の息子の話を参考に書きました。登場人物の男子たちの頭は小学生レベルだと思って読んでください。
謹んで、婚約破棄をお受けいたします。
パリパリかぷちーの
恋愛
きつい目つきと素直でない性格から『悪役令嬢』と噂される公爵令嬢マーブル。彼女は、王太子ジュリアンの婚約者であったが、王子の新たな恋人である男爵令嬢クララの策略により、夜会の場で大勢の貴族たちの前で婚約を破棄されてしまう。