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オリビアの隣でイタズラを見つかった幼女のように、リーシャは目を輝かせて話していた。
それを見ていたオリビアだったが、急にリーシャが肩を落とし目線を下げた。
「本当はこんな事したくなかった。反対されていたけれど潔く離婚しても良かったのよ。でもね、でも⋯⋯」
段々とその時の事を思い出して来たのか、リーシャの唇が震えだし、言葉が紡げなくなった。膝の上に乗せていた手をギュッと合わせたが、その手も震えている。涙を我慢するようなその姿を目にして、オリビアは母の苦悩は21年経っても続いている事を知った。
今度は自分の番だ。
オリビアは先程リーシャがしてくれたように彼女を抱きしめ、そっと背を撫でた。
少しの間そうしていたけれど、リーシャは直ぐにオリビアの胸に手を添えて「大丈夫よ」と見上げて微笑んだ。
「ごめんなさい、久しぶりに思い出して取り乱してしまったわ。あまりにも屈辱だったから。その時ユリウスはお義父様に叱責されていたの。私も呼ばれて行ったのだけどさきにユリウスが来ていたの。二人の言い合いは聞くに耐えない物だったわ。私も耳を塞ぎたくなる内容だったの。外にも声が漏れているしノックなどしてる暇はないとその時は思ってしまって、中に入ろうとしたら、ユリウスがお義父様に怒鳴ったわ」
「⋯⋯⋯何を?」
リーシャが一旦話を止めた時、何故かオリビアは合いの手を入れなければいけない気がして、質問していた。
「お義父様は、オリビアが女の子だったから、当たり前に嫁がせてあげたい、だから私が男児を生むまで、ミルチアとは会うなとユリウスに言っていたの。そんなお義父様に貴方の父親はね『愛する人以外の女と肌を合わせるなど二度としたくない!怖気が走る!』そう言ったのよ」
オリビアは自分の父親に殺意が湧いた。
今までの話から、母が父に子種を殺す薬を盛っていたのだと分かった。そんな薬は飲む者に効能以外の悪い影響が起きてもおかしくない。そんな恐ろしい事をして、母は長い年月をかけて復讐しようとしていたのだと、少しだけ母を怖いと思っていた。
だが、その言葉を聞かされた母の心中を思えば、それすら生温い様な気がした。
「⋯⋯お母様」
オリビアはリーシャの手を握って目線を合わせた。
「オリビア、こんな母を許して。自分でも恐ろしい事をしていた自覚はあるの。でも、でもね私にはそれ以外の方法は思い付かなかった。それをする事で自我を保っていられたの。ごめんなさいオリビア。こんな狭量な母でごめんなさい」
「お母様、私に謝らないで。ずっとその辛さを耐えていたのでしょう。お父様に仕返ししたかったのでしょう?それほどお母様はお父様を愛していたのでしょう」
「愛されていたと思っていたのが、紛い物の心だったとは思いたくなかったのかもしれないわ。私も愛されたかったのにね」
リーシャはポツリと本音を吐露した。
愛されたかった、それはオリビアもそうだ。
マリウスに愛されたかった。
愛されているとあの日までは思っていた。
自分も母のようになるのだろうか?
思わず怖くなってオリビアは震えた。
その小さな動きにリーシャは気付いた。
「貴方は大丈夫よ。こんな私のようにはならないわ。そうならない為にも私はここへ来たのだもの」
リーシャは心強い言葉でオリビアを励ましてくれた。
リーシャは暫くはリーテンベルク邸に滞在するが、先程の書類をユリウスに叩きつける為に近いうちに隣国に行くのだと言った。
その間、オリビアが相談できる人に連絡してくれたという。
「明日来られるわ」
そう言ってリーシャはオリビアの部屋を後にした。
それを見ていたオリビアだったが、急にリーシャが肩を落とし目線を下げた。
「本当はこんな事したくなかった。反対されていたけれど潔く離婚しても良かったのよ。でもね、でも⋯⋯」
段々とその時の事を思い出して来たのか、リーシャの唇が震えだし、言葉が紡げなくなった。膝の上に乗せていた手をギュッと合わせたが、その手も震えている。涙を我慢するようなその姿を目にして、オリビアは母の苦悩は21年経っても続いている事を知った。
今度は自分の番だ。
オリビアは先程リーシャがしてくれたように彼女を抱きしめ、そっと背を撫でた。
少しの間そうしていたけれど、リーシャは直ぐにオリビアの胸に手を添えて「大丈夫よ」と見上げて微笑んだ。
「ごめんなさい、久しぶりに思い出して取り乱してしまったわ。あまりにも屈辱だったから。その時ユリウスはお義父様に叱責されていたの。私も呼ばれて行ったのだけどさきにユリウスが来ていたの。二人の言い合いは聞くに耐えない物だったわ。私も耳を塞ぎたくなる内容だったの。外にも声が漏れているしノックなどしてる暇はないとその時は思ってしまって、中に入ろうとしたら、ユリウスがお義父様に怒鳴ったわ」
「⋯⋯⋯何を?」
リーシャが一旦話を止めた時、何故かオリビアは合いの手を入れなければいけない気がして、質問していた。
「お義父様は、オリビアが女の子だったから、当たり前に嫁がせてあげたい、だから私が男児を生むまで、ミルチアとは会うなとユリウスに言っていたの。そんなお義父様に貴方の父親はね『愛する人以外の女と肌を合わせるなど二度としたくない!怖気が走る!』そう言ったのよ」
オリビアは自分の父親に殺意が湧いた。
今までの話から、母が父に子種を殺す薬を盛っていたのだと分かった。そんな薬は飲む者に効能以外の悪い影響が起きてもおかしくない。そんな恐ろしい事をして、母は長い年月をかけて復讐しようとしていたのだと、少しだけ母を怖いと思っていた。
だが、その言葉を聞かされた母の心中を思えば、それすら生温い様な気がした。
「⋯⋯お母様」
オリビアはリーシャの手を握って目線を合わせた。
「オリビア、こんな母を許して。自分でも恐ろしい事をしていた自覚はあるの。でも、でもね私にはそれ以外の方法は思い付かなかった。それをする事で自我を保っていられたの。ごめんなさいオリビア。こんな狭量な母でごめんなさい」
「お母様、私に謝らないで。ずっとその辛さを耐えていたのでしょう。お父様に仕返ししたかったのでしょう?それほどお母様はお父様を愛していたのでしょう」
「愛されていたと思っていたのが、紛い物の心だったとは思いたくなかったのかもしれないわ。私も愛されたかったのにね」
リーシャはポツリと本音を吐露した。
愛されたかった、それはオリビアもそうだ。
マリウスに愛されたかった。
愛されているとあの日までは思っていた。
自分も母のようになるのだろうか?
思わず怖くなってオリビアは震えた。
その小さな動きにリーシャは気付いた。
「貴方は大丈夫よ。こんな私のようにはならないわ。そうならない為にも私はここへ来たのだもの」
リーシャは心強い言葉でオリビアを励ましてくれた。
リーシャは暫くはリーテンベルク邸に滞在するが、先程の書類をユリウスに叩きつける為に近いうちに隣国に行くのだと言った。
その間、オリビアが相談できる人に連絡してくれたという。
「明日来られるわ」
そう言ってリーシャはオリビアの部屋を後にした。
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