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※流産に関しての話です
ご不快に思われる方はご自衛ください
――――――――――
油断していた。
オリビアもオリビアの周りにいた者、皆がそう思った。
今から3ヶ月前にマリウスの愛人と隠し子の問題が起きた。
それから一度、月の物がきた、そう思った。その時は妊娠していなかったとホッと胸を撫で下ろした。
妊娠についても学んでいたから、喩え妊娠しても希に出血がある事を知っていたはずなのに失念していた。
食欲が落ちても、体調不良が起きてもマリウスの問題があったから、それの影響だと思った。
よくよく考えれば妊娠初期の症状は出ていた。
匂いにも敏感になっていた。昔馴染みとはいえ、直ぐにアレクサンドルのシトラスの匂いを感じた。確かに懐かしさはあったかもしれない、だけど昔はそんなに近い距離があったわけではなかったのに。
マリウスの匂いがすえた匂いだと感じたのはいつだったか?
眠くて堪らない時もあった。
吐き気に悩まされた時もあったし、それはつい先日もそうだった。
それは噂について気に病んでいるのだと、体が正直なのだと思ったのはオリビア自身だった。最近は腹部に痛みを感じてもいたではないか!
オリビアはマリウスとの子を流産した。
マリウスの件や社交界の噂に惑わされ、自分が妊娠するかもしれない、しているかもしれないとオリビアは思い至らなかった。
初めてオリビアの元に宿ってくれた我が子は、明るい日差しも夜の静寂も、美しい景色もそして人の世の醜さも、その存在さえも知らぬ間に彼女の内からいなくなって、この世の無常をオリビアに示した。
「何処から後悔すればいいのかしら?」
ベッドの上で半身を起こして薬湯を飲んだオリビアは、虚ろな目でアンヌに呟いた。
こんなにも毎日お側に仕えておきながら自分こそが何故気付かなかったのか、アンヌも自分を責めていた。
そして部屋の外ではオリビアを案じてリーシャが佇んでいた。
オリビアもその側にいるアンヌも妊娠の初期症状なんて詳しくはない。それに一番気付けたのは経験者の自分ではなかったのか、何よりオリビアの妊娠の兆候に気づけなかった。リーシャも娘の心を思い嘆いていた。
オリビアの周りにいる全ての者が自分が自分こそがと、己を責めていた。
オリビアは“石女”ではなかった。
奇しくも噂を覆す事ができたのは、他家でのお茶会の真っ最中に流産したという、悲しい現実で証明されてしまった。
流産はオリビアの心も体も蝕んだ。
医師から告げられたのは今後妊娠は全くできないわけではないが、難しいだろうという言葉だった。
今回の流産で思ったよりも体は傷を負っていた。流産で倒れたことが発覚するまで時間を有したからだった。
誰も妊娠に気付かなかったから流産だとは思わなかった。ましてやオリビアには“石女”の噂があった。
倒れた侯爵家でも直ぐに医師が呼ばれていたが、気つけ薬を煎じるだけだった。
出血に気付いたのはドレスを緩めようと診察後にオリビアに触れたアンヌだった。
それから再び診察を行って流産が発覚した。
遅れをとったことがオリビアの運命を再び変えてしまった。
気つけの薬湯を飲んだあと眠ったまま、リーテンベルク侯爵家に戻り自分のベッドに寝かされたオリビアが目を覚ましたのは、その2日後だった。
医師から話を聞かされたオリビアは一人にしてくれと言った。
アンヌが入室を許されたのは次の日だった。
その時すでにオリビアの瞳から光は消え失せていた。
ご不快に思われる方はご自衛ください
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油断していた。
オリビアもオリビアの周りにいた者、皆がそう思った。
今から3ヶ月前にマリウスの愛人と隠し子の問題が起きた。
それから一度、月の物がきた、そう思った。その時は妊娠していなかったとホッと胸を撫で下ろした。
妊娠についても学んでいたから、喩え妊娠しても希に出血がある事を知っていたはずなのに失念していた。
食欲が落ちても、体調不良が起きてもマリウスの問題があったから、それの影響だと思った。
よくよく考えれば妊娠初期の症状は出ていた。
匂いにも敏感になっていた。昔馴染みとはいえ、直ぐにアレクサンドルのシトラスの匂いを感じた。確かに懐かしさはあったかもしれない、だけど昔はそんなに近い距離があったわけではなかったのに。
マリウスの匂いがすえた匂いだと感じたのはいつだったか?
眠くて堪らない時もあった。
吐き気に悩まされた時もあったし、それはつい先日もそうだった。
それは噂について気に病んでいるのだと、体が正直なのだと思ったのはオリビア自身だった。最近は腹部に痛みを感じてもいたではないか!
オリビアはマリウスとの子を流産した。
マリウスの件や社交界の噂に惑わされ、自分が妊娠するかもしれない、しているかもしれないとオリビアは思い至らなかった。
初めてオリビアの元に宿ってくれた我が子は、明るい日差しも夜の静寂も、美しい景色もそして人の世の醜さも、その存在さえも知らぬ間に彼女の内からいなくなって、この世の無常をオリビアに示した。
「何処から後悔すればいいのかしら?」
ベッドの上で半身を起こして薬湯を飲んだオリビアは、虚ろな目でアンヌに呟いた。
こんなにも毎日お側に仕えておきながら自分こそが何故気付かなかったのか、アンヌも自分を責めていた。
そして部屋の外ではオリビアを案じてリーシャが佇んでいた。
オリビアもその側にいるアンヌも妊娠の初期症状なんて詳しくはない。それに一番気付けたのは経験者の自分ではなかったのか、何よりオリビアの妊娠の兆候に気づけなかった。リーシャも娘の心を思い嘆いていた。
オリビアの周りにいる全ての者が自分が自分こそがと、己を責めていた。
オリビアは“石女”ではなかった。
奇しくも噂を覆す事ができたのは、他家でのお茶会の真っ最中に流産したという、悲しい現実で証明されてしまった。
流産はオリビアの心も体も蝕んだ。
医師から告げられたのは今後妊娠は全くできないわけではないが、難しいだろうという言葉だった。
今回の流産で思ったよりも体は傷を負っていた。流産で倒れたことが発覚するまで時間を有したからだった。
誰も妊娠に気付かなかったから流産だとは思わなかった。ましてやオリビアには“石女”の噂があった。
倒れた侯爵家でも直ぐに医師が呼ばれていたが、気つけ薬を煎じるだけだった。
出血に気付いたのはドレスを緩めようと診察後にオリビアに触れたアンヌだった。
それから再び診察を行って流産が発覚した。
遅れをとったことがオリビアの運命を再び変えてしまった。
気つけの薬湯を飲んだあと眠ったまま、リーテンベルク侯爵家に戻り自分のベッドに寝かされたオリビアが目を覚ましたのは、その2日後だった。
医師から話を聞かされたオリビアは一人にしてくれと言った。
アンヌが入室を許されたのは次の日だった。
その時すでにオリビアの瞳から光は消え失せていた。
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