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maruko

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 アレクサンドルは、この旅は一旦南を目指す事にした。なんとなく温かい土地のほうがオリビアを癒やしてくれるような気がしたからだった。
 だが意外にもオリビアの心を解したのは子供たちだった。

 はじめの領地、王太子妃の生家の領地を出発して、アレクサンドルは返事は無くとも、相変わらず馬車の移動で流れる窓の外の説明をオリビアにしていた。

 その時に気付いたのが教会の事を話すと、少しオリビアが反応したように見えた。

「あそこに教会があるよ」
「あの教会はかなり古くなってるなぁ」

 そんな言葉にオリビアが視線を少し上げるのだ。
 アレクサンドルは、子を亡くしたオリビアが祈りたいのかと思った。
 それからは馬車が進み、見かけた時には教会に立ち寄るようにしていた。

 中に入るとやはりオリビアは真っ直ぐに祭壇に向かい祈りを捧げる。そんなオリビアの隣でアレクサンドルはずっと見守っていた。

 いくつかの領地を進んで行く一行。行き先は気分で決めるため、毎晩次の日にどこに行くかをオリビアが寝たあとに従者やアンヌと話し合ってアレクサンドルは決めていた。

 そこも偶然に立ち寄った教会だった。

 その教会はかなり大きめな教会だった。建立様式は古いものだから、始めに建てた時は相当な費用もかかっただろうと思わしめるほど、細かな細工が所々に見受けられた。

 だから中に入って気付くのが少し遅かった。

 子を亡くしてになったオリビアを慮って、なる丈子供を見かけないように工夫して宿なども選んでいた。近づけないように配慮していたのだが、その教会では入った時から沢山の子供たちが、清掃をしていた。

 あとになって聞いた話によると、その教会の敷地内に孤児院が併設されているのだという。
 併設と言っても教会の敷地は広く、かなり奥の方に建てられていた孤児院にアレクサンドル達は気付なかった。
 孤児院の教育の一環で、子ども達は毎日清掃の奉仕を教会でしていたのだと言う。
 見習いシスターに混じって、雑巾で懸命に床や壁を拭く子供達。
 その中の一人が幼すぎて力が足りなかったのだろう、桶に浸した雑巾を絞るのに難儀していた。
 そこにオリビアが近寄って、子供の代わりにギュッと雑巾を絞り「はい」と言って渡した。「ありがとう」辿々しくオリビアにお礼を言って子供が立ち去ると、彼女は立ち上がりこちらを振り向いた。その顔には、お礼を言われて照れたのだろうかをアレクサンドル達は見た。

 数カ月ぶりのオリビアらしい笑顔だった。

 それを見たアレクサンドルは言葉もなく、彼女に走り寄り抱きしめた。
 そんなアレクサンドルをオリビアも戸惑いながら抱きしめ返した。

 それから直ぐにオリビアが元に戻ったわけではなかった。
 だがその表情は少しずつ少しずつ明るさを取り戻すように思えた。

 それからは孤児院も視野に入れ旅先を考えた。

 最初は孤児院を併設している教会を中心に回った。

 その度に言葉数が増えるオリビアにアレクサンドルは嬉しくて堪らなかった。
 だが始めにしたように抱きしめるのは控えた。
 彼女にとって自分はまだ“兄”なのだ。
 勝手に距離を詰めることはしたくなかった。

 今は元のオリビアに戻ってもらう事の方が先決だ。アレクサンドルの代わりというわけではないが、アンヌがオリビアを抱きしめていた。

 それをアレクサンドルが羨ましそうに横目で見るので、彼の従者は見る度に揶揄っていた。

 はじめの頃に比べれば段々と笑顔の増えてゆく一行に馭者も安堵していた。

 王都やリーテンベルク家で何が起こっているかなど、アレクサンドル達は知ることも無かった。
 ただ一方的にリーシャに葉書を送っていた。
 彼女の心配を少しでも取り除こうと簡単にだが、全てイニシャル表記でオリビアの様子も認めた。

 どこに行くかわからないアレクサンドルに返信が来ることはなかった。

 ただ王家には従者が行き先を何度か告げているように見えた。
 おそらく見えない影も付いてきているのだろうが、それには素知らぬ振りをした。

 王女のいないこの国で、リーシャの娘のオリビアを国王が、放って置くはずはないのだから、影を断るのは酷というものだろう。

 アレクサンドルは、オリビアとともに子どもたちに囲まれて、国歌を口ずさみながらそう思った。





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