あなたならどうなさいますか?

maruko

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 オリビアは髪留めを着けた日から、目覚しく回復していった。
 行く先々の観光地や賑わう街にも寄るようになり、アレクサンドルと一緒に庶民に混じって、買い食いをしたりショッピングをしたり、まるで学生に戻ったかのようだった。

 回復とともに笑顔も増えて行く。

 孤児院の慰問も教会への祈りの時間も、前のように暗いものではなく。
 明るく子どもたちに接するオリビアに、アレクサンドルは愛おしさが募る一方だった。

 そんなアレクサンドルをレオナールとアンヌは静かに見守った。
 回復していてもオリビアが、アレクサンドルを兄以上に思えるかは、それはオリビア次第だ。
 決して強要はしないとアレクサンドルが考えているのならば、それを見守るだけだと二人は考えていた。

 とうのオリビアは、旅の楽しさを感じ始めて、アレクサンドルの気持ちには、まだ気付けていなかった。
 ただ、オリビアの中ではアレクサンドルへの思いに変化が生じていた。
 だが、彼女はアレクサンドル自分を兄妹のように思っていると、思い込んでいるため、自分の心の変化をまだ言い出せずにいた。

 (兄様はいつも私が困っていると優しく手を差し伸べてくれる)

 それは今までもオリビアは思っていたことだったが、今は特に感じていた。
 そしてオリビアは“兄様”と呼ぶのを卒業したいと思い始めていた。

 それはアンヌが“アレク様”と呼んだ事がきっかけだったかもしれない。

 アンヌはただ呼称として呼んでいるだけなのは分かっているが、オリビアはその時(私の兄様よ!)そう思った。そして(私だってアレク様と呼んでも許されるわよね)と思った。

 実際には以前は何度か呼んでいる。

 ただそこに感情を乗せていなかっただけだ。

 今は違う意味で呼びたかった。
 だがそのオリビアを止めているのは、自分が結婚と離婚を経験して、子まで成した事だった。

 アレクサンドルは第三王子だ。
 今は留め置かれてはいるが、いつかは臣籍に下る。

 かつてのオリビアであるならば、婚姻相手に相応しかったかもしれないが、今のオリビアではアレクサンドルの相手としては相応しくはない。

 いくらでも未婚の娘はいるのだから、アレクサンドルが態々オリビアを選ぶ必要はないのだ。

 昔、自身の拙い字で婚約誓約書にサインをしたのを覚えている。
 あの時は母であるリーシャに「お父様には内緒よ」そう言われて認めた。
 だが、数日後にあのサインはいつかオリビアがサインをする為の練習だったと、リーシャに聞かされた。

 そんな他愛もない事を思い出して、一瞬でもアレク様と婚約していたなぁと思い出に耽る。

 それは今のオリビアの、ほんの少しの慰めだった。





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