26 / 61
26
灯りの重なりで幻想的だった庭園の散策に、酔いしれてしまったのか、それともアレクサンドルとの会話で酔わされた?
どちらとも言えないけれど、オリビアは部屋に帰ってからも寝付けずにいた。
ベッドに入っても落ち着かなくて、はじめは半身を起こしぼんやりと部屋を眺めるに留めた。
それでも寝付けないオリビアはとうとうベッドから抜け出した。
オリビアに用意された部屋には、小さいバルコニーがあった。まだまだ肌寒い夜、少し厚めの上着を羽織り少々不格好でバルコニーに出た。
夜中の外気は思ったよりも冷たい。
首の所から風が体に入る気がして、ギュッと上着の合わせを握る。
鼻で息を吸ってみる。
澄んだ空気が体内を巡ると益々眠れる気がしない。
下を見ると、先程散策していた庭園が広がっているはずだが、足元の方にあった小さな灯りは消されたようで、外灯だけでは幻想的とは言えないのだなと思いながら眺めた。
遠くに見えるはずの山は、夜だからなのかよく見えない。でも明かりが一つ二つ見えるから、ひょっとしたらあの位置が、義祖父の住む別邸かもしれないと、少し心が弾んだ。
時間にしてどれくらいそこに居たのか、すっかり冷たくなった頬に何気なく手を宛てた時、ブルリと体が震えたのをきっかけに部屋に戻った。
こんな迂闊な事で体調を崩したら、また皆に迷惑をかけてしまう。
自分の立場を思い出し、我に返ったオリビアは冷たい体を温めるように、今度は頭から毛布を被り無理矢理目を瞑った。
(最初からこうしていれば良かった)反省とはどうして行動を起こす前に出来ないのだろう、オリビアはいつもあとからそう思う。
次の日、案の定起きれなかったオリビアは、自身の行いで日程を変更しなければならず、昨夜の反省が活かされるのは、いつの日になるのかとまたもや後悔する事になった。
そんなオリビアの反省を知らないアレクサンドルは、遅い朝食を一人で摂っていたオリビアの所にやってきた。
「おはようオリビア、グッスリだったようだね、よく眠れて良かったな」
運動しやすい軽装でタオルを首にかけて、それで汗を拭きながらやってきたアレクサンドルは、その顔に爽やかな笑顔を浮かべていたが、少し引き攣っているように思えた。
自分の行いを反省していたオリビアだったから、ついアレクサンドルの何気ない言葉を、嫌味に取って顔が真っ青になった。
「おはようございます、あの、ごめんなさい」
突然のオリビアの謝罪にアレクサンドルは面食らう。
実はアレクサンドルも、朝の運動でかいた汗も流さず、気安く食堂にやってきてしまった無作法を部屋に入ってから気付いてしまった。だがそのまま引き返すのもなんだかなと考え、とりあえずと入室した勢いで声をかけて、正直バツが悪いのを笑顔で誤魔化していたのにと思っていた。
お互いが違う方向で反省しながらだから、交わした挨拶のあと、オリビアの謝罪で少し空気が気不味くなった。
折角昨夜縮まった距離が、少し離れたようでお互いが寂しく感じていた時、空気を読まずに入ってきたのは、どこまでも明るい伯母だった。
「おはよう!オリビアちゃん!あらっアレクサンドル様も一汗かいていらしたのね」
ニコニコとオリビアの斜め前に座り、ともに来たメイドにお茶を頼む。その姿が自然に流れる様だったから、二人はホッと息を吐く。
「伯母様、おはようございます」
「メロウ夫人おはようございます」
二人の挨拶にもニコニコ応じている明るい伯母は、メロウ伯爵家の太陽だとオリビアは思った。
こんな人になりたい、母リーシャと長く距離の開いた関係だったオリビアには、指針になる女性はいなかった。
憧れる人も居なくはなかったが、真似してみたいと感じる人はいなかった。
3年前の父の愚行で、母の長年の物思いを理解したオリビアは、母の苦悩を知った。
そして今回のオリビアの事で、直ぐに駆けつけてくれたリーシャに母の愛情を知った。
伯母は敢えてなのか、オリビアに噂の事を聞いたりしない。
どこまでも明るく、何でも笑い飛ばすようなその姿が、オリビアには眩しく映った。
お茶を飲みながら「アチチ」と出す声は、淑女としてはちょっと抜けているかもしれない。
それでもオリビアは伯母のようになりたい、そう感じた。
「伯母様、今日は寝坊しちゃって義祖父の所に行けなくなったの」
伯母の前では素直に自分の非を認められる。
オリビアの言葉に伯母は、何でもないことのように提案した。
「あら~それなら今日は私とショッピングしましょう。アレクサンドル様、お付き合い頂くのは不敬ではありませんわよね」
その物言いはきっと王宮では咎められるかもしれないが、ここはそこから遠く離れたメロウ伯爵領。元よりそんな事を咎めるアレクサンドルではない。
それよりもウインクしながら、そう言ってくれた伯母の言葉で、先程気まずくなりそうだったオリビアとの距離が離れずに済んだ。
そのことに心の中で感謝しながら、アレクサンドルはオリビアの近くに寄り、座る彼女の肩にそっと手を置きながら、斜め前に座るメロウ夫人を見つめた。
「もちろん!お供いたします」
アレクサンドルは彼女への感謝の気持ちを言葉に乗せた。
どちらとも言えないけれど、オリビアは部屋に帰ってからも寝付けずにいた。
ベッドに入っても落ち着かなくて、はじめは半身を起こしぼんやりと部屋を眺めるに留めた。
それでも寝付けないオリビアはとうとうベッドから抜け出した。
オリビアに用意された部屋には、小さいバルコニーがあった。まだまだ肌寒い夜、少し厚めの上着を羽織り少々不格好でバルコニーに出た。
夜中の外気は思ったよりも冷たい。
首の所から風が体に入る気がして、ギュッと上着の合わせを握る。
鼻で息を吸ってみる。
澄んだ空気が体内を巡ると益々眠れる気がしない。
下を見ると、先程散策していた庭園が広がっているはずだが、足元の方にあった小さな灯りは消されたようで、外灯だけでは幻想的とは言えないのだなと思いながら眺めた。
遠くに見えるはずの山は、夜だからなのかよく見えない。でも明かりが一つ二つ見えるから、ひょっとしたらあの位置が、義祖父の住む別邸かもしれないと、少し心が弾んだ。
時間にしてどれくらいそこに居たのか、すっかり冷たくなった頬に何気なく手を宛てた時、ブルリと体が震えたのをきっかけに部屋に戻った。
こんな迂闊な事で体調を崩したら、また皆に迷惑をかけてしまう。
自分の立場を思い出し、我に返ったオリビアは冷たい体を温めるように、今度は頭から毛布を被り無理矢理目を瞑った。
(最初からこうしていれば良かった)反省とはどうして行動を起こす前に出来ないのだろう、オリビアはいつもあとからそう思う。
次の日、案の定起きれなかったオリビアは、自身の行いで日程を変更しなければならず、昨夜の反省が活かされるのは、いつの日になるのかとまたもや後悔する事になった。
そんなオリビアの反省を知らないアレクサンドルは、遅い朝食を一人で摂っていたオリビアの所にやってきた。
「おはようオリビア、グッスリだったようだね、よく眠れて良かったな」
運動しやすい軽装でタオルを首にかけて、それで汗を拭きながらやってきたアレクサンドルは、その顔に爽やかな笑顔を浮かべていたが、少し引き攣っているように思えた。
自分の行いを反省していたオリビアだったから、ついアレクサンドルの何気ない言葉を、嫌味に取って顔が真っ青になった。
「おはようございます、あの、ごめんなさい」
突然のオリビアの謝罪にアレクサンドルは面食らう。
実はアレクサンドルも、朝の運動でかいた汗も流さず、気安く食堂にやってきてしまった無作法を部屋に入ってから気付いてしまった。だがそのまま引き返すのもなんだかなと考え、とりあえずと入室した勢いで声をかけて、正直バツが悪いのを笑顔で誤魔化していたのにと思っていた。
お互いが違う方向で反省しながらだから、交わした挨拶のあと、オリビアの謝罪で少し空気が気不味くなった。
折角昨夜縮まった距離が、少し離れたようでお互いが寂しく感じていた時、空気を読まずに入ってきたのは、どこまでも明るい伯母だった。
「おはよう!オリビアちゃん!あらっアレクサンドル様も一汗かいていらしたのね」
ニコニコとオリビアの斜め前に座り、ともに来たメイドにお茶を頼む。その姿が自然に流れる様だったから、二人はホッと息を吐く。
「伯母様、おはようございます」
「メロウ夫人おはようございます」
二人の挨拶にもニコニコ応じている明るい伯母は、メロウ伯爵家の太陽だとオリビアは思った。
こんな人になりたい、母リーシャと長く距離の開いた関係だったオリビアには、指針になる女性はいなかった。
憧れる人も居なくはなかったが、真似してみたいと感じる人はいなかった。
3年前の父の愚行で、母の長年の物思いを理解したオリビアは、母の苦悩を知った。
そして今回のオリビアの事で、直ぐに駆けつけてくれたリーシャに母の愛情を知った。
伯母は敢えてなのか、オリビアに噂の事を聞いたりしない。
どこまでも明るく、何でも笑い飛ばすようなその姿が、オリビアには眩しく映った。
お茶を飲みながら「アチチ」と出す声は、淑女としてはちょっと抜けているかもしれない。
それでもオリビアは伯母のようになりたい、そう感じた。
「伯母様、今日は寝坊しちゃって義祖父の所に行けなくなったの」
伯母の前では素直に自分の非を認められる。
オリビアの言葉に伯母は、何でもないことのように提案した。
「あら~それなら今日は私とショッピングしましょう。アレクサンドル様、お付き合い頂くのは不敬ではありませんわよね」
その物言いはきっと王宮では咎められるかもしれないが、ここはそこから遠く離れたメロウ伯爵領。元よりそんな事を咎めるアレクサンドルではない。
それよりもウインクしながら、そう言ってくれた伯母の言葉で、先程気まずくなりそうだったオリビアとの距離が離れずに済んだ。
そのことに心の中で感謝しながら、アレクサンドルはオリビアの近くに寄り、座る彼女の肩にそっと手を置きながら、斜め前に座るメロウ夫人を見つめた。
「もちろん!お供いたします」
アレクサンドルは彼女への感謝の気持ちを言葉に乗せた。
あなたにおすすめの小説
良いものは全部ヒトのもの
猫枕
恋愛
会うたびにミリアム容姿のことを貶しまくる婚約者のクロード。
ある日我慢の限界に達したミリアムはクロードを顔面グーパンして婚約破棄となる。
翌日からは学園でブスゴリラと渾名されるようになる。
一人っ子のミリアムは婿養子を探さなければならない。
『またすぐ別の婚約者候補が現れて、私の顔を見た瞬間にがっかりされるんだろうな』
憂鬱な気分のミリアムに両親は無理に結婚しなくても好きに生きていい、と言う。
自分の望む人生のあり方を模索しはじめるミリアムであったが。
【完結】わたしの欲しい言葉
彩華(あやはな)
恋愛
わたしはいらない子。
双子の妹は聖女。生まれた時から、両親は妹を可愛がった。
はじめての旅行でわたしは置いて行かれた。
わたしは・・・。
数年後、王太子と結婚した聖女たちの前に現れた帝国の使者。彼女は一足の靴を彼らの前にさしだしたー。
*ドロッとしています。
念のためティッシュをご用意ください。
幼馴染が最優先な婚約者など、私の人生には不要です。
たると
恋愛
シュタイン伯爵家の長女エルゼは、公爵子息フィリップに恋をしていた。
彼の婚約者として選ばれた時は涙を流して喜んだが、その喜びもいまは遠い。
『君は一人でも大丈夫だろう。この埋め合わせは必ずする。愛している』
「……『愛している』、ですか」
いつも幼馴染を優先するアルベルトに、恋心はすっかり冷めてしまった。
裏切りの先にあるもの
マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。
結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。
【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした
凛蓮月@騎士の夫〜発売中です
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】
いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。
婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。
貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。
例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。
私は貴方が生きてさえいれば
それで良いと思っていたのです──。
【早速のホトラン入りありがとうございます!】
※作者の脳内異世界のお話です。
※小説家になろうにも同時掲載しています。
※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)
〖完結〗私はあなたのせいで死ぬのです。
藍川みいな
恋愛
「シュリル嬢、俺と結婚してくれませんか?」
憧れのレナード・ドリスト侯爵からのプロポーズ。
彼は美しいだけでなく、とても紳士的で頼りがいがあって、何より私を愛してくれていました。
すごく幸せでした……あの日までは。
結婚して1年が過ぎた頃、旦那様は愛人を連れて来ました。次々に愛人を連れて来て、愛人に子供まで出来た。
それでも愛しているのは君だけだと、離婚さえしてくれません。
そして、妹のダリアが旦那様の子を授かった……
もう耐える事は出来ません。
旦那様、私はあなたのせいで死にます。
だから、後悔しながら生きてください。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全15話で完結になります。
この物語は、主人公が8話で登場しなくなります。
感想の返信が出来なくて、申し訳ありません。
たくさんの感想ありがとうございます。
次作の『もう二度とあなたの妻にはなりません!』は、このお話の続編になっております。
このお話はバッドエンドでしたが、次作はただただシュリルが幸せになるお話です。
良かったら読んでください。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。