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雨が降っていた。
夕方からポツポツと緩く小さく降り始めたそれは、オリビアが夕食後に部屋に戻ると、少し激しくなっていた。
以前なら夜の雨が窓を打ち、雨の水模様が窓に広がる様が、何だか空が泣いて窓に縋っている様で、あまり見たくなかった。
幼い頃に一度だけ、雷が怖くて寝付けずに、リーシャの部屋に匿って貰おうと行った時、そっと部屋の扉を開けたら、窓辺に立っていた母が窓辺に立っていた。
〈〈〈お母様〉〉〉
声をかけようとした瞬間、窓に手を付いたままリーシャが泣き崩れた。窓伝いに手を滑らせながら崩れるさまは哀しくて、リーシャから溢れた「ユリウスどうして」という言葉の意味は、その頃はわからなかった。ただリーシャの姿が幼いオリビアに慟哭を見せつけた。
その日からオリビアは、強い雨に打ち付けられる窓と雷が嫌いになった。
マリウスが一緒にいた頃のこんな日は、それを知る彼がずっと側に居てくれた。
それこそ、その裏で彼は、オリビアを裏切り続けていたのだが、そんな事に気付けていなかったオリビアは、それがいつも心強かった。
でも今日は⋯⋯。
「ニコル、リバー。これが一番嬉しいかも」
思わず大きな窓に手を当てて呟いてしまう。
オリビアの部屋はタウンハウスの方も改装していた。こちらもオリビアの部屋の窓が大きくなり、そこからバルコニーに出る入り口へと変わった。庇が大きく長く設けられ、雨が窓を打つことがなくなっていた。
オリビアは雨の日の物悲しさを忘れて、そこから夜の雨を見つめた。雨の日の夜に悲しくならない事が、新しい自分になったようで嬉しくなった。
だからオリビアは全く気付いていなかった。
リーテンベルク家の門の外で、雨の日のオリビアを案じて、こっそりマリウスが外套に身を包み来ていたことも、そして同じくそのことを知るもう一人の人物が、そちらもオリビアを案じて来訪しようとしてマリウスに気付いたことも、何も知らずにオリビアは、部屋で静かに本を開いていた。
◇◇◇
アレクサンドルはその日、午後のお茶を王太子夫妻と共にしていた。
王太子妃の庭で今後の話を王太子から聞かされて、それでいいのかと思い悩みながら空を見上げて気付いた。
(今夜は雨かもしれない)
緩やかな雨なら問題ないが、激しい雨ならオリビアが悲しんで泣く。
今後のアレクサンドルとオリビアにとっても、大事な話だったから尚更オリビアを思い出されたのかもしれない。
お茶の席を辞したあと、アレクサンドルは部屋に戻りながらレオナールに告げる。
「今夜、雨が激しくなったら、リーテンベルクに行く」
「⋯⋯またですか」
「今日はちゃんと訪ねる。なんせ私は婚約者だからな」
「まだですよ、議会が通ってません」
オリビアが結婚してからも、アレクサンドルは度々雨の日の夜になると、リーテンベルク邸に向かっていた。だが、結婚したオリビアの側にはいけない。門外に大きな木があり、そこからオリビアの部屋が遠くから見えるのだ。
そこに雨の日は、いつもお忍びで1時間ほど馬車を停め、オリビアの部屋の窓を見るのが通常になっていた。レオナールはいつもそれに付き合っていた。
だからアレクサンドルは気付いた。
かつて自分がいた場所に佇むマリウスに。
無視をして通り過ぎても良かったが、一言言ってやりたかった。
それに気付いたレオナールがアレクサンドルを諌める。
「無視してください」
「いや、あれではストーカーだろう。ムカつくじゃないか!」
「以前のあなたですよ」
「っ!」
「続くようなら対処します」
「⋯⋯⋯」
痛い所を突かれたアレクサンドルは声も出せずに、レオナールを睨む。
立場の逆転したマリウスとアレクサンドル。
外套が雨に濡れそぼって、身を縮めるマリウスを、惨めな男だと哀れな男だと、もう一度アレクサンドルは見やった。
打ち付ける雨が自分への罰のように感じて、甘んじて受け止めるマリウスの目の前を、家紋なしだが立派な作りの馬車が通り過ぎた。
そしてその馬車は吸い込まれるようにリーテンベルク邸の門を入って行った。
マリウスの脳裏には第三王子アレクサンドルの顔が浮かぶ。
夜会でさり気なく、オリビアの気配を読み取るその瞳が、マリウスは不快で嫌だった。
オリビアを攫われそうで苦しかった。
だがオリビアは攫われたのではなく、いつの間にか自分の手から溢れてしまった。
それは誰のせいでもなく紛れもない自分の行いが原因だった。
マリウスは後悔していた、未練タラタラだった。反省もしたつもりになっていた。そんな時自分の子がオリビアに宿っていたことを知った。
かつて安全期になったサミルと朝っぱらから、ベッドで睦みあった後、彼女に聞かされた。
『女は愛した人の子は身籠れるのよ。それがその人を愛している証拠なの』
事後に大きくなってきた腹を撫でながら言うサミルの言葉を、そんな時だけ昔の真面目なマリウスに戻って、その馬鹿げた話を信じた。
オリビアが妊娠しないのは自分を愛していないからだと勝手に決めつけた。ニセの石女の診断書を見た後だったのにもかかわらず、サミルの根拠のない戯言を当て嵌めた。
だがオリビアは身籠っていた。やはり自分を愛していたのだと歓喜に震えた。
きっとオリビアは自分を待っているはず、そう思ったのに、それから何度手紙を送っても封さえ切られずにそのまま返された。
そして先日、オリビアが心を壊してしまったのだと母経由でリーシャからの手紙を受け取った。
そして、今日。
雨の日の夜にオリビアは怯えていた。
少しでも見守りたい、何もできない自分だが見守ることだけならできるはず、そう思ってここに来た。
そんな自分に『お前の役目は終わった』とその馬車が告げたように感じた。
そしてその時マリウスは、はっきり理解した。
アレクサンドルに奪われたのではなく、すっかりマリウスの自業自得なのだと。
冷たい雨に打たれながら、マリウスはその場を立ち去った。
もう二度とオリビアには近付かない。
そう夜の雨に誓った。
夕方からポツポツと緩く小さく降り始めたそれは、オリビアが夕食後に部屋に戻ると、少し激しくなっていた。
以前なら夜の雨が窓を打ち、雨の水模様が窓に広がる様が、何だか空が泣いて窓に縋っている様で、あまり見たくなかった。
幼い頃に一度だけ、雷が怖くて寝付けずに、リーシャの部屋に匿って貰おうと行った時、そっと部屋の扉を開けたら、窓辺に立っていた母が窓辺に立っていた。
〈〈〈お母様〉〉〉
声をかけようとした瞬間、窓に手を付いたままリーシャが泣き崩れた。窓伝いに手を滑らせながら崩れるさまは哀しくて、リーシャから溢れた「ユリウスどうして」という言葉の意味は、その頃はわからなかった。ただリーシャの姿が幼いオリビアに慟哭を見せつけた。
その日からオリビアは、強い雨に打ち付けられる窓と雷が嫌いになった。
マリウスが一緒にいた頃のこんな日は、それを知る彼がずっと側に居てくれた。
それこそ、その裏で彼は、オリビアを裏切り続けていたのだが、そんな事に気付けていなかったオリビアは、それがいつも心強かった。
でも今日は⋯⋯。
「ニコル、リバー。これが一番嬉しいかも」
思わず大きな窓に手を当てて呟いてしまう。
オリビアの部屋はタウンハウスの方も改装していた。こちらもオリビアの部屋の窓が大きくなり、そこからバルコニーに出る入り口へと変わった。庇が大きく長く設けられ、雨が窓を打つことがなくなっていた。
オリビアは雨の日の物悲しさを忘れて、そこから夜の雨を見つめた。雨の日の夜に悲しくならない事が、新しい自分になったようで嬉しくなった。
だからオリビアは全く気付いていなかった。
リーテンベルク家の門の外で、雨の日のオリビアを案じて、こっそりマリウスが外套に身を包み来ていたことも、そして同じくそのことを知るもう一人の人物が、そちらもオリビアを案じて来訪しようとしてマリウスに気付いたことも、何も知らずにオリビアは、部屋で静かに本を開いていた。
◇◇◇
アレクサンドルはその日、午後のお茶を王太子夫妻と共にしていた。
王太子妃の庭で今後の話を王太子から聞かされて、それでいいのかと思い悩みながら空を見上げて気付いた。
(今夜は雨かもしれない)
緩やかな雨なら問題ないが、激しい雨ならオリビアが悲しんで泣く。
今後のアレクサンドルとオリビアにとっても、大事な話だったから尚更オリビアを思い出されたのかもしれない。
お茶の席を辞したあと、アレクサンドルは部屋に戻りながらレオナールに告げる。
「今夜、雨が激しくなったら、リーテンベルクに行く」
「⋯⋯またですか」
「今日はちゃんと訪ねる。なんせ私は婚約者だからな」
「まだですよ、議会が通ってません」
オリビアが結婚してからも、アレクサンドルは度々雨の日の夜になると、リーテンベルク邸に向かっていた。だが、結婚したオリビアの側にはいけない。門外に大きな木があり、そこからオリビアの部屋が遠くから見えるのだ。
そこに雨の日は、いつもお忍びで1時間ほど馬車を停め、オリビアの部屋の窓を見るのが通常になっていた。レオナールはいつもそれに付き合っていた。
だからアレクサンドルは気付いた。
かつて自分がいた場所に佇むマリウスに。
無視をして通り過ぎても良かったが、一言言ってやりたかった。
それに気付いたレオナールがアレクサンドルを諌める。
「無視してください」
「いや、あれではストーカーだろう。ムカつくじゃないか!」
「以前のあなたですよ」
「っ!」
「続くようなら対処します」
「⋯⋯⋯」
痛い所を突かれたアレクサンドルは声も出せずに、レオナールを睨む。
立場の逆転したマリウスとアレクサンドル。
外套が雨に濡れそぼって、身を縮めるマリウスを、惨めな男だと哀れな男だと、もう一度アレクサンドルは見やった。
打ち付ける雨が自分への罰のように感じて、甘んじて受け止めるマリウスの目の前を、家紋なしだが立派な作りの馬車が通り過ぎた。
そしてその馬車は吸い込まれるようにリーテンベルク邸の門を入って行った。
マリウスの脳裏には第三王子アレクサンドルの顔が浮かぶ。
夜会でさり気なく、オリビアの気配を読み取るその瞳が、マリウスは不快で嫌だった。
オリビアを攫われそうで苦しかった。
だがオリビアは攫われたのではなく、いつの間にか自分の手から溢れてしまった。
それは誰のせいでもなく紛れもない自分の行いが原因だった。
マリウスは後悔していた、未練タラタラだった。反省もしたつもりになっていた。そんな時自分の子がオリビアに宿っていたことを知った。
かつて安全期になったサミルと朝っぱらから、ベッドで睦みあった後、彼女に聞かされた。
『女は愛した人の子は身籠れるのよ。それがその人を愛している証拠なの』
事後に大きくなってきた腹を撫でながら言うサミルの言葉を、そんな時だけ昔の真面目なマリウスに戻って、その馬鹿げた話を信じた。
オリビアが妊娠しないのは自分を愛していないからだと勝手に決めつけた。ニセの石女の診断書を見た後だったのにもかかわらず、サミルの根拠のない戯言を当て嵌めた。
だがオリビアは身籠っていた。やはり自分を愛していたのだと歓喜に震えた。
きっとオリビアは自分を待っているはず、そう思ったのに、それから何度手紙を送っても封さえ切られずにそのまま返された。
そして先日、オリビアが心を壊してしまったのだと母経由でリーシャからの手紙を受け取った。
そして、今日。
雨の日の夜にオリビアは怯えていた。
少しでも見守りたい、何もできない自分だが見守ることだけならできるはず、そう思ってここに来た。
そんな自分に『お前の役目は終わった』とその馬車が告げたように感じた。
そしてその時マリウスは、はっきり理解した。
アレクサンドルに奪われたのではなく、すっかりマリウスの自業自得なのだと。
冷たい雨に打たれながら、マリウスはその場を立ち去った。
もう二度とオリビアには近付かない。
そう夜の雨に誓った。
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