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「なんでお前がここにいるんだ!」
ユリウスの一言目には怒りのみが表れていた。
怒る権利は彼にはないというのに。
リーシャは再び嘲笑の笑みを顔に浮かべる。
「ごきげんよう、ユーリでしたかしら?貴方平民になったというのに、その物言いは改めた方がいいわよ」
リーシャはユリウスの怒鳴り声にも臆することなく言葉を放った。そんなリーシャの態度にユリウスは怯む。それでも気を取り直して蒼白な妻の隣に腰掛けた。
「大丈夫か?チア?」
ミルチア=チア
なんとも簡単な偽名にリーシャは「ふふふ」とまた笑う。
その声で馬鹿にされたと感じたユリウスは、キッとリーシャを睨んだ。が、ちっとも怖くないとリーシャもシュゼットさえも思った。
「またそんな怖い顔をして、貴方はオリビアが生まれてからずっとそんな顔をしていたわね」
オリビアの名を出すと少しだけユリウスの顔に動揺が浮かんだ。
彼はオリビアには少しは悪いと思っているのだろうとリーシャは感じる。だが感じるだけで許すことはなかった。
「それでは揃ったことですし、話を進めますわね。ミルチアさんが何をしに来たのかとわたしに先程お尋ねになったことですし?」
「あっ、や、止めて!」
蒼白な顔でミルチアがリーシャに懇願するが、リーシャは容赦するつもりはなかった。そしてユリウスは、ミルチアの異変に驚く。
「チア、どうしたんだ?こいつに何かされたのか?そんなに怖がって」
ユリウスがこいつと言った途端、護衛達が剣に手をかけたが、リーシャが手を上げてそれを制した。護衛が剣を抜きかけたその音に、ユリウスは少しだけ肩が上がった。
以前リーテンベルク侯爵だった威厳が、ほんの1ミリほど彼に残っていたのだろうと、リーシャは意外に思った。てっきりすっかり爛れた生活を送っていると思っていたからだ。
─まぁそんな事はどうでもいい─
リーシャは以前オリビアに見せた三枚の書類とは別に、もう二枚書類を足してユリウスの前に置いた。
「何だ?」
訝しげにそれを見つめリーシャの顔を見るユリウス。
「待って!見ないで!」
彼がその書類を手に取ろうとした途端、ミルチアが何の書類か気付き、その手を制して自分が取り、破こうとした。が、その手は止まる。リーシャが連れてきた護衛がミルチアの喉元に剣を向けたからだった。
「それ破いてしまったら、不敬罪で貴方即座に死ぬわよ」
「ヒッ!」
リーシャの言葉にミルチアは恐怖の声とともに息をのんだ。
ユリウスは、初めて見る元妻リーシャの威厳に満ちた声と態度に憮然としながらも、ミルチアの手にあった書類に目を通した。
その書類はオリビアとユリウスの親子鑑定書が二枚。
そしてユリウスに子種がない証明書がニ枚。
リーシャとトルサー国王の血縁鑑定書が一枚だった。
全てに目を通したユリウスは手が震える。
「ど、どういうことだ?!」
先程とは打って変わって、怯えた表情でリーシャを見るユリウスに笑ってしまう。
「どういうも何も、それが全てよ。貴方は医師ロックマン・アローとそこのミルチアに騙された。ただそれだけよ」
リーシャが肩を竦めて、引き攣った顔のユリウスに告げた。
✎ ------------------------
※本日もう一話更新します
ユリウスの一言目には怒りのみが表れていた。
怒る権利は彼にはないというのに。
リーシャは再び嘲笑の笑みを顔に浮かべる。
「ごきげんよう、ユーリでしたかしら?貴方平民になったというのに、その物言いは改めた方がいいわよ」
リーシャはユリウスの怒鳴り声にも臆することなく言葉を放った。そんなリーシャの態度にユリウスは怯む。それでも気を取り直して蒼白な妻の隣に腰掛けた。
「大丈夫か?チア?」
ミルチア=チア
なんとも簡単な偽名にリーシャは「ふふふ」とまた笑う。
その声で馬鹿にされたと感じたユリウスは、キッとリーシャを睨んだ。が、ちっとも怖くないとリーシャもシュゼットさえも思った。
「またそんな怖い顔をして、貴方はオリビアが生まれてからずっとそんな顔をしていたわね」
オリビアの名を出すと少しだけユリウスの顔に動揺が浮かんだ。
彼はオリビアには少しは悪いと思っているのだろうとリーシャは感じる。だが感じるだけで許すことはなかった。
「それでは揃ったことですし、話を進めますわね。ミルチアさんが何をしに来たのかとわたしに先程お尋ねになったことですし?」
「あっ、や、止めて!」
蒼白な顔でミルチアがリーシャに懇願するが、リーシャは容赦するつもりはなかった。そしてユリウスは、ミルチアの異変に驚く。
「チア、どうしたんだ?こいつに何かされたのか?そんなに怖がって」
ユリウスがこいつと言った途端、護衛達が剣に手をかけたが、リーシャが手を上げてそれを制した。護衛が剣を抜きかけたその音に、ユリウスは少しだけ肩が上がった。
以前リーテンベルク侯爵だった威厳が、ほんの1ミリほど彼に残っていたのだろうと、リーシャは意外に思った。てっきりすっかり爛れた生活を送っていると思っていたからだ。
─まぁそんな事はどうでもいい─
リーシャは以前オリビアに見せた三枚の書類とは別に、もう二枚書類を足してユリウスの前に置いた。
「何だ?」
訝しげにそれを見つめリーシャの顔を見るユリウス。
「待って!見ないで!」
彼がその書類を手に取ろうとした途端、ミルチアが何の書類か気付き、その手を制して自分が取り、破こうとした。が、その手は止まる。リーシャが連れてきた護衛がミルチアの喉元に剣を向けたからだった。
「それ破いてしまったら、不敬罪で貴方即座に死ぬわよ」
「ヒッ!」
リーシャの言葉にミルチアは恐怖の声とともに息をのんだ。
ユリウスは、初めて見る元妻リーシャの威厳に満ちた声と態度に憮然としながらも、ミルチアの手にあった書類に目を通した。
その書類はオリビアとユリウスの親子鑑定書が二枚。
そしてユリウスに子種がない証明書がニ枚。
リーシャとトルサー国王の血縁鑑定書が一枚だった。
全てに目を通したユリウスは手が震える。
「ど、どういうことだ?!」
先程とは打って変わって、怯えた表情でリーシャを見るユリウスに笑ってしまう。
「どういうも何も、それが全てよ。貴方は医師ロックマン・アローとそこのミルチアに騙された。ただそれだけよ」
リーシャが肩を竦めて、引き攣った顔のユリウスに告げた。
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