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ユリウスの呆然とした顔を見つめるリーシャ。
この顔を見れただけで彼女の復讐心は満足だった。
妻を信じきれない夫が、上辺だけの同情心と甘言に惑わされ全てを失った。
ユリウスが失ったのは金銭的なものではない。
約23年前にオリビアを妊娠中の妻への猜疑心から、サリオンに、ロックマンに、ミルチアに騙されたと知った。
彼が信じて生きてきた物が全て嘘だった。
信じていた者に裏切られる絶望。
ユリウスがかつて、リーシャとオリビアに与えた絶望を今自身が味わっていた。
「気分はどう?ミルチアさん」
昔々、リーシャに自分が放った言葉を、ミルチアは返されたという事に気付いただろうか?
だが、ミルチアの耳にはリーシャの言葉は入ってこなかった。
以前と違ってミルチアは足元が危うい。
この国に頼れるべき人は少ないため、今ユリウスに捨てられたら、ミルチアは生活が立ちいかなくなるのだ。
ましてや子供たちを抱えてなど想像すらしたくなかった。ユリウスをどう丸め込もうか、その事で頭がいっぱいでリーシャの言葉は空を切っていた。
反応のないミルチア、呆然としたユリウス。
そしてもうここには用のないリーシャ。
「ふぅー」
大きく深呼吸
今日は何度この行為を繰り返したか、数え切れていないリーシャだった。
「リー⋯⋯⋯シャ」
小さく消え入りそうな声がした。
その方に目を向けるとユリウスが、先程とは打って変わって懇願しているのが見て取れた。この期に及んでユリウスはリーシャに何を望むと言うのだろうか?
「お、私の勘違いなのか?」
「⋯そうね、それに関しては私達も勘違いしていたの。貴方は知っていると思っていたから。まさかお義父様とお義母様がそんな中途半端な説明をしているなんて思いもしなかったわ」
二人の会話が分からないミルチアは、ぼんやりと聞いていた。そんなミルチアに一瞬目を向けたリーシャだったが、この先の未来で彼女は捕縛される。だからこそ、もう一度絶望させてしまおうと、リーシャは彼女の前で躊躇いなく告げようと思った。
「シュゼ、そこの護衛の方と部屋の外に出てくれないかしら?」
親友を巻き込まないようにリーシャは声をかけた。
残る護衛は近衛であるから、彼なら問題ない。もう一人の護衛をリーシャは初めて見るので、彼にも念の為引いてもらうことにした。
心配ではあったが、身内の話だろうと辺りをつけたシュゼットは、すぐに頷いて部屋の外へと出て行った。
ユリウスの異父弟サリオンの供述で、リーシャと陛下は初めて彼等が、きちんと真実を知らなかったのだと分かった。
ユリウスの両親である元リーテンベルク侯爵夫妻は、リーシャの事を王家の親族と子供達に説明していた。
親族と兄妹ではその性質が違う。
だからこそユリウスは仲の良い王太子(現国王)とリーシャの仲を疑ったのだ。
そして、そのサリオンの供述で、リーシャはユリウスが、何故オリビアとの親子鑑定をしたのか理解した。
陛下とリーシャとの子だと思ったのだ。
正確に鑑定すれば、オリビアと陛下も血縁関係になるかもしれないが、かなり確率は低くなる。
ユリウスが疑ったようにリーシャとトルサー国王の血が従兄妹であるなら、もっと低い。
だが、リーシャと陛下は異母兄弟だから、親族でもかなり親しい鑑定が出る。
その確率はオリビアとの親子鑑定をしたユリウスなら、しっかりと気付くはずだ。
「まさか⋯兄妹だなんて⋯それを知っていたら俺は!」
「私の母が命をかけて守った物を、浮気の免罪符にしないでもらえるかしら?」
リーシャは、ユリウスにピシャリと言った。
喩え勘違いしたとしても、ユリウスが浮気をしたことには変わりない。
リーシャがしたから自分もなんて言い訳は、勘違いしていたとしても通用はしないのだ。
それなのに、彼はずっとそう言い続けていた。
リーシャがユリウスに憎悪を持ったのは、そんな言葉を吐かれた時だった。
「貴方が信じる真実なんて全て紛い物よ。でも貴方とそこのミルチアさんは真実の愛で結ばれたのでしょう?だからこんな事実があっても変わらないはず。ねぇユリウスそうでしょう?」
ユリウスは、自分に子が作れなくなった事も、その原因が元妻リーシャの仕組んだことだという事も今初めて知った。
彼の隣のミルチアは、玉璽のある書類とユリウスとリーシャの会話で、自分が何を聞かされたのか分かった。そしてシュゼットと護衛の一人が、この場を離されたことを理解して、体の震えが止まらなくなった。
『王家の秘密』を知らされた自分はどうなってしまうのか?
ユリウスに捨てられるどころではないことを知り絶望した。
この顔を見れただけで彼女の復讐心は満足だった。
妻を信じきれない夫が、上辺だけの同情心と甘言に惑わされ全てを失った。
ユリウスが失ったのは金銭的なものではない。
約23年前にオリビアを妊娠中の妻への猜疑心から、サリオンに、ロックマンに、ミルチアに騙されたと知った。
彼が信じて生きてきた物が全て嘘だった。
信じていた者に裏切られる絶望。
ユリウスがかつて、リーシャとオリビアに与えた絶望を今自身が味わっていた。
「気分はどう?ミルチアさん」
昔々、リーシャに自分が放った言葉を、ミルチアは返されたという事に気付いただろうか?
だが、ミルチアの耳にはリーシャの言葉は入ってこなかった。
以前と違ってミルチアは足元が危うい。
この国に頼れるべき人は少ないため、今ユリウスに捨てられたら、ミルチアは生活が立ちいかなくなるのだ。
ましてや子供たちを抱えてなど想像すらしたくなかった。ユリウスをどう丸め込もうか、その事で頭がいっぱいでリーシャの言葉は空を切っていた。
反応のないミルチア、呆然としたユリウス。
そしてもうここには用のないリーシャ。
「ふぅー」
大きく深呼吸
今日は何度この行為を繰り返したか、数え切れていないリーシャだった。
「リー⋯⋯⋯シャ」
小さく消え入りそうな声がした。
その方に目を向けるとユリウスが、先程とは打って変わって懇願しているのが見て取れた。この期に及んでユリウスはリーシャに何を望むと言うのだろうか?
「お、私の勘違いなのか?」
「⋯そうね、それに関しては私達も勘違いしていたの。貴方は知っていると思っていたから。まさかお義父様とお義母様がそんな中途半端な説明をしているなんて思いもしなかったわ」
二人の会話が分からないミルチアは、ぼんやりと聞いていた。そんなミルチアに一瞬目を向けたリーシャだったが、この先の未来で彼女は捕縛される。だからこそ、もう一度絶望させてしまおうと、リーシャは彼女の前で躊躇いなく告げようと思った。
「シュゼ、そこの護衛の方と部屋の外に出てくれないかしら?」
親友を巻き込まないようにリーシャは声をかけた。
残る護衛は近衛であるから、彼なら問題ない。もう一人の護衛をリーシャは初めて見るので、彼にも念の為引いてもらうことにした。
心配ではあったが、身内の話だろうと辺りをつけたシュゼットは、すぐに頷いて部屋の外へと出て行った。
ユリウスの異父弟サリオンの供述で、リーシャと陛下は初めて彼等が、きちんと真実を知らなかったのだと分かった。
ユリウスの両親である元リーテンベルク侯爵夫妻は、リーシャの事を王家の親族と子供達に説明していた。
親族と兄妹ではその性質が違う。
だからこそユリウスは仲の良い王太子(現国王)とリーシャの仲を疑ったのだ。
そして、そのサリオンの供述で、リーシャはユリウスが、何故オリビアとの親子鑑定をしたのか理解した。
陛下とリーシャとの子だと思ったのだ。
正確に鑑定すれば、オリビアと陛下も血縁関係になるかもしれないが、かなり確率は低くなる。
ユリウスが疑ったようにリーシャとトルサー国王の血が従兄妹であるなら、もっと低い。
だが、リーシャと陛下は異母兄弟だから、親族でもかなり親しい鑑定が出る。
その確率はオリビアとの親子鑑定をしたユリウスなら、しっかりと気付くはずだ。
「まさか⋯兄妹だなんて⋯それを知っていたら俺は!」
「私の母が命をかけて守った物を、浮気の免罪符にしないでもらえるかしら?」
リーシャは、ユリウスにピシャリと言った。
喩え勘違いしたとしても、ユリウスが浮気をしたことには変わりない。
リーシャがしたから自分もなんて言い訳は、勘違いしていたとしても通用はしないのだ。
それなのに、彼はずっとそう言い続けていた。
リーシャがユリウスに憎悪を持ったのは、そんな言葉を吐かれた時だった。
「貴方が信じる真実なんて全て紛い物よ。でも貴方とそこのミルチアさんは真実の愛で結ばれたのでしょう?だからこんな事実があっても変わらないはず。ねぇユリウスそうでしょう?」
ユリウスは、自分に子が作れなくなった事も、その原因が元妻リーシャの仕組んだことだという事も今初めて知った。
彼の隣のミルチアは、玉璽のある書類とユリウスとリーシャの会話で、自分が何を聞かされたのか分かった。そしてシュゼットと護衛の一人が、この場を離されたことを理解して、体の震えが止まらなくなった。
『王家の秘密』を知らされた自分はどうなってしまうのか?
ユリウスに捨てられるどころではないことを知り絶望した。
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