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震えるミルチアを目の端に捉えながら、リーシャは静かに二人へ語った。
「ロックマンの身柄はトルサー王家が拘束しているわ。それがどういう意味かわかるかしら?」
「「!」」
「彼の罪は書類偽造」
罪状を聞いたミルチアがホッと息を吐いたことにリーシャは気付いた。ユリウスは何のことかまだ分かっていない。
オリビアとユリウスの親子鑑定書が、テーブルの上に二枚置いてある。一枚はユリウスがロックマンに依頼した物。もう一枚は別の医師のサインがあるが、どちらも鑑定結果は同じだった。
「何の書類なんだ?」
ユリウスの訝しげな顔にリーシャは吐き捨てる様に告げた。
「オリビアが子を成せないと嘘の書類を作成していたわ」
「は?」
「そのせいで結果的にオリビアは流産したの。一度捉えて国外に出した者をサリオンが入国させていたわ。そこの女とマイナの手引でね」
リーシャの顔には怒りのみが表れていた。
そんな顔をユリウスは一度たりとも見たことがなかった。だが、それよりもどうして子が成せないと嘘の書類が必要だったのか、ユリウスは解せなかった。
「貴方と同じ手口でマリウスも騙されて、結局浮気をしたのよ」
「なっ!」
「ねぇユリウス。貴方子供の顔をちゃんと見てあげてるの?どうして気付かないのかしら?不思議で堪らないわ」
「あっ、あっ、」
ユリウスは言葉をなくしていた。
リーシャと陛下は恋人だと思っていたら兄妹だった。
そしてロックマンとミルチアが兄妹だと信じていたのに恋人だった。
そしてユリウスはオリビアを可愛がっていたつもりだった。娘の不幸なんて決して望んではいなかった。
意図してもしなくとも、その真実がユリウスの胸を襲った。
「うっ!」
突然倒れたユリウスを呆然と見るリーシャ。
するとミルチアがその隙に逃げようと立ち上がった。だがそんな彼女を素早く近衛が後ろ手で拘束した。
「中に入れ!!」
先程外に出した護衛を近衛騎士が呼ぶ。シュゼットと護衛が再び部屋に入ってきた。
胸を押さえソファの背凭れに倒れ掛かっているユリウスを見て、シュゼットが走り出した。
リーシャは動けなかった。
側に行くことが出来なかった。
どれくらいの時間が経過したのかは分からないが、シュゼットが見知らぬ人を連れてやって来た。
その様子が視界に入ったあと、リーシャも意識を手放していた。
◇◇◇
ユリウスは心臓発作だった。
命は取り留めたものの、まだ予断を許さなかった。
ミルチアは、今他の護衛達に拘束されたままトルサー王国に向かっている。
二人の子供は、近所の人が見ていると聞いた。
リーシャは蒼白で目を閉じたままのユリウスを傍らで眺めながら、近衛の説明を聞いていた。
そんなリーシャの肩にシュゼットがそっと手を添える。
「リーシャ貴方も倒れたのよ、緊張の糸が切れてしまったのよ。それだけ気を張っていたのね。だから⋯ちゃんと休んで」
座っていたリーシャは、シュゼットの優しい言葉に振り返って見上げた。
リーシャの瞳には涙が浮かんでいた。
「⋯⋯⋯憎んでいるのよ」
「⋯⋯えぇ分かっているわ。貴方は憎んでいいのよ、それだけの事をその人はしたのだから」
肩に添えられている優しい手に、リーシャは自分の手を重ねて俯いた。
ずっとずっと憎んでいた男が、哀れな自分に気付いて倒れた。それを目の当たりにして、ザマァ見ろと、リーシャには思えなかった。
どうしてなのか分からない
まだユリウスに対して気持ちが残っているわけではない、そう思いたい。
リーシャは復讐をして満足したのは、一瞬だけだったと、眠ってるユリウスを見てそう思った。
「これから、貴方はどれくらい後悔してくれるのかしら?それとも後悔なんてしないのかしら?」
リーシャの呟きに、シュゼットは言いようのない虚しさを感じた。
「ロックマンの身柄はトルサー王家が拘束しているわ。それがどういう意味かわかるかしら?」
「「!」」
「彼の罪は書類偽造」
罪状を聞いたミルチアがホッと息を吐いたことにリーシャは気付いた。ユリウスは何のことかまだ分かっていない。
オリビアとユリウスの親子鑑定書が、テーブルの上に二枚置いてある。一枚はユリウスがロックマンに依頼した物。もう一枚は別の医師のサインがあるが、どちらも鑑定結果は同じだった。
「何の書類なんだ?」
ユリウスの訝しげな顔にリーシャは吐き捨てる様に告げた。
「オリビアが子を成せないと嘘の書類を作成していたわ」
「は?」
「そのせいで結果的にオリビアは流産したの。一度捉えて国外に出した者をサリオンが入国させていたわ。そこの女とマイナの手引でね」
リーシャの顔には怒りのみが表れていた。
そんな顔をユリウスは一度たりとも見たことがなかった。だが、それよりもどうして子が成せないと嘘の書類が必要だったのか、ユリウスは解せなかった。
「貴方と同じ手口でマリウスも騙されて、結局浮気をしたのよ」
「なっ!」
「ねぇユリウス。貴方子供の顔をちゃんと見てあげてるの?どうして気付かないのかしら?不思議で堪らないわ」
「あっ、あっ、」
ユリウスは言葉をなくしていた。
リーシャと陛下は恋人だと思っていたら兄妹だった。
そしてロックマンとミルチアが兄妹だと信じていたのに恋人だった。
そしてユリウスはオリビアを可愛がっていたつもりだった。娘の不幸なんて決して望んではいなかった。
意図してもしなくとも、その真実がユリウスの胸を襲った。
「うっ!」
突然倒れたユリウスを呆然と見るリーシャ。
するとミルチアがその隙に逃げようと立ち上がった。だがそんな彼女を素早く近衛が後ろ手で拘束した。
「中に入れ!!」
先程外に出した護衛を近衛騎士が呼ぶ。シュゼットと護衛が再び部屋に入ってきた。
胸を押さえソファの背凭れに倒れ掛かっているユリウスを見て、シュゼットが走り出した。
リーシャは動けなかった。
側に行くことが出来なかった。
どれくらいの時間が経過したのかは分からないが、シュゼットが見知らぬ人を連れてやって来た。
その様子が視界に入ったあと、リーシャも意識を手放していた。
◇◇◇
ユリウスは心臓発作だった。
命は取り留めたものの、まだ予断を許さなかった。
ミルチアは、今他の護衛達に拘束されたままトルサー王国に向かっている。
二人の子供は、近所の人が見ていると聞いた。
リーシャは蒼白で目を閉じたままのユリウスを傍らで眺めながら、近衛の説明を聞いていた。
そんなリーシャの肩にシュゼットがそっと手を添える。
「リーシャ貴方も倒れたのよ、緊張の糸が切れてしまったのよ。それだけ気を張っていたのね。だから⋯ちゃんと休んで」
座っていたリーシャは、シュゼットの優しい言葉に振り返って見上げた。
リーシャの瞳には涙が浮かんでいた。
「⋯⋯⋯憎んでいるのよ」
「⋯⋯えぇ分かっているわ。貴方は憎んでいいのよ、それだけの事をその人はしたのだから」
肩に添えられている優しい手に、リーシャは自分の手を重ねて俯いた。
ずっとずっと憎んでいた男が、哀れな自分に気付いて倒れた。それを目の当たりにして、ザマァ見ろと、リーシャには思えなかった。
どうしてなのか分からない
まだユリウスに対して気持ちが残っているわけではない、そう思いたい。
リーシャは復讐をして満足したのは、一瞬だけだったと、眠ってるユリウスを見てそう思った。
「これから、貴方はどれくらい後悔してくれるのかしら?それとも後悔なんてしないのかしら?」
リーシャの呟きに、シュゼットは言いようのない虚しさを感じた。
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