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第一章 公爵夫人になりました
皆さん侮ることなかれ
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「奥様、アディル奥様。おはようございます。
朝にございます」
う、ん⋯ここへ来て3日目、そんなに長く寝てしまったのかしら。
頭が働かないまま、何とか起き上がろうと試みるけど体に力が入らない。
頭をフルフルふると昨夜の長話が脳内をかけ巡る。
本当に面倒な事を押し付けてくれたわ⋯⋯ふぅ。
昨夜魔力供給の為にサンディル様の部屋に行ったとき、ドーランから確定済みの間諜を3名教えてもらったのだけど、確定してないのも含めたら一体何人送られてるのかしら?と嫌味を言うと、5人程はウィルハイム様に付いて行ったそうです。
へぇ~これでも減ったのね。
調理場に一人、侍女に二人。
しかも一人は今目の前で洗顔用の器をいそいそ用意しているマリー。
何故来たばかりの私が彼女の見張り役なの?
ドーラン幾ら魔力持ちが少ないからと言って主の妻を使うなんて。
腹黒そうな見た感じも彼の方が間諜みたいなんですけど⋯⋯。
いけない、いけない偏見にいい事はないわ。
さてと見張りといっても魔力の流れを見るだけだから大した事ないけど、どんな子かしらね。
彼女は私付きのまとめ役だと言ってたけど。
顔を洗ったらスッキリしてやっと頭が正常に働き始める。
「奥様こちらを用意致しました」
マリーは首の詰まった白いブラウスとブルーのフレアスカートを両手に持ち、私の目の前に出してきた。
昨日のローリーとは大違い、彼女の仕事ぶりでまとめ役に指名されたのかしら。
「私がそれを着ると言ったかしら?」
マリーが目を見開いて私を見やる。
「あっ、申し訳ございません。お気に召しませんでしたか、私のセンスは大変良いと侍女長様に太鼓判を押されていますので、変更なさるとは思いませんでした。
失礼いたしました」
減点いち。
「では他を用意しますので少々お待ちくださいませ」
今度はデコルテラインに薄いフリルの着いたワンピースを選んできた。
そうではない。
まさか私が指導しなければいけないのかしら?
この娘まとめ役よね。再度、脳内で確認するけど、昨日言ってたものね。ハァ⋯⋯昨日からため息だらけだわ。
「マリーは専属になった事はあるかしら?
前の伯爵家とかではどうだったのかしら?」
努めて優しく問うてみたんだけれどお気に召さなかったみたい。
「アッパール伯爵家ではお嬢様の専属でした。
何故そのような事を聞かれるのですか?」
減点にー。
朝から侍女との攻防は面倒くさいなぁ。
指導なんて自分からするならともかく人に言われてするなんて私には無理だわ。
とりあえず黙ってやり過ごしてテモシーに苦言だわ。
「そう。その服でいいわ、髪は⋯⋯」
「私にお任せください」
「⋯⋯ではお願い」
ワンピースを着せてもらいドレッサーの前に座ると、髪を梳いてゆく、その際に何故か風魔法かしらフワッと下から風を送っていた。
その後、両サイドの髪をそれぞれ編み込み後ろの髪と合わせて纏めていく。
今日は外出の予定はないわよねと問いかけると、
「奥様はまだ16歳とお若いので、周りに侮られないようにしないとなりませんから少し大人っぽく仕上げました」
その後は靴も勝手に持って来る、行くとも言っていないのに食堂に案内する。
朝食の飲み物も聞かずに勝手に紅茶を持ってきた。
昨日の朝テモシーが入れてくれたお茶ね。
朝食を済ませた後、給仕が椅子を引いてくれて立ち上がると、
「奥様図書室に案内しますね」
いつの間にか昨日図書室から持ち出した3冊の本をマリーが手にしているのが見える。
「奥様、図書室から勝手に持ち出してはいけませんよ。おじょ⋯司書のスノー様が困っていらっしゃいました、まだこちらにお越しになったばかりですので公爵家のやり方に慣れていないと思いますので、今後は私が教えて差し上げますね。何でもわからない事は聞いてくださいませ」
「⋯⋯そう、よろしくね」
「はい、お任せください。
先程お気づきになられたと思いますが私魔法が使えますので、急に風がきてびっくりされたと思いますが危険な魔法ではないので大丈夫ですから、安心されて下さいね」
ローリーとの引き継ぎなどはしてないのね。
そろそろ我慢が出来なそうなんだけど、これはテモシーからの試練かしら?
このまま付いていったらまた不愉快な人に会わなければならないわね。
この娘が間諜なら、とんでもなく間抜けなのだけど、これはひょっとしてワザとこの態度なのかしら?
色々思考してたら図書室に着いてしまったわ。
あ~あ、またため息が出そうなのだけどどうしたものかと思案していると前からドーランが急ぎ足で近づいてくる。
「奥様、おはようございます。
こちらにいらしたのですね、探しておりました。使用人の朝のご挨拶をさせていただきたいのですが、今よろしいでしょうか?」
「ええ、案内して頂戴」
ドーランの案内で他の部屋よりも少し大きめな扉の前に連れて来られた。
扉を、部屋の前に居た騎士が開くとそこには3列に長テーブルが置かれ、4人ずつ座っていた。
「奥様此処にいる者は、メイナード公爵家にて執務を担当している者達です。
前から本邸、別宅、領地と担当別に座らせております。
通常は本邸の担当のみが此処で執務を行ってますが、各邸で蜜に連携を取るために頻繁に使いが来ますので全員を呼びました。
お手数をおかけしてたいへん申し訳ありませんがご挨拶させて頂いても宜しいでしょうか?」
「解ったわ、どうぞ」
長テーブルのかなり前に2段ほど高くなっている段上にソファが用意されていたのでそこに座らされてドーランの話を聞いてたけど、領地から来てるのに挨拶させずに帰すなんてできないわよ。
総勢12名、記憶しておかないといけないのかしら?
私執務はまだしなくて良かったはずなんだけどドーランは聞いてないのかしら?
各担当の最初に挨拶する人が執務長のはずよね。
その方たちの名前だけ記憶して他は魔法で印を付けておこう。
担当ごとに色変えしましょう。これで大丈夫。
私は魔力を色素化出来る。
子供の頃は三色だけだったけど今は色んな色を付ける事ができるの。
今回は全員の耳に付けたわ。
これって何魔法になるのかしらね?
全員の挨拶の後、マリーとドーランを連れてテモシーの執務室に案内してもらった。
「奥様おはようございます。どうされましたか?」
「侍女の変更を求めるわ」
「なんと⋯⋯⋯。」
びっくりしてるドーランとテモシーを他所に自分の事だと気づいてないのか、それともこれを想定して態とあの態度だったのか、マリーは本を片手に後ろに控えたままでこちらを涼しい顔で見ていた。
「何かありましたか?」
「テモシー、私の歳は幾つと聞いてるのかしら?」
「16歳と聞いております」
「そうよね。その事で問題でもあったかしら?」
「いえ、何も問題などございません」
「そう。問題でもあったのかと思ったんだけど違うのね。では私は公爵夫人として此処にいるということよね」
「左様でございます」
「それではマリーは公爵夫人の侍女には相応しくないわ。配置換えをお願い。それと申し訳ないけどローリーとアンナを呼んで頂戴」
「奥様!なぜですか?
私のどこが相応しくないのでしょうか!」
「全てよ。テモシー、二人が来るまで此処にいるわね」
「畏まりました。直ぐに」
テモシーは隅に控えていた者に合図を送ると私に問う。
「奥様、侍女長は呼ばなくてもよろしいですか?」
「呼ばなくてもいいわよ。未だに挨拶に来ない侍女長を私は認めないので」
「ええっ!旦那様は侍女長の紹介もされてないのですか」
「ええ、そうね。また忘れているのかしらフフフ。
テモシーからもされてないわよ」
「申し訳ありません、私の失態ですね。侍女長からも何も言ってこないので、てっきり侍女長の紹介を先にして私の方を忘れていたのかと⋯⋯。いえ私が気づかなければなりませんでした。昨日から奥様には失態ばかりお見せしてお恥ずかしい限りで御座います」
そのまま床に頭が付くんじゃないかと言うくらいテモシーが詫てる横でドーランは苦虫を噛み潰したような顔をしているけれど、何故?
あぁ監視を私に押し付けてたわね。そんなの知らないわ。
さぁてと、やはり私はかなりの使用人から侮られているみたいね。
やはり公爵が影武者であるのは此処にとっても良くなかったようだわ。
色んな事を真似ても威厳は培われて行くモノだもの。
マーク様では若干役不足だったみたい。よく7年持ったわね。
暫くは様子見のつもりだったけれど、私が快適に過ごす為にも動かないと行けないようだわ。
ドーランにウィルハイム様へ先触れを出すように指示しました。
マリーあなたの思惑に乗ってあげるわ。
さて王弟様はどんな話しを聞かせるつもりかしら?
朝にございます」
う、ん⋯ここへ来て3日目、そんなに長く寝てしまったのかしら。
頭が働かないまま、何とか起き上がろうと試みるけど体に力が入らない。
頭をフルフルふると昨夜の長話が脳内をかけ巡る。
本当に面倒な事を押し付けてくれたわ⋯⋯ふぅ。
昨夜魔力供給の為にサンディル様の部屋に行ったとき、ドーランから確定済みの間諜を3名教えてもらったのだけど、確定してないのも含めたら一体何人送られてるのかしら?と嫌味を言うと、5人程はウィルハイム様に付いて行ったそうです。
へぇ~これでも減ったのね。
調理場に一人、侍女に二人。
しかも一人は今目の前で洗顔用の器をいそいそ用意しているマリー。
何故来たばかりの私が彼女の見張り役なの?
ドーラン幾ら魔力持ちが少ないからと言って主の妻を使うなんて。
腹黒そうな見た感じも彼の方が間諜みたいなんですけど⋯⋯。
いけない、いけない偏見にいい事はないわ。
さてと見張りといっても魔力の流れを見るだけだから大した事ないけど、どんな子かしらね。
彼女は私付きのまとめ役だと言ってたけど。
顔を洗ったらスッキリしてやっと頭が正常に働き始める。
「奥様こちらを用意致しました」
マリーは首の詰まった白いブラウスとブルーのフレアスカートを両手に持ち、私の目の前に出してきた。
昨日のローリーとは大違い、彼女の仕事ぶりでまとめ役に指名されたのかしら。
「私がそれを着ると言ったかしら?」
マリーが目を見開いて私を見やる。
「あっ、申し訳ございません。お気に召しませんでしたか、私のセンスは大変良いと侍女長様に太鼓判を押されていますので、変更なさるとは思いませんでした。
失礼いたしました」
減点いち。
「では他を用意しますので少々お待ちくださいませ」
今度はデコルテラインに薄いフリルの着いたワンピースを選んできた。
そうではない。
まさか私が指導しなければいけないのかしら?
この娘まとめ役よね。再度、脳内で確認するけど、昨日言ってたものね。ハァ⋯⋯昨日からため息だらけだわ。
「マリーは専属になった事はあるかしら?
前の伯爵家とかではどうだったのかしら?」
努めて優しく問うてみたんだけれどお気に召さなかったみたい。
「アッパール伯爵家ではお嬢様の専属でした。
何故そのような事を聞かれるのですか?」
減点にー。
朝から侍女との攻防は面倒くさいなぁ。
指導なんて自分からするならともかく人に言われてするなんて私には無理だわ。
とりあえず黙ってやり過ごしてテモシーに苦言だわ。
「そう。その服でいいわ、髪は⋯⋯」
「私にお任せください」
「⋯⋯ではお願い」
ワンピースを着せてもらいドレッサーの前に座ると、髪を梳いてゆく、その際に何故か風魔法かしらフワッと下から風を送っていた。
その後、両サイドの髪をそれぞれ編み込み後ろの髪と合わせて纏めていく。
今日は外出の予定はないわよねと問いかけると、
「奥様はまだ16歳とお若いので、周りに侮られないようにしないとなりませんから少し大人っぽく仕上げました」
その後は靴も勝手に持って来る、行くとも言っていないのに食堂に案内する。
朝食の飲み物も聞かずに勝手に紅茶を持ってきた。
昨日の朝テモシーが入れてくれたお茶ね。
朝食を済ませた後、給仕が椅子を引いてくれて立ち上がると、
「奥様図書室に案内しますね」
いつの間にか昨日図書室から持ち出した3冊の本をマリーが手にしているのが見える。
「奥様、図書室から勝手に持ち出してはいけませんよ。おじょ⋯司書のスノー様が困っていらっしゃいました、まだこちらにお越しになったばかりですので公爵家のやり方に慣れていないと思いますので、今後は私が教えて差し上げますね。何でもわからない事は聞いてくださいませ」
「⋯⋯そう、よろしくね」
「はい、お任せください。
先程お気づきになられたと思いますが私魔法が使えますので、急に風がきてびっくりされたと思いますが危険な魔法ではないので大丈夫ですから、安心されて下さいね」
ローリーとの引き継ぎなどはしてないのね。
そろそろ我慢が出来なそうなんだけど、これはテモシーからの試練かしら?
このまま付いていったらまた不愉快な人に会わなければならないわね。
この娘が間諜なら、とんでもなく間抜けなのだけど、これはひょっとしてワザとこの態度なのかしら?
色々思考してたら図書室に着いてしまったわ。
あ~あ、またため息が出そうなのだけどどうしたものかと思案していると前からドーランが急ぎ足で近づいてくる。
「奥様、おはようございます。
こちらにいらしたのですね、探しておりました。使用人の朝のご挨拶をさせていただきたいのですが、今よろしいでしょうか?」
「ええ、案内して頂戴」
ドーランの案内で他の部屋よりも少し大きめな扉の前に連れて来られた。
扉を、部屋の前に居た騎士が開くとそこには3列に長テーブルが置かれ、4人ずつ座っていた。
「奥様此処にいる者は、メイナード公爵家にて執務を担当している者達です。
前から本邸、別宅、領地と担当別に座らせております。
通常は本邸の担当のみが此処で執務を行ってますが、各邸で蜜に連携を取るために頻繁に使いが来ますので全員を呼びました。
お手数をおかけしてたいへん申し訳ありませんがご挨拶させて頂いても宜しいでしょうか?」
「解ったわ、どうぞ」
長テーブルのかなり前に2段ほど高くなっている段上にソファが用意されていたのでそこに座らされてドーランの話を聞いてたけど、領地から来てるのに挨拶させずに帰すなんてできないわよ。
総勢12名、記憶しておかないといけないのかしら?
私執務はまだしなくて良かったはずなんだけどドーランは聞いてないのかしら?
各担当の最初に挨拶する人が執務長のはずよね。
その方たちの名前だけ記憶して他は魔法で印を付けておこう。
担当ごとに色変えしましょう。これで大丈夫。
私は魔力を色素化出来る。
子供の頃は三色だけだったけど今は色んな色を付ける事ができるの。
今回は全員の耳に付けたわ。
これって何魔法になるのかしらね?
全員の挨拶の後、マリーとドーランを連れてテモシーの執務室に案内してもらった。
「奥様おはようございます。どうされましたか?」
「侍女の変更を求めるわ」
「なんと⋯⋯⋯。」
びっくりしてるドーランとテモシーを他所に自分の事だと気づいてないのか、それともこれを想定して態とあの態度だったのか、マリーは本を片手に後ろに控えたままでこちらを涼しい顔で見ていた。
「何かありましたか?」
「テモシー、私の歳は幾つと聞いてるのかしら?」
「16歳と聞いております」
「そうよね。その事で問題でもあったかしら?」
「いえ、何も問題などございません」
「そう。問題でもあったのかと思ったんだけど違うのね。では私は公爵夫人として此処にいるということよね」
「左様でございます」
「それではマリーは公爵夫人の侍女には相応しくないわ。配置換えをお願い。それと申し訳ないけどローリーとアンナを呼んで頂戴」
「奥様!なぜですか?
私のどこが相応しくないのでしょうか!」
「全てよ。テモシー、二人が来るまで此処にいるわね」
「畏まりました。直ぐに」
テモシーは隅に控えていた者に合図を送ると私に問う。
「奥様、侍女長は呼ばなくてもよろしいですか?」
「呼ばなくてもいいわよ。未だに挨拶に来ない侍女長を私は認めないので」
「ええっ!旦那様は侍女長の紹介もされてないのですか」
「ええ、そうね。また忘れているのかしらフフフ。
テモシーからもされてないわよ」
「申し訳ありません、私の失態ですね。侍女長からも何も言ってこないので、てっきり侍女長の紹介を先にして私の方を忘れていたのかと⋯⋯。いえ私が気づかなければなりませんでした。昨日から奥様には失態ばかりお見せしてお恥ずかしい限りで御座います」
そのまま床に頭が付くんじゃないかと言うくらいテモシーが詫てる横でドーランは苦虫を噛み潰したような顔をしているけれど、何故?
あぁ監視を私に押し付けてたわね。そんなの知らないわ。
さぁてと、やはり私はかなりの使用人から侮られているみたいね。
やはり公爵が影武者であるのは此処にとっても良くなかったようだわ。
色んな事を真似ても威厳は培われて行くモノだもの。
マーク様では若干役不足だったみたい。よく7年持ったわね。
暫くは様子見のつもりだったけれど、私が快適に過ごす為にも動かないと行けないようだわ。
ドーランにウィルハイム様へ先触れを出すように指示しました。
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