【完結】長い眠りのその後で

maruko

文字の大きさ
34 / 50
第三章 長い眠りのその後で

実家に帰らせていただきます

しおりを挟む
今サンディル様の部屋にはおそらくですが、マーク様、テモシー、ドーランがいる模様です。

何故おそらくなのかというと昨夜私の本当の旦那様«サンディル様»が過去戻りからお目覚めになりました。
ちょうど魔力を送っている所でしたので、目を開けられた時はびっくりしましたが、私よりも当のサンディル様の方がびっくりしたらしく、とんでもない叫び声を上げて部屋の壁際に蹲り、いくら私が声をかけても振り向いてもくれませんでした。

毎夜魔力供給の時に私はサンディル様に話しかけていたのでその部屋は防音魔法を施してましたから、サンディル様の叫び声は誰にも届いておらず、誰も飛び込んできてはくれませんので私が対処する事にしました。

「お初にお目にかかります。私、アディルと申します。
一年程前にサンディル様と婚姻致しました。
早めに現実を受け止めて頂ければ幸いでございます」

婚姻の箇所で肩がピクリとしましたが他には反応を見せて頂けませんでしたので、私は部屋を辞する事にしました。

サンディル様が寝ていた部屋はこの部屋の魔法で作られた隠し部屋になっております。
出る前に一応声掛けもしてみましたが、これも反応無しでした。

隠し部屋を出て奥へ向かいます。
サンディル様の部屋には侍従用の休憩室があり、実質今はそこがマーク様のお部屋になっております。

ノックするとびっくりした顔のマーク様。
どうも湯浴みをされた直後であったと思われ、バスローブのお胸の所がはだけておりまして、目のやり場に困りました。
俯きながらサンディル様がお戻りになった事を伝えますとビックリしたあと、隠し部屋に入って行きました。

私が出た時防音魔法は解除しましたので音がダダ漏れです。

「何と言う格好をしてるんだ、お前、まさか、アディルに⋯⋯」

「わぁ~~違いますよ~。待ってください。
ド、ドーランを呼んできます。ちょちょっと待っていてください」

マーク様が出て参りました、後ろからはサンディル様もいらしてます。
私の顔を見かけたサンディル様がうわぉ~$\ᏋᏰ∌∀
何を言ってるかさっぱりわかりませんでしたので自室に戻りました。

あとは知りません。


──────────────


昨夜夕食の後、別邸にお帰りになっていたはずのお義父様が朝食の席に居られます。

呼び出されていたのでしょうね。
アンディーがいるのでサンディル様のお話はできません。
お義父様は、上目遣いで私を見ておりますが無視をする事にしました。
昨夜のサンディル様の態度が⋯⋯許せません。

アンディーと食事の後、へ案内しました。
お義母様の真似をして2ヶ所にガゼボを作りましたの。
一つは以前からあった物を使わせてもらいました。

所々にベンチと灯りを配置して夜でも散歩出来るように作りました。
アンディーはこの庭を全て私が作った事を知るとめをウルウルして私を見上げて

「姉様はやっぱりすごいですぅ~」

と可愛い事を言ってくれます。
はぁアンディーとスパナートに帰ろうかしら?ふと思っただけでしたが⋯⋯。
とても名案に思えました。

今はお祖父様もお祖母様もキャンベラもいないのでアンディーひとりです。
14歳を一人にしておけませんわ。

私はアンディーと執務室へ向かいました。

「「アディル様おはようございます」」

ローリーから私の様子が変だと聞いてるであろう二人はアンディーも一緒にこちらに来たので聞かずに挨拶だけして澄ましております。

「おはよう、ダミアン、マリー。早速で悪いんだけど、私今からスパナートに帰るわ。今日からの執務はするべき人がだからそちらと話をしてね。ローリー荷造りを手伝って」

「アディル様!お待ちください、何故ですか?」

「さぁなぜかしら?私も聞きたいわ」

ダミアンとマリーに八つ当たりだわと思いながらローリーとアンディーを連れて自室に戻り、誰も来ないうちにとサッサと公爵邸を後にしました。

「姉様、義兄様にお声をかけなくてよろしかったのですか?ケンカでもしたのですか?僕は姉様の味方ですからね」

可愛いアンディーは鼻を膨らましながらフンフン言ってます。

「喧嘩とかしてないわよ。心配しないで偶には帰りたいなと思ってたから丁度いいのよ」

昨日からのモヤモヤをアンディーの前では出さないように努めてスパナートじっかへ向かう馬車の中で昨夜からの事を考えておりました。

サンディル様は私に気づいていたはず、お母様と思っていたのが私でビックリしたのはわかるわ。
結婚したことも知らなかったでしょうから。
でも私はちゃんと挨拶したのに、壁の方を向いてこちらを一度も見なかった。

みんながあんなに私に執着してるって言ってたから私は自惚れていたのかもしれないけど、でもせめて振り向くくらいしてもいいじゃない。
その後だってマーク様の後ろから付いてきた時だって、あんなに意味不明の事を言って誤魔化して。

あれが夫婦の最初の言葉だなんて⋯⋯。
もう知らないわ、もうメリルもキャンベラもいないのだから私には関係ないわ。

王家の事は優秀な他の皆さまが頑張ってくれるでしょう。
私は魔力を送るためだけに婚姻したのだもの。
お役ごめんよね。

モヤモヤを考えていたら馬車がスパナートじっかに付いたようです。
さてはアンディーが魔法を使ったのでしょう。

馬車から降りる時はアンディーが手を貸してくれました。
大人になったなぁと思いながらかつての我が家へ
私の部屋へ荷物を入れていると、侍女が声をかけてくれました。

「アディル様、アンディー様がお茶を庭でどうですかとお誘いされてますが⋯⋯」

「入って、久しぶりね」

「はいアディル様。お久しぶりにございます、お元気そうでなによりにございます」

彼女はシャンテ。スパナート家ではずっと私の侍女でした。でも公爵家へ嫁ぐ時、誰も連れて行っては行けなかったので(今なら理由はわかります)会うのは嫁いで以来です。懐かしいわぁ。

「アディル様は暫くこちらへ?」

「えぇそのつもりよ。アンディーが寮に入ってもいるかもしれないわね」

「アディル様!離縁でもされるんですか?」

「さぁ?解らないわ。また今度話しましょう、アンディーがお茶って言ってるのね、シャンテ着替えを手伝って」

「畏まりました」

なんとも言えないような顔をしたシャンテに着替えを手伝ってもらいながら、勢いで帰ってきたけどこれからどうしましょうか、とため息が溢れる私なのでした。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

邪魔者は消えますので、どうぞお幸せに 婚約者は私の死をお望みです

ごろごろみかん。
恋愛
旧題:ゼラニウムの花束をあなたに リリネリア・ブライシフィックは八歳のあの日に死んだ。死んだこととされたのだ。リリネリアであった彼女はあの絶望を忘れはしない。 じわじわと壊れていったリリネリアはある日、自身の元婚約者だった王太子レジナルド・リームヴと再会した。 レジナルドは少し前に隣国の王女を娶ったと聞く。だけどもうリリネリアには何も関係の無い話だ。何もかもがどうでもいい。リリネリアは何も期待していない。誰にも、何にも。 二人は知らない。 国王夫妻と公爵夫妻が、良かれと思ってしたことがリリネリアを追い詰めたことに。レジナルドを絶望させたことを、彼らは知らない。 彼らが偶然再会したのは運命のいたずらなのか、ただ単純に偶然なのか。だけどリリネリアは何一つ望んでいなかったし、レジナルドは何一つ知らなかった。ただそれだけなのである。 ※タイトル変更しました

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。

ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。 ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。 対面した婚約者は、 「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」 ……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。 「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」 今の私はあなたを愛していません。 気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。 ☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。 ☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

公爵令嬢ルチアが幸せになる二つの方法

ごろごろみかん。
恋愛
公爵令嬢のルチアは、ある日知ってしまう。 婚約者のブライアンには、妻子がいた。彼は、ルチアの侍女に恋をしていたのだ。 ルチアは長年、婚約者に毒を飲ませられていた。近年の魔力低下は、そのせいだったのだ。 (私は、彼の幸せを邪魔する障害物に過ぎなかったのね) 魔力不足に陥った彼女の余命は、あと一年だという。 それを知った彼女は自身の幸せを探すことにした。

処理中です...