40 / 50
第三章 長い眠りのその後で
『真実』変えたい過去
しおりを挟む
本日は王宮の会議室に来ております。
本来は結婚式の翌日に行われる予定でしたが、私の体が動けずおまけにサンディル様が部屋を出ようとしなくて結局皆を収集したのは結婚式から3日後でした。
参加するのは陛下とエンヌ様、お義父様とドーラン、団長様と母、そして何故か父もサンディル様の希望で呼ばれておりました。
会議室は普段使わない離宮の部屋です。
窓を全て締め切り全てに暗幕をかけていて中は真っ暗になってます。
移動に困るので所々に灯り代わりの光るボールが浮いてます。
団長様が出してるのでしょうね、とてもキレイなので今度私も真似して作ってみようと思いました。
するとそこへ見た事のない男性が入ってきました。
「少し遅れたようで申し訳ありません」
そう言って紳士は陛下の前で平伏しております。
「侯爵急に呼びだてて済まないな。領地にいるのを引っ張り出してしまって、間に合って良かった」
そう言って陛下が皆にミラー侯爵だと紹介してくださいました。
クラリスのお父様が何故ここへ?
不思議に思っていたら、なんと陛下が侯爵に夢見の説明をされています。
という事は侯爵は元々王命にも関わっていなかったのに、と益々わからなかったのですが説明の最後に父とミラー侯爵はサンディル様のご希望で呼ばれたんだと陛下がみなに告げます。
サンディル様が過去戻りの結果を二人は知る必要があるという事になりますね。
サンディル様は何を見てきたのでしょう。
団長様が途中で休憩などは挟まないからと言ってティーポットとカップを一人一つずつ準備され「勝手にやってくれ」と仰います。
雑ですわね、私が立ち上がろうとするとエンヌ様に止められました。
「アディル気にする必要はないわよ」
私が一番若輩者だしと思ったのですがそう言われましたので座り直しました。
目に写った物を見るというのが初めてですので少し緊張していて手が震えております。
サンディル様が皆の前に出て目を開きます。
団長様が光るボールを消しました、部屋が真っ暗になります。
母がサンディル様の目に手を翳し力を込めています、すると金色の粒のようなものがサンディル様の目に入り、なんとそこから光が溢れてきました。
光は暗幕へと続きそこに映像が流れ始めました。
皆固唾をのんで暗幕に釘付けになりました。
──────────────
「そ、そんな⋯⋯⋯⋯」
見終わったあと真っ先に声を発したのはミラー侯爵でした。
他は誰も声を上げられない。
一人の女性の壮絶な人生を目の当たりにして言葉は出ない。
彼女の人生で幸せだった時は何年位あったのかしら?
「陛下、発言をお許しください」
お義父様が声を上げると陛下が了承された。
「お祖父様の遺産の件、誰が対応していたのですか?その者は詳しく知っているのではないでしょうか?」
陛下は本当にジョセフさんの存在を知らされてなかったのかしら?
「そうだな、早急に調べさせよう。⋯⋯ここにその女性がいたということだな」
そうだ、ジョイさんのお祖母様を前々陛下が離宮に囲ったって言ってたから、ここなんだわ。
それから私とエンヌ様は本城に行くように言われてその場を離れました。
これから皆様で対策を立てられるのでしょうね。
畏れ多くもエンヌ様の部屋へ通されて二人でお茶を飲むことになったのだけど、未だに私は手が震えています。
帰りたいけれど、でもサンディル様が待つように言ったのでここで待たなければ。
「アディル、『番の呪い』かもしれないわね」
「呪いですか?」
「えぇ、私が前話した事覚えてる?」
「はい覚えています」
「その時前王妃様から聞いたと話したでしょう。あの時は軽く話したけど実際はそんなものじゃなかったのよ。
とても、とても苦しんでおられたの。ひょっとすると今回の事少しは知ってらしたのかもしれないわね。婚姻してから呪いが発動されたらとんでもない事になると仰ってたのも、この事が原因かも知れないわ」
そうか、前々陛下はおそらくサンディル様の曾祖母様と婚姻した後に強く惹かれて執着する女性を見つけてしまったから、それを目の当たりにした曾祖母様が今回の事の元凶だものね。
『番の呪い』って本当に呪いかもしれない。
「前王妃様は前陛下が呪いを発動するのを恐れていたのね」
エンヌ様が体調が悪そうだったので休むように進言すると「ごめんなさい」と言って奥へ行かれた。
私はそのまま居るように言われたので頭を整理してみる。
考えるのはメリルとキャンベラのこと。
メリルも洗脳されていた、彼女の境遇を思うとなんとも言えない気持ちになる。
彼女は悪では無かった、決めつけてたけど違ったのよ。
彼女こそ被害者だ。
でもティーナさんも責められない。
父も責められない。
その人の立場になったら子供に罪はないという言葉も虚しい。
そんな事はわかってる、誰でもわかってる。
でも感情は別物だと思う。
父が私達とメリル達を分け隔てなく育てる事が出来ないのもしょうがない事だと思う。
ティーナさんがメリルを連れて行きたくなかったのもしょうがないことなのだと思う。
だって私はその立場に立ってない。
ジョイさんが赤ん坊のメリルの頭を撫でて謝っていた時とてつもなく辛かった。
何故あんな事が起きたんだろう。
過去を変えたくなってしまう。
あんなに辛い過去なら、誰も幸せになれないんじゃないの?
キャンベラは子供の頃からメリルに魔法をかけられてた。
本当だったらミラー侯爵家で普通に過ごせていたはずなのに⋯⋯なんであんな酷い事が出来るの?
アッパール家にとてつもなく黒い感情が私の中に湧き出て来る。
モヤモヤモヤモヤして強い魔力が溢れ出ていたのかも、突然抱きしめられてフワッとしたら落ち着いた。
サンディル様が抱きしめてくれてた。
「アディル、駄目だよ。魔法を攻撃的に使おうとしたらみんなが怖がってるよ」
ふと気づくとエンヌ様の侍女が青い顔をして壁際に控えていた。
「ごめんなさい、エンヌ様が人払いされてたから誰も居ないと思ってたわ。奥へ行かれた時に私に付いてくれてたのね」
「アディル帰ろうか、落ち着いてから話そう」
私はサンディル様に手を引かれて王宮を後にしました。
本来は結婚式の翌日に行われる予定でしたが、私の体が動けずおまけにサンディル様が部屋を出ようとしなくて結局皆を収集したのは結婚式から3日後でした。
参加するのは陛下とエンヌ様、お義父様とドーラン、団長様と母、そして何故か父もサンディル様の希望で呼ばれておりました。
会議室は普段使わない離宮の部屋です。
窓を全て締め切り全てに暗幕をかけていて中は真っ暗になってます。
移動に困るので所々に灯り代わりの光るボールが浮いてます。
団長様が出してるのでしょうね、とてもキレイなので今度私も真似して作ってみようと思いました。
するとそこへ見た事のない男性が入ってきました。
「少し遅れたようで申し訳ありません」
そう言って紳士は陛下の前で平伏しております。
「侯爵急に呼びだてて済まないな。領地にいるのを引っ張り出してしまって、間に合って良かった」
そう言って陛下が皆にミラー侯爵だと紹介してくださいました。
クラリスのお父様が何故ここへ?
不思議に思っていたら、なんと陛下が侯爵に夢見の説明をされています。
という事は侯爵は元々王命にも関わっていなかったのに、と益々わからなかったのですが説明の最後に父とミラー侯爵はサンディル様のご希望で呼ばれたんだと陛下がみなに告げます。
サンディル様が過去戻りの結果を二人は知る必要があるという事になりますね。
サンディル様は何を見てきたのでしょう。
団長様が途中で休憩などは挟まないからと言ってティーポットとカップを一人一つずつ準備され「勝手にやってくれ」と仰います。
雑ですわね、私が立ち上がろうとするとエンヌ様に止められました。
「アディル気にする必要はないわよ」
私が一番若輩者だしと思ったのですがそう言われましたので座り直しました。
目に写った物を見るというのが初めてですので少し緊張していて手が震えております。
サンディル様が皆の前に出て目を開きます。
団長様が光るボールを消しました、部屋が真っ暗になります。
母がサンディル様の目に手を翳し力を込めています、すると金色の粒のようなものがサンディル様の目に入り、なんとそこから光が溢れてきました。
光は暗幕へと続きそこに映像が流れ始めました。
皆固唾をのんで暗幕に釘付けになりました。
──────────────
「そ、そんな⋯⋯⋯⋯」
見終わったあと真っ先に声を発したのはミラー侯爵でした。
他は誰も声を上げられない。
一人の女性の壮絶な人生を目の当たりにして言葉は出ない。
彼女の人生で幸せだった時は何年位あったのかしら?
「陛下、発言をお許しください」
お義父様が声を上げると陛下が了承された。
「お祖父様の遺産の件、誰が対応していたのですか?その者は詳しく知っているのではないでしょうか?」
陛下は本当にジョセフさんの存在を知らされてなかったのかしら?
「そうだな、早急に調べさせよう。⋯⋯ここにその女性がいたということだな」
そうだ、ジョイさんのお祖母様を前々陛下が離宮に囲ったって言ってたから、ここなんだわ。
それから私とエンヌ様は本城に行くように言われてその場を離れました。
これから皆様で対策を立てられるのでしょうね。
畏れ多くもエンヌ様の部屋へ通されて二人でお茶を飲むことになったのだけど、未だに私は手が震えています。
帰りたいけれど、でもサンディル様が待つように言ったのでここで待たなければ。
「アディル、『番の呪い』かもしれないわね」
「呪いですか?」
「えぇ、私が前話した事覚えてる?」
「はい覚えています」
「その時前王妃様から聞いたと話したでしょう。あの時は軽く話したけど実際はそんなものじゃなかったのよ。
とても、とても苦しんでおられたの。ひょっとすると今回の事少しは知ってらしたのかもしれないわね。婚姻してから呪いが発動されたらとんでもない事になると仰ってたのも、この事が原因かも知れないわ」
そうか、前々陛下はおそらくサンディル様の曾祖母様と婚姻した後に強く惹かれて執着する女性を見つけてしまったから、それを目の当たりにした曾祖母様が今回の事の元凶だものね。
『番の呪い』って本当に呪いかもしれない。
「前王妃様は前陛下が呪いを発動するのを恐れていたのね」
エンヌ様が体調が悪そうだったので休むように進言すると「ごめんなさい」と言って奥へ行かれた。
私はそのまま居るように言われたので頭を整理してみる。
考えるのはメリルとキャンベラのこと。
メリルも洗脳されていた、彼女の境遇を思うとなんとも言えない気持ちになる。
彼女は悪では無かった、決めつけてたけど違ったのよ。
彼女こそ被害者だ。
でもティーナさんも責められない。
父も責められない。
その人の立場になったら子供に罪はないという言葉も虚しい。
そんな事はわかってる、誰でもわかってる。
でも感情は別物だと思う。
父が私達とメリル達を分け隔てなく育てる事が出来ないのもしょうがない事だと思う。
ティーナさんがメリルを連れて行きたくなかったのもしょうがないことなのだと思う。
だって私はその立場に立ってない。
ジョイさんが赤ん坊のメリルの頭を撫でて謝っていた時とてつもなく辛かった。
何故あんな事が起きたんだろう。
過去を変えたくなってしまう。
あんなに辛い過去なら、誰も幸せになれないんじゃないの?
キャンベラは子供の頃からメリルに魔法をかけられてた。
本当だったらミラー侯爵家で普通に過ごせていたはずなのに⋯⋯なんであんな酷い事が出来るの?
アッパール家にとてつもなく黒い感情が私の中に湧き出て来る。
モヤモヤモヤモヤして強い魔力が溢れ出ていたのかも、突然抱きしめられてフワッとしたら落ち着いた。
サンディル様が抱きしめてくれてた。
「アディル、駄目だよ。魔法を攻撃的に使おうとしたらみんなが怖がってるよ」
ふと気づくとエンヌ様の侍女が青い顔をして壁際に控えていた。
「ごめんなさい、エンヌ様が人払いされてたから誰も居ないと思ってたわ。奥へ行かれた時に私に付いてくれてたのね」
「アディル帰ろうか、落ち着いてから話そう」
私はサンディル様に手を引かれて王宮を後にしました。
292
あなたにおすすめの小説
邪魔者は消えますので、どうぞお幸せに 婚約者は私の死をお望みです
ごろごろみかん。
恋愛
旧題:ゼラニウムの花束をあなたに
リリネリア・ブライシフィックは八歳のあの日に死んだ。死んだこととされたのだ。リリネリアであった彼女はあの絶望を忘れはしない。
じわじわと壊れていったリリネリアはある日、自身の元婚約者だった王太子レジナルド・リームヴと再会した。
レジナルドは少し前に隣国の王女を娶ったと聞く。だけどもうリリネリアには何も関係の無い話だ。何もかもがどうでもいい。リリネリアは何も期待していない。誰にも、何にも。
二人は知らない。
国王夫妻と公爵夫妻が、良かれと思ってしたことがリリネリアを追い詰めたことに。レジナルドを絶望させたことを、彼らは知らない。
彼らが偶然再会したのは運命のいたずらなのか、ただ単純に偶然なのか。だけどリリネリアは何一つ望んでいなかったし、レジナルドは何一つ知らなかった。ただそれだけなのである。
※タイトル変更しました
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
公爵令嬢ルチアが幸せになる二つの方法
ごろごろみかん。
恋愛
公爵令嬢のルチアは、ある日知ってしまう。
婚約者のブライアンには、妻子がいた。彼は、ルチアの侍女に恋をしていたのだ。
ルチアは長年、婚約者に毒を飲ませられていた。近年の魔力低下は、そのせいだったのだ。
(私は、彼の幸せを邪魔する障害物に過ぎなかったのね)
魔力不足に陥った彼女の余命は、あと一年だという。
それを知った彼女は自身の幸せを探すことにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる