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激しかった雨がいつの間にか止んでいたのに気づいたのはユランドだった。
「おっ!雨止んだぞ、明日は晴れだと天気当ての得意な男が言っていた。アリーシャ嬢の前途も明るいだろう」
「フフ本当に?その天気当ての得意な男の方の予報は当たりますか?」
「きっと当たる!」
ユランドは胸を拳で叩いて張ってみせた。
「だといいです、私の前途が暗いならマックスも暗くなっちゃうから」
「僕はべつに「そうだぞ!今回は二人分の人生がかかってる、だから諦めは無しだ」」
マックスの言葉をユランドが遮ってアリーシャに言い聞かせるように話した。
「そうね!今回は自分の未来を絶望しない!諦めない!⋯⋯マックスよろしくね。貴方の足手まといにならない様に頑張るわ!」
「えっと⋯そもそもこれからの事ってお嬢様どうされるおつもりで?」
「えっ?とりあえず暫く住むところは確保してもらったからギルドに行って仕事を探すわ!」
「「えええええっ!!!!」」
マックスとユランドは揃って驚きの声を上げた。
マックスはあまりの驚きに唾まで飛んでアリーシャに嫌な顔をされた。
「マックス驚きすぎ!もう!唾飛んじゃってるわ!」
「ですが、お嬢様がまともにお仕事できるわけ無いじゃないですか?」
「マックス忘れたの!私前の人生の半生は平民よ!仕事もバリバリまではいかなくてもある程度は一人で何でもこなせるし、前と違って学園での学習も前倒しで頑張ったから学園なんていかなくても何かの資格は取れるはず!」
アリーシャは両腕に力瘤を作るように腕を曲げてマックスにアピールした。
「ではせめてうちの商会の支店に⋯」
「マックスそれは駄目よ、貴方だけならいいわ。でも暫くは貴方も隠れてて欲しい。王太子様の私への執着が無くなるまで、せめてあと5年ルチアーナと王太子様が婚姻するまでは連れ戻される確率が高いから。そんな事をしたら彼まで堕ちてしまうから」
マックスはアリーシャの言葉でおやっ?と疑問に思った。
今のアリーシャの言葉からは王太子への嫌悪が感じられなかったからだ。
「お嬢様は王太子様の事を、その、迷惑ではなかったのでしょうか?」
「迷惑だったわよ。あぁマックス勘違いしないでね。私王太子様の事嫌いではないの、寧ろ申し訳なくて。私に関わればあの方は如何やっても王太子の座を追われてしまうの。優しい人なのにただ少しだけ猪突猛進の浅慮なだけで」
「あまり為政者には向いていないけどね。優しい人っていうのは否定しない」
アリーシャの言葉にユランドが同意する。
「王太子様に二度目の人生で言われたことが今回の時にわかったのだけど」
アリーシャは両手の指同士をくっつけてそれを揺らしながら話す。
「『本当なら君が婚約者だったじゃないか、私はそれを正したいんだ』って言ってたの。その時は意味わからなくて世迷い事を言ってらっしゃるって思ってたけど、今世で分かったわ。お父様とお母様と私の本当の事を何処かでお知りになっていたのね。だって私も今世でちゃんと聞くまで知らなかった事実だし、何故庶子の私の方がルチアーナより歳上なのかとかね。公爵家の雰囲気からお母様が婚約者のいる男性を横恋慕で奪ったんだって漠然と思ってたけど、まぁ似たようなものだけどお母様の意思ではなかったことが分かって安心したわ」
マックスはアリーシャが本当は王太子の事を災難と言って必死に避けようとしていた本当の意味を知った。
アリーシャは本当は王太子が好きなのではないか?喉まで出掛かった言葉を呑み込む。
それを今言ったところで何の慰めにもならない事に気づいたからだ。
だが本当にそれでいいのだろうか?
マックスは自問自答を繰り返していた。
急に黙り込んだマックスにアリーシャは不安になって声をかける。
「マックス、もしご家族と離れるのが辛いなら戻っても大丈夫よ。私へはユランド様経由で偶にお手紙でも送ってくれたらいいから。そうよね家族と連絡とるななんて酷いことを言ったわ。ごめんなさい」
アリーシャの勘違いにマックスはまたもや慌てた。
「違いますよ!家族とはもう10歳の時に離れて暮らしてるじゃないですか!偶に会うことがあるだけでそれも滅多に無かったので慣れてますから、今更特別会うつもりはないですよ」
マックスはフォローのつもりだったが逆効果だった。
益々アリーシャは責任を感じた。
「マックスごめんなさい!私が貴方を家族から引き離したのね」
「そんなことないです!」
「アリーシャ嬢、落ち着け!マックスの事を提案したのはステイル様だから君のせいじゃない!」
「でも⋯⋯⋯だけど⋯⋯」
先程のハンカチを再び目に当ててアリーシャが泣きだしてしまった。
暗く重い話から少しずつ未来への希望の話になって顔色も明るくなってきたところで元の木阿弥。
マックスとユランドは気の利いた慰めの言葉も思いつかず途方にくれてしまった。
いつも飄々としていたアリーシャの、不安定な感情をマックスは為す術なく見つめることしか出来ない。
止んでいた雨が再び降り始めていた。
「おっ!雨止んだぞ、明日は晴れだと天気当ての得意な男が言っていた。アリーシャ嬢の前途も明るいだろう」
「フフ本当に?その天気当ての得意な男の方の予報は当たりますか?」
「きっと当たる!」
ユランドは胸を拳で叩いて張ってみせた。
「だといいです、私の前途が暗いならマックスも暗くなっちゃうから」
「僕はべつに「そうだぞ!今回は二人分の人生がかかってる、だから諦めは無しだ」」
マックスの言葉をユランドが遮ってアリーシャに言い聞かせるように話した。
「そうね!今回は自分の未来を絶望しない!諦めない!⋯⋯マックスよろしくね。貴方の足手まといにならない様に頑張るわ!」
「えっと⋯そもそもこれからの事ってお嬢様どうされるおつもりで?」
「えっ?とりあえず暫く住むところは確保してもらったからギルドに行って仕事を探すわ!」
「「えええええっ!!!!」」
マックスとユランドは揃って驚きの声を上げた。
マックスはあまりの驚きに唾まで飛んでアリーシャに嫌な顔をされた。
「マックス驚きすぎ!もう!唾飛んじゃってるわ!」
「ですが、お嬢様がまともにお仕事できるわけ無いじゃないですか?」
「マックス忘れたの!私前の人生の半生は平民よ!仕事もバリバリまではいかなくてもある程度は一人で何でもこなせるし、前と違って学園での学習も前倒しで頑張ったから学園なんていかなくても何かの資格は取れるはず!」
アリーシャは両腕に力瘤を作るように腕を曲げてマックスにアピールした。
「ではせめてうちの商会の支店に⋯」
「マックスそれは駄目よ、貴方だけならいいわ。でも暫くは貴方も隠れてて欲しい。王太子様の私への執着が無くなるまで、せめてあと5年ルチアーナと王太子様が婚姻するまでは連れ戻される確率が高いから。そんな事をしたら彼まで堕ちてしまうから」
マックスはアリーシャの言葉でおやっ?と疑問に思った。
今のアリーシャの言葉からは王太子への嫌悪が感じられなかったからだ。
「お嬢様は王太子様の事を、その、迷惑ではなかったのでしょうか?」
「迷惑だったわよ。あぁマックス勘違いしないでね。私王太子様の事嫌いではないの、寧ろ申し訳なくて。私に関わればあの方は如何やっても王太子の座を追われてしまうの。優しい人なのにただ少しだけ猪突猛進の浅慮なだけで」
「あまり為政者には向いていないけどね。優しい人っていうのは否定しない」
アリーシャの言葉にユランドが同意する。
「王太子様に二度目の人生で言われたことが今回の時にわかったのだけど」
アリーシャは両手の指同士をくっつけてそれを揺らしながら話す。
「『本当なら君が婚約者だったじゃないか、私はそれを正したいんだ』って言ってたの。その時は意味わからなくて世迷い事を言ってらっしゃるって思ってたけど、今世で分かったわ。お父様とお母様と私の本当の事を何処かでお知りになっていたのね。だって私も今世でちゃんと聞くまで知らなかった事実だし、何故庶子の私の方がルチアーナより歳上なのかとかね。公爵家の雰囲気からお母様が婚約者のいる男性を横恋慕で奪ったんだって漠然と思ってたけど、まぁ似たようなものだけどお母様の意思ではなかったことが分かって安心したわ」
マックスはアリーシャが本当は王太子の事を災難と言って必死に避けようとしていた本当の意味を知った。
アリーシャは本当は王太子が好きなのではないか?喉まで出掛かった言葉を呑み込む。
それを今言ったところで何の慰めにもならない事に気づいたからだ。
だが本当にそれでいいのだろうか?
マックスは自問自答を繰り返していた。
急に黙り込んだマックスにアリーシャは不安になって声をかける。
「マックス、もしご家族と離れるのが辛いなら戻っても大丈夫よ。私へはユランド様経由で偶にお手紙でも送ってくれたらいいから。そうよね家族と連絡とるななんて酷いことを言ったわ。ごめんなさい」
アリーシャの勘違いにマックスはまたもや慌てた。
「違いますよ!家族とはもう10歳の時に離れて暮らしてるじゃないですか!偶に会うことがあるだけでそれも滅多に無かったので慣れてますから、今更特別会うつもりはないですよ」
マックスはフォローのつもりだったが逆効果だった。
益々アリーシャは責任を感じた。
「マックスごめんなさい!私が貴方を家族から引き離したのね」
「そんなことないです!」
「アリーシャ嬢、落ち着け!マックスの事を提案したのはステイル様だから君のせいじゃない!」
「でも⋯⋯⋯だけど⋯⋯」
先程のハンカチを再び目に当ててアリーシャが泣きだしてしまった。
暗く重い話から少しずつ未来への希望の話になって顔色も明るくなってきたところで元の木阿弥。
マックスとユランドは気の利いた慰めの言葉も思いつかず途方にくれてしまった。
いつも飄々としていたアリーシャの、不安定な感情をマックスは為す術なく見つめることしか出来ない。
止んでいた雨が再び降り始めていた。
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