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クラウベル公爵からの手紙に書かれていたのは、母アリスの事とメリジェーンとの再婚の経緯そしてルチアーナの事だった。
おそらく前日のお茶会が引き金でアリーシャが出奔した事に父が気づいたからだとアリーシャは感じた。
この大陸では嘗ては魔力を持つ者は当たり前にいたそうだ。
それこそ貴族はほぼ全員が何らかの属性の魔力を持っていたのだとか。
今では貴族ですら持っている者の方が珍しくなってしまった。
“光魔法”そういう物が遥か昔に存在していて彼の者は“聖女”と教会に認定される。
国を繁栄に導く者と言われていたのだとか、それはアリーシャも歴史として学習した。
アリーシャが聖女に関して知っているのはここまでだった。
存在すら幻と言われる聖女
少し歴史を深く探れば聖女を確認できた最後は数百年前に遡ると記されていた。
だが今回のクラウベル公爵の手紙には文献よりも少し詳しく認めてあった。
アリーシャは読んで驚いたのは、この国の最後に確認された聖女の家系がルクト侯爵家なのだとあった。
これは王族と公爵家、そしてルクト侯爵家のみが知る事実だった。
─ルチアーナの母方の家系が聖女の末裔だなんて─
お伽噺の聖女の存在が俄に現実味を帯びてアリーシャは何か虚しく思った。
だからルチアーナは大事にされていたなんて。
だがルチアーナが大事にされていたのは、ただ末裔というだけではなかった。
ルチアーナには生まれた時から“聖女の証”がその身にあったのだという。
ルクト侯爵家に代々伝わる文書に聖女は赤い瞳を持っていたと書き記されているそうだ。
ルクト侯爵家はその事からルチアーナが生まれた時にその文書と共に直ぐに王家に報告した。
王家の呼び出しでアリーシャの父であるクラウベル公爵はその事を初めて陛下に聞かされて、ルチアーナを国の外に出してはならぬと第一王子との婚約を結ぶよう王命を受けたと書いてあった。
そして来たる時までクラウベル公爵家で大事に保護するように言われたと書いてある。
ただ手紙に書かれたルチアーナの秘密はそれだけではなかった。
何とルチアーナはアリーシャの妹ではないと公爵は書いていた。
そこにルチアーナの母であるメリジェーンとの婚姻の経緯も書かれていた。
◇◇◇
クラウベル公爵を継承したアリステアは、愛するアリスを大事に慈しみ愛していた。
父が倒れても浮世離れした母は一緒に領地には行かず王都で暮らす事を切望していた為、少し大変ではあったが、それでもアリステアとアリスの生活は概ね順調だったという。
王都で母と一緒であればアリスが窮屈だろうと領地に赴く時も二人一緒に出かけていた。
あの日は朝からアリスの調子があまり良くなかった。
だがその日は領地の特産品を使った新事業の立ち上げの為、絶対に領地へと行かなければならなかったのだ。
それであの日はアリスに王都に残るように言ってアリステアは一人で領地へと旅立った。
クラウベル公爵家の領地は広大で今回の領地は普段よりも日数がかかる場所のためかなりの日数を要した。
2ヶ月後に帰宅したアリステアに待ち受けていたのは信じられない報告だった。
その時の執事の報告ではアリステアが旅立ったあと、アリスは体が回復してアリステアの後を追いかけて領地に向かったという、その途中で馬車ごと崖に転落して亡くなったと聞かされた。
崖下に転落した公爵家の馬車が見つかってから騎士団で捜索の結果、御者と侍女の遺体はかなり離れた川下で発見されたがアリスの遺体は発見されなかった。
だが絶望的だと考えてアリスの実家のボリス伯爵家で葬儀を終わらせたと聞かされた。
「如何して私に一つも報告がないのだ!」
アリステアのこの言葉には執事が反論した。
執事はこの件で忙しくしながらもアリステアに何通も報告書と手紙を送っていた、無視をされていたのは旦那様だと彼は叫んだ。
アリステアが全く動かなかった事で、ボリス伯爵が怒り公爵家では葬儀はさせないと言われたのだと言う。
直ぐ様ボリス伯爵家にアリステアは訪ったが門前払いで会えず、送った手紙もそのまま開封されず戻ってきたのだとか。
それから1年半後、遺体の見つからないアリスを探して回っていた頃に、アリステアが知らぬ間にメリジェーンと婚姻が成立してしまっていた。
婚姻寸前だった嘗ての婚約者とは色々な書類も取り交わしていた、その中に婚姻届もあったらしい。
先代公爵が記したそれらの書類にアリステアのサインもあったのだという。
それを利用されていた。
アリス探しと領地経営で王都に全く帰らなかったアリステアの隙を付かれてしまったのだと、ただルクト侯爵家や自身の浮世離れした母親の説得が煩わしく、その件を放置してしまった事を悔やんでいるのだと、その時の事が細かい字で便箋3枚にも上っていた。
ほぼアリステアの反省文の様な手紙にアリーシャはげんなりもしたが、その後にとんでもない事が書かれていた。
アリステアとメリジェーンは白い結婚だった。
『白い結婚』
ではルチアーナは誰の子?
それが離婚が認められた原因だった。
だが生まれてきた子が赤い瞳を持っていた事でルチアーナはクラウベル公爵家で引き取らざる負えなかった。
いつの間にか代わっていた執事は母が王家の紹介で雇っていた為、こちらも王命と思って手が出せなかったと書いてあった。
アリーシャは王家絡みの案件に正直、もう本当に関わりたくないと思ったのが手紙を読んだ感想だった。
--------------------
※本日は3話投稿予定です
いつもの時間に投稿できず申し訳ありませんでした。
この後、17時50分、20時10分と投稿していきます
よろしくお願いします😊
おそらく前日のお茶会が引き金でアリーシャが出奔した事に父が気づいたからだとアリーシャは感じた。
この大陸では嘗ては魔力を持つ者は当たり前にいたそうだ。
それこそ貴族はほぼ全員が何らかの属性の魔力を持っていたのだとか。
今では貴族ですら持っている者の方が珍しくなってしまった。
“光魔法”そういう物が遥か昔に存在していて彼の者は“聖女”と教会に認定される。
国を繁栄に導く者と言われていたのだとか、それはアリーシャも歴史として学習した。
アリーシャが聖女に関して知っているのはここまでだった。
存在すら幻と言われる聖女
少し歴史を深く探れば聖女を確認できた最後は数百年前に遡ると記されていた。
だが今回のクラウベル公爵の手紙には文献よりも少し詳しく認めてあった。
アリーシャは読んで驚いたのは、この国の最後に確認された聖女の家系がルクト侯爵家なのだとあった。
これは王族と公爵家、そしてルクト侯爵家のみが知る事実だった。
─ルチアーナの母方の家系が聖女の末裔だなんて─
お伽噺の聖女の存在が俄に現実味を帯びてアリーシャは何か虚しく思った。
だからルチアーナは大事にされていたなんて。
だがルチアーナが大事にされていたのは、ただ末裔というだけではなかった。
ルチアーナには生まれた時から“聖女の証”がその身にあったのだという。
ルクト侯爵家に代々伝わる文書に聖女は赤い瞳を持っていたと書き記されているそうだ。
ルクト侯爵家はその事からルチアーナが生まれた時にその文書と共に直ぐに王家に報告した。
王家の呼び出しでアリーシャの父であるクラウベル公爵はその事を初めて陛下に聞かされて、ルチアーナを国の外に出してはならぬと第一王子との婚約を結ぶよう王命を受けたと書いてあった。
そして来たる時までクラウベル公爵家で大事に保護するように言われたと書いてある。
ただ手紙に書かれたルチアーナの秘密はそれだけではなかった。
何とルチアーナはアリーシャの妹ではないと公爵は書いていた。
そこにルチアーナの母であるメリジェーンとの婚姻の経緯も書かれていた。
◇◇◇
クラウベル公爵を継承したアリステアは、愛するアリスを大事に慈しみ愛していた。
父が倒れても浮世離れした母は一緒に領地には行かず王都で暮らす事を切望していた為、少し大変ではあったが、それでもアリステアとアリスの生活は概ね順調だったという。
王都で母と一緒であればアリスが窮屈だろうと領地に赴く時も二人一緒に出かけていた。
あの日は朝からアリスの調子があまり良くなかった。
だがその日は領地の特産品を使った新事業の立ち上げの為、絶対に領地へと行かなければならなかったのだ。
それであの日はアリスに王都に残るように言ってアリステアは一人で領地へと旅立った。
クラウベル公爵家の領地は広大で今回の領地は普段よりも日数がかかる場所のためかなりの日数を要した。
2ヶ月後に帰宅したアリステアに待ち受けていたのは信じられない報告だった。
その時の執事の報告ではアリステアが旅立ったあと、アリスは体が回復してアリステアの後を追いかけて領地に向かったという、その途中で馬車ごと崖に転落して亡くなったと聞かされた。
崖下に転落した公爵家の馬車が見つかってから騎士団で捜索の結果、御者と侍女の遺体はかなり離れた川下で発見されたがアリスの遺体は発見されなかった。
だが絶望的だと考えてアリスの実家のボリス伯爵家で葬儀を終わらせたと聞かされた。
「如何して私に一つも報告がないのだ!」
アリステアのこの言葉には執事が反論した。
執事はこの件で忙しくしながらもアリステアに何通も報告書と手紙を送っていた、無視をされていたのは旦那様だと彼は叫んだ。
アリステアが全く動かなかった事で、ボリス伯爵が怒り公爵家では葬儀はさせないと言われたのだと言う。
直ぐ様ボリス伯爵家にアリステアは訪ったが門前払いで会えず、送った手紙もそのまま開封されず戻ってきたのだとか。
それから1年半後、遺体の見つからないアリスを探して回っていた頃に、アリステアが知らぬ間にメリジェーンと婚姻が成立してしまっていた。
婚姻寸前だった嘗ての婚約者とは色々な書類も取り交わしていた、その中に婚姻届もあったらしい。
先代公爵が記したそれらの書類にアリステアのサインもあったのだという。
それを利用されていた。
アリス探しと領地経営で王都に全く帰らなかったアリステアの隙を付かれてしまったのだと、ただルクト侯爵家や自身の浮世離れした母親の説得が煩わしく、その件を放置してしまった事を悔やんでいるのだと、その時の事が細かい字で便箋3枚にも上っていた。
ほぼアリステアの反省文の様な手紙にアリーシャはげんなりもしたが、その後にとんでもない事が書かれていた。
アリステアとメリジェーンは白い結婚だった。
『白い結婚』
ではルチアーナは誰の子?
それが離婚が認められた原因だった。
だが生まれてきた子が赤い瞳を持っていた事でルチアーナはクラウベル公爵家で引き取らざる負えなかった。
いつの間にか代わっていた執事は母が王家の紹介で雇っていた為、こちらも王命と思って手が出せなかったと書いてあった。
アリーシャは王家絡みの案件に正直、もう本当に関わりたくないと思ったのが手紙を読んだ感想だった。
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※本日は3話投稿予定です
いつもの時間に投稿できず申し訳ありませんでした。
この後、17時50分、20時10分と投稿していきます
よろしくお願いします😊
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