1 / 1
ラッセルの灯り
しおりを挟む
好きだった。
夜が明けた瞬間の空が。
黒一色の、空の瞳を、太陽が貫いて、瞬く白に揚々と染まって。
コバルトブルーの青みを魅せる。
その、瞬間の、空の色が。
だって、まだ自分は、夢の中に、いるんじゃないか、なんて。
考えさせられるほど、美しかったから。
こんな世界があることを知ったのは、いつのことだっただろうか。
その日のことは忘れてしまったけれど、この空はきっと、大昔からあったはずだ。
どこまでも続く、藍のグラデーション。きっと、この果てしない空は、深い深い記憶の中にある遠い昔へと繋がっている。人間が空を仰いだ最初の記憶へと。
冬の匂いに包まれて一呼吸。私は、白い雲を作る。
今日も気温は低いが、寒さにおののくことはない。
だいぶ、目が覚めてきた、ように思って……、私は真っ白な雪に足を取られないように、気をつけながら、ゆっくりと歩く。
身の丈の半分ほどの大きさのシャベルを持ち、雪かきをして進む。
雪かきなんてロボットに任せればいい、と人々はよく言うけれど、これは私の仕事だ。
正直、なんでも機械に頼ろうとする人間は好きじゃない。ロボットだって人間と同じように感情を持っている、この時代をわかっていないからこそ、そんなことが言えるのだ。
赤茶けたタイルの屋根は、雪の衣をまとってカラカラと笑う。暖かな微笑み。壁の中に刻まれた、白やピンクや濃い緑色をした大理石は、何とも言えず幻想的で美しかった。
——神聖な場所。
そんな雰囲気を漂わせている、聖堂の重い扉を私は開ける。
天窓から差し込む光が床に反射してキラキラと光っていた。今日という日がやってきたことを告げる朝が、私を包んでいる。
私が歩くと、その空間にコツコツと無機質な音だけが響いた。足音は空気を震わせて、少しばかりのためらいを見せている。
それでも、私は今日も神に祈りを捧ぐ。
願わくば、「人間」になれますように、と。
夜が明けた瞬間の空が。
黒一色の、空の瞳を、太陽が貫いて、瞬く白に揚々と染まって。
コバルトブルーの青みを魅せる。
その、瞬間の、空の色が。
だって、まだ自分は、夢の中に、いるんじゃないか、なんて。
考えさせられるほど、美しかったから。
こんな世界があることを知ったのは、いつのことだっただろうか。
その日のことは忘れてしまったけれど、この空はきっと、大昔からあったはずだ。
どこまでも続く、藍のグラデーション。きっと、この果てしない空は、深い深い記憶の中にある遠い昔へと繋がっている。人間が空を仰いだ最初の記憶へと。
冬の匂いに包まれて一呼吸。私は、白い雲を作る。
今日も気温は低いが、寒さにおののくことはない。
だいぶ、目が覚めてきた、ように思って……、私は真っ白な雪に足を取られないように、気をつけながら、ゆっくりと歩く。
身の丈の半分ほどの大きさのシャベルを持ち、雪かきをして進む。
雪かきなんてロボットに任せればいい、と人々はよく言うけれど、これは私の仕事だ。
正直、なんでも機械に頼ろうとする人間は好きじゃない。ロボットだって人間と同じように感情を持っている、この時代をわかっていないからこそ、そんなことが言えるのだ。
赤茶けたタイルの屋根は、雪の衣をまとってカラカラと笑う。暖かな微笑み。壁の中に刻まれた、白やピンクや濃い緑色をした大理石は、何とも言えず幻想的で美しかった。
——神聖な場所。
そんな雰囲気を漂わせている、聖堂の重い扉を私は開ける。
天窓から差し込む光が床に反射してキラキラと光っていた。今日という日がやってきたことを告げる朝が、私を包んでいる。
私が歩くと、その空間にコツコツと無機質な音だけが響いた。足音は空気を震わせて、少しばかりのためらいを見せている。
それでも、私は今日も神に祈りを捧ぐ。
願わくば、「人間」になれますように、と。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
【短編集】こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる