ラッセルの灯り

野田莉帆

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ラッセルの灯り

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 好きだった。
 夜が明けた瞬間の空が。
 黒一色の、空の瞳を、太陽が貫いて、瞬く白に揚々と染まって。
 コバルトブルーの青みを魅せる。
 その、瞬間の、空の色が。
 だって、まだ自分は、夢の中に、いるんじゃないか、なんて。
 考えさせられるほど、美しかったから。

 こんな世界があることを知ったのは、いつのことだっただろうか。
 その日のことは忘れてしまったけれど、この空はきっと、大昔からあったはずだ。

 どこまでも続く、藍のグラデーション。きっと、この果てしない空は、深い深い記憶の中にある遠い昔へと繋がっている。人間が空を仰いだ最初の記憶へと。

 冬の匂いに包まれて一呼吸。私は、白い雲を作る。
 今日も気温は低いが、寒さにおののくことはない。

 だいぶ、目が覚めてきた、ように思って……、私は真っ白な雪に足を取られないように、気をつけながら、ゆっくりと歩く。
 身の丈の半分ほどの大きさのシャベルを持ち、雪かきをして進む。

 雪かきなんてロボットに任せればいい、と人々はよく言うけれど、これは私の仕事だ。

 正直、なんでも機械に頼ろうとする人間は好きじゃない。ロボットだって人間と同じように感情を持っている、この時代をわかっていないからこそ、そんなことが言えるのだ。

 赤茶けたタイルの屋根は、雪の衣をまとってカラカラと笑う。暖かな微笑み。壁の中に刻まれた、白やピンクや濃い緑色をした大理石は、何とも言えず幻想的で美しかった。

 ——神聖な場所。
 そんな雰囲気を漂わせている、聖堂の重い扉を私は開ける。

 天窓から差し込む光が床に反射してキラキラと光っていた。今日という日がやってきたことを告げる朝が、私を包んでいる。

 私が歩くと、その空間にコツコツと無機質な音だけが響いた。足音は空気を震わせて、少しばかりのためらいを見せている。

 それでも、私は今日も神に祈りを捧ぐ。
 願わくば、「人間」になれますように、と。
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