風の忍者と炎の姫

あさまえいじ

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風魔 虎太郎

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「今日の仕事は‥‥鬼退治だな」

 彼の名は風魔 虎太郎ふうま こたろう。高校生であり、歳は16。背丈は170程、体型は細目。顔立ちは年相応でありながら、人並み以上に整っている。
 
 虎太郎は両手をポケットに突っ込んだまま、目の前の存在から視線を逸らさない。
 眼前には山のような大きな体躯に赤い体表、口元には大きな牙が生えたモノがいた。
 動物ではない、人でもない。目の前の存在は鬼―――妖魔と呼ばれる異形の存在だ。

 妖魔は現在社会において、いや遥か昔から存在を知られていた。
 『鬼』『悪魔』『バケモノ』、様々な呼び方をされてきた異形の存在、それを今では妖魔と呼ばれているに過ぎない。
 妖魔は一言でいえば‥‥人間の天敵だ。
 人よりも強く、頑丈で、凶悪だ。
 その力は人を容易く引き裂き、人では傷つけることが出来ず、人を殺すことに容赦はない。
 そんな存在にただの人では無力だ。‥‥‥‥ただの人では。

「さて、始めますか」

 虎太郎は右手をポケットから出す。その手には一枚の手裏剣が握られていた。
 その手裏剣を手首のスナップを効かせ、投げた。
 一枚の手裏剣は瞬く間に鬼に近づき鬼の首に触れることなく、逸れて行った。

「はい、完了」

 虎太郎は手裏剣が目標に当たらなかったというのに、背を向けて歩き出す。すると、歩き出してすぐに背後でドスンッ、と何かが動く音がした。
 鬼の足音ではない。動いたのは鬼の足ではなく‥‥‥‥頭が動いた。いや、動いたというより、落ちたのだ。首から上が。
 首が鋭利な刃物で斬り裂かれた、故にその首が落ちた。
 だが、虎太郎の手裏剣は外れ、鬼に当たることはなかった。では何故、鬼の首が斬り裂かれたのか。

 落ちた理由はただ一つ、虎太郎の魔法が理由だ。一枚の手裏剣に魔法を、風の魔法をかけた。
 かけた魔法は『風の刃』。『風の刃』は手裏剣に付与することで回転速度と共に『風の刃』は鋭さを増した。そして、その刃が鬼の首を刎ね飛ばしていた。
 虎太郎にとって、手裏剣はあくまで『風の刃』を付与する媒介に過ぎず、手裏剣が妖魔に当たったとしても無意味だった。本命は風の刃であり、魔法であった。その魔法が鬼の首を斬り裂いたため、鬼を倒したことを確信した。

「お疲れ様でした」

 虎太郎に声を掛けたのは、歳の頃を20代前半ほどの若い青年だった。背丈は180を超える程の大きな体躯に、グレーのスーツを着ていた。
 男の名は四島しじま 南次郎なんじろう。職業は警察官だ。

「大したことないですよ。たかが最下級の妖魔ですから‥‥」

 妖魔には強さに応じた階級がある。
 虎太郎が倒した妖魔は最下級、最も弱い妖魔と位置づけされる強さだった。

「最下級でも、並の人間では決して勝てない存在です。あの程度の妖魔一体でも、街中で暴れれば被害は甚大です。それに放っておいて成長でもされては、高名な魔法使いを呼ばざるを得ません。そうなっては、限られた予算もすぐに底を尽きます」
「‥‥だからって、学生を安い賃金で扱き使うとか、それが大人のすることですか‥‥」
「学生の割には高額な報酬だと思いますがね」
「まあ、確かに」

 虎太郎は学生の身分であるが、魔法使いであるため、度々妖魔との戦いに駆り出される。
 そしてその度に、報酬を得ていた。
 妖魔一体につき20,000円。この金額設定が高いのか、安いのか、それは魔法使いの力量による。だが、虎太郎にとっては安い賃金、と口では言っているが、内心ぼろい商売だと思っている。

「では、学園までお送りしますよ」
「やれやれ、これから学校かよ‥‥」

 時刻は午後2時を過ぎたばかり。
 授業途中に連絡を受け、現場に駆り出された。

「学生時代だけですよ、気楽なのも、楽しいのも。‥‥社会人になると、無性に戻りたくなりますよ。それほどいい学生時代ではなかったですけどね‥‥」
「そんなもんですか?」
「‥‥そんなもの、ですよ」

 二人は車に乗り込み、現場から走り去った。
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