1 / 11
風魔 虎太郎
しおりを挟む
「今日の仕事は‥‥鬼退治だな」
彼の名は風魔 虎太郎。高校生であり、歳は16。背丈は170程、体型は細目。顔立ちは年相応でありながら、人並み以上に整っている。
虎太郎は両手をポケットに突っ込んだまま、目の前の存在から視線を逸らさない。
眼前には山のような大きな体躯に赤い体表、口元には大きな牙が生えたモノがいた。
動物ではない、人でもない。目の前の存在は鬼―――妖魔と呼ばれる異形の存在だ。
妖魔は現在社会において、いや遥か昔から存在を知られていた。
『鬼』『悪魔』『バケモノ』、様々な呼び方をされてきた異形の存在、それを今では妖魔と呼ばれているに過ぎない。
妖魔は一言でいえば‥‥人間の天敵だ。
人よりも強く、頑丈で、凶悪だ。
その力は人を容易く引き裂き、人では傷つけることが出来ず、人を殺すことに容赦はない。
そんな存在にただの人では無力だ。‥‥‥‥ただの人では。
「さて、始めますか」
虎太郎は右手をポケットから出す。その手には一枚の手裏剣が握られていた。
その手裏剣を手首のスナップを効かせ、投げた。
一枚の手裏剣は瞬く間に鬼に近づき鬼の首に触れることなく、逸れて行った。
「はい、完了」
虎太郎は手裏剣が目標に当たらなかったというのに、背を向けて歩き出す。すると、歩き出してすぐに背後でドスンッ、と何かが動く音がした。
鬼の足音ではない。動いたのは鬼の足ではなく‥‥‥‥頭が動いた。いや、動いたというより、落ちたのだ。首から上が。
首が鋭利な刃物で斬り裂かれた、故にその首が落ちた。
だが、虎太郎の手裏剣は外れ、鬼に当たることはなかった。では何故、鬼の首が斬り裂かれたのか。
落ちた理由はただ一つ、虎太郎の魔法が理由だ。一枚の手裏剣に魔法を、風の魔法をかけた。
かけた魔法は『風の刃』。『風の刃』は手裏剣に付与することで回転速度と共に『風の刃』は鋭さを増した。そして、その刃が鬼の首を刎ね飛ばしていた。
虎太郎にとって、手裏剣はあくまで『風の刃』を付与する媒介に過ぎず、手裏剣が妖魔に当たったとしても無意味だった。本命は風の刃であり、魔法であった。その魔法が鬼の首を斬り裂いたため、鬼を倒したことを確信した。
「お疲れ様でした」
虎太郎に声を掛けたのは、歳の頃を20代前半ほどの若い青年だった。背丈は180を超える程の大きな体躯に、グレーのスーツを着ていた。
男の名は四島 南次郎。職業は警察官だ。
「大したことないですよ。たかが最下級の妖魔ですから‥‥」
妖魔には強さに応じた階級がある。
虎太郎が倒した妖魔は最下級、最も弱い妖魔と位置づけされる強さだった。
「最下級でも、並の人間では決して勝てない存在です。あの程度の妖魔一体でも、街中で暴れれば被害は甚大です。それに放っておいて成長でもされては、高名な魔法使いを呼ばざるを得ません。そうなっては、限られた予算もすぐに底を尽きます」
「‥‥だからって、学生を安い賃金で扱き使うとか、それが大人のすることですか‥‥」
「学生の割には高額な報酬だと思いますがね」
「まあ、確かに」
虎太郎は学生の身分であるが、魔法使いであるため、度々妖魔との戦いに駆り出される。
そしてその度に、報酬を得ていた。
妖魔一体につき20,000円。この金額設定が高いのか、安いのか、それは魔法使いの力量による。だが、虎太郎にとっては安い賃金、と口では言っているが、内心ぼろい商売だと思っている。
「では、学園までお送りしますよ」
「やれやれ、これから学校かよ‥‥」
時刻は午後2時を過ぎたばかり。
授業途中に連絡を受け、現場に駆り出された。
「学生時代だけですよ、気楽なのも、楽しいのも。‥‥社会人になると、無性に戻りたくなりますよ。それほどいい学生時代ではなかったですけどね‥‥」
「そんなもんですか?」
「‥‥そんなもの、ですよ」
二人は車に乗り込み、現場から走り去った。
彼の名は風魔 虎太郎。高校生であり、歳は16。背丈は170程、体型は細目。顔立ちは年相応でありながら、人並み以上に整っている。
虎太郎は両手をポケットに突っ込んだまま、目の前の存在から視線を逸らさない。
眼前には山のような大きな体躯に赤い体表、口元には大きな牙が生えたモノがいた。
動物ではない、人でもない。目の前の存在は鬼―――妖魔と呼ばれる異形の存在だ。
妖魔は現在社会において、いや遥か昔から存在を知られていた。
『鬼』『悪魔』『バケモノ』、様々な呼び方をされてきた異形の存在、それを今では妖魔と呼ばれているに過ぎない。
妖魔は一言でいえば‥‥人間の天敵だ。
人よりも強く、頑丈で、凶悪だ。
その力は人を容易く引き裂き、人では傷つけることが出来ず、人を殺すことに容赦はない。
そんな存在にただの人では無力だ。‥‥‥‥ただの人では。
「さて、始めますか」
虎太郎は右手をポケットから出す。その手には一枚の手裏剣が握られていた。
その手裏剣を手首のスナップを効かせ、投げた。
一枚の手裏剣は瞬く間に鬼に近づき鬼の首に触れることなく、逸れて行った。
「はい、完了」
虎太郎は手裏剣が目標に当たらなかったというのに、背を向けて歩き出す。すると、歩き出してすぐに背後でドスンッ、と何かが動く音がした。
鬼の足音ではない。動いたのは鬼の足ではなく‥‥‥‥頭が動いた。いや、動いたというより、落ちたのだ。首から上が。
首が鋭利な刃物で斬り裂かれた、故にその首が落ちた。
だが、虎太郎の手裏剣は外れ、鬼に当たることはなかった。では何故、鬼の首が斬り裂かれたのか。
落ちた理由はただ一つ、虎太郎の魔法が理由だ。一枚の手裏剣に魔法を、風の魔法をかけた。
かけた魔法は『風の刃』。『風の刃』は手裏剣に付与することで回転速度と共に『風の刃』は鋭さを増した。そして、その刃が鬼の首を刎ね飛ばしていた。
虎太郎にとって、手裏剣はあくまで『風の刃』を付与する媒介に過ぎず、手裏剣が妖魔に当たったとしても無意味だった。本命は風の刃であり、魔法であった。その魔法が鬼の首を斬り裂いたため、鬼を倒したことを確信した。
「お疲れ様でした」
虎太郎に声を掛けたのは、歳の頃を20代前半ほどの若い青年だった。背丈は180を超える程の大きな体躯に、グレーのスーツを着ていた。
男の名は四島 南次郎。職業は警察官だ。
「大したことないですよ。たかが最下級の妖魔ですから‥‥」
妖魔には強さに応じた階級がある。
虎太郎が倒した妖魔は最下級、最も弱い妖魔と位置づけされる強さだった。
「最下級でも、並の人間では決して勝てない存在です。あの程度の妖魔一体でも、街中で暴れれば被害は甚大です。それに放っておいて成長でもされては、高名な魔法使いを呼ばざるを得ません。そうなっては、限られた予算もすぐに底を尽きます」
「‥‥だからって、学生を安い賃金で扱き使うとか、それが大人のすることですか‥‥」
「学生の割には高額な報酬だと思いますがね」
「まあ、確かに」
虎太郎は学生の身分であるが、魔法使いであるため、度々妖魔との戦いに駆り出される。
そしてその度に、報酬を得ていた。
妖魔一体につき20,000円。この金額設定が高いのか、安いのか、それは魔法使いの力量による。だが、虎太郎にとっては安い賃金、と口では言っているが、内心ぼろい商売だと思っている。
「では、学園までお送りしますよ」
「やれやれ、これから学校かよ‥‥」
時刻は午後2時を過ぎたばかり。
授業途中に連絡を受け、現場に駆り出された。
「学生時代だけですよ、気楽なのも、楽しいのも。‥‥社会人になると、無性に戻りたくなりますよ。それほどいい学生時代ではなかったですけどね‥‥」
「そんなもんですか?」
「‥‥そんなもの、ですよ」
二人は車に乗り込み、現場から走り去った。
0
あなたにおすすめの小説
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
包帯妻の素顔は。
サイコちゃん
恋愛
顔を包帯でぐるぐる巻きにした妻アデラインは夫ベイジルから離縁を突きつける手紙を受け取る。手柄を立てた夫は戦地で出会った聖女見習いのミアと結婚したいらしく、妻の悪評をでっち上げて離縁を突きつけたのだ。一方、アデラインは離縁を受け入れて、包帯を取って見せた。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
親友面した女の巻き添えで死に、転生先は親友?が希望した乙女ゲーム世界!?転生してまでヒロイン(お前)の親友なんかやってられるかっ!!
音無砂月
ファンタジー
親友面してくる金持ちの令嬢マヤに巻き込まれて死んだミキ
生まれ変わった世界はマヤがはまっていた乙女ゲーム『王女アイルはヤンデレ男に溺愛される』の世界
ミキはそこで親友である王女の親友ポジション、レイファ・ミラノ公爵令嬢に転生
一緒に死んだマヤは王女アイルに転生
「また一緒だねミキちゃん♡」
ふざけるなーと絶叫したいミキだけど立ちはだかる身分の差
アイルに転生したマヤに振り回せながら自分の幸せを掴む為にレイファ。極力、乙女ゲームに関わりたくないが、なぜか攻略対象者たちはヒロインであるアイルではなくレイファに好意を寄せてくる。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる