【完結】婚約破棄された僕は過保護な王太子殿下とドS級冒険者に溺愛されながら召喚士としての新しい人生を歩みます

八神紫音

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7話 いざ、テイム

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⸺⸺バルニエ街道⸺⸺

「わぁ、長い道がずっと続いてるね! あっ、町の外では魔物が出るんだっけ……」
 初めての街道でキョロキョロと辺りを見回す。
「てめぇ……町から外に出たことねぇのか?」
「うん……初めてだよ」
 僕がそう言うと、ヴィルヘルムは少しだけ眉を動かした。
「……そうか。ちなみに街道は結界があるから魔物は出ねぇ。その柵から外に出れば魔力のある奴ほど魔物が寄り付きやすい。アホみてぇに出るなよ」
「なるほど……分かった。でも魔物を召喚するためには、まず魔物に出会ってテイムしなきゃだよね……」
「ま、そうだな。冒険者登録する前に1体くらいテイムしておかねぇと召喚士って名乗りづれぇしな……」
「えっ、ジョブも申告しないとなの?」
「ったりめぇだろ。じゃねぇと知らんやつとパーティ組むのに情報がねぇだろ」
「そっか……。ヴィリーは何てジョブなの?」
「あ? 俺の事なんか別に良いだろ」
「えー、教えてくれないの? ほら、パーティ組むかもしれないから」
 そう駄々をこねると、ヴィルヘルムは不機嫌そうに舌打ちをして、冒険者カードを僕に見せてくれた。

「おぉ、これが冒険者カード。25歳、ジョブは暗黒剣士……あ、あの黒くモヤモヤってしてたやつのことかぁ。S級冒険者って……多分すごいよね?」
「うるせぇな、ジョブ以外の事にまで興味持つんじゃねぇよ」
 ヴィルヘルムはそう言って僕から冒険者カードを取り上げてしまった。
「あぁ、だって、見せてくれたから良いかと思って……」
「もう見せねぇ」
「えぇー!」
 ヴィルヘルムの事、もっと知りたいと思ったのに、残念。ただの用心棒だからって言われちゃったらそれまでだけど、僕はもっと彼のことが知りたい。

 不満満々で下を向いて歩いていると、街道の柵付近にオレンジ色のスライムが居ることに気付いた。しかも、猫みたいに頭に小さな耳が付いている。
「わっ、ヴィリー! 魔物、柵の中にいるよ!?」
「は? ……マジじゃねぇか」
 2人でまじまじとそのスライムを見つめると、あちこち怪我をしてブルブルと震えていることに気が付いた。
『きゅぅ、きゅぅ……』
「ひどい怪我だね……しかも、こんなに怖がってる。魔物ってみんなこんな感じ?」
 その場にしゃがみ込むと、ヴィルヘルムも一緒になってしゃがんでくれた。
「いや、普通魔物には“邪気”っつうのが埋め込まれていて人の魔力を喰らおうとする性質があるんだ。目が赤く光ってんのが目印だ。だが、こいつは既に邪気が抜けている。だから人も襲わねぇし柵の中にも入れたんだな」
「そうなんだ。助けてあげられるかな。あ、人間用の回復薬は効く?」
「ま、効くっちゃ効くが……てめぇの場合もっと単純だ。テイムすればいい。てめぇの支配下に入った魔物はてめぇの魔力で勝手に回復する」
「えーっ、そうなの!? ヴィリー、詳しいんだね」
「だから、今は俺の事はいいだろ」
「もう、またそれ……でも、そうだね、今はこの子を助けてあげなくちゃ。えっと……」

 僕は猫スライムへ両手をかざすと、目を閉じて詠唱をした。
「⸺⸺汝、我と契約し、我と共に歩まん事を誓え⸺⸺」
 詠唱を終えるとペンダントが強く光り輝き、僕の両手から飛び出した魔力が猫スライムのいる地面に魔法陣を描いていった。
『きゅぅ♪』
 猫スライムはまるでお礼でも言うかのようにキュッとお辞儀をすると、地面の魔法陣の中へと吸い込まれていった。

「わーっ、スライム居なくなっちゃったよ!?」
「無事にテイム出来たからそのペンダントの中で休憩してんだろ」
 呆れ顔でそう言うヴィルヘルムに、僕はホッと胸を撫で下ろした。
「本当!? はぁ、良かった……。休憩してるって事は、まだ呼び出さないほうがいいよね」
「そりゃな、どっか怪我したまんま出てくるだろうな」
「それはダメだ……わぁ、早く召喚してみたいけど、今はゆっくり休ませてあげよう」

 ホッとしたところで、僕のお腹がぐるる~、と鳴る。
「あっ、そう言えば朝ご飯、食べてなかった……。あー、お腹空いた~」
「ったく……忙しい野郎だな。てめぇのリュックん中よく見てみろ」
「えっ?」
 慌てて背中に背負っていたリュックを開けると、僕は入れた覚えのない包みが入っていた。何だろう、と開いてみると、院長先生手作りのサンドイッチだった。
「あー! 懐しい……これよく院長先生が作ってくれたんだよねー。はい、ヴィリーもどうぞ」
「……ん」
 2つ入っていたので1つをヴィルヘルムへ差し出すと、彼は素直に受け取ってかぶりついていた。ヴィルヘルムもお腹空いてたのかな。

 僕たちはサンドイッチをつまみながら、前方に見える大きな町を目指して歩くのを再開した。
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