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31話 流れ込んできた記憶
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⸺⸺ヴィルヘルムの精神世界⸺⸺
ん、なんか地面が近い。これがヴィルヘルムが魔物だった頃の視界か。意外にも小さい魔物だったんだな……。
前方から綺麗なローブに身を包んだ男性が歩いてくる。あっ、ヴィルヘルムの……顔だ! でも、身体は全然ムキムキそうじゃない。
「おや、可愛いスライムだね。こんにちは」
『きゅっ! きゅっ!』
えっ、スライム!? ヴィルヘルムって元はスライムだったんだ!
「おぉっ、やる気満々だね! よーし、私も負けないぞ」
⸺⸺召喚士様の鍛え上げられた召喚魔にコテンパンにされたスライム。
『きゅぅぅ~……』
あ、絶対これ目が“×”になってるやつだ……。
「お前、すごいじゃないか。スライムなのにこんなに武闘派とは、恐れ入ったよ」
『きゅぅ、きゅきゅきゅっ!』
「ははは、次は負けないって? なら、私と一緒に来るかい? 私と、私の仲間と共に強くなろう」
『きゅっ』
「⸺⸺汝、我と契約し、我と共に歩まん事を誓え⸺⸺」
『きゅっきゅっ♪』
これが、このスライムとヴィルヘルムという名の召喚士との出会いだったんだ。
「これからよろしくね。うーん、お前の名前はどうしようかなぁ」
『きゅきゅきゅっ!』
「強そうな名前を付けてほしいって? そうだなぁ……なら、ド直球に“ストロングゼリー”、記念すべき“1号”だ!」
『きゅっ♪』
ストロングゼリー1号! ヴィルヘルムが僕のすらにゃんに2号って付けようとしてたヤツ……そっか、召喚士様に付けてもらった名前だったのか……。
あれ僕、可愛くなさすぎるってディスった記憶がある……やば。
⸺⸺
場面は移り変わり、邪竜討伐を国から依頼された召喚士様。ここは、お城の玉座の間かな。あっ、ルーベン国王陛下だ。
「ヴィルヘルムよ、必ずあの邪竜を討伐してくるのだ。これは、我がアイゼンシュタット王朝の存続をかけた戦いである。失敗は許されない」
「はい、父上。必ずや我が使命を果たしてみせます!」
場面は荒野へと移り変わる。
「父上は討伐してこい、なんて仰ったけど、あの邪竜……あの魔障の濃さ、あれは元聖竜と見て間違いない。聖なる生き物が闇落ちするのはその土地の人々のせいなのに。それなのに討伐だなんて、あんまりじゃないか。ね、ストゼリ?」
『きゅぅ!』
ストゼリって略されてる……。
「だから私は、あの邪竜をテイムしたい。みんなの仲間に入れてあげて欲しいんだ」
『きゅっ♪』
「ありがとう。テイムならこの魔障問題や邪竜による被害も解決されるし、結果的に討伐と同じ結果だし、父上も納得してくれるだろう」
⸺⸺
場面は邪竜と対峙し、どちらも満身創痍の場面。さっきの僕たちと状況が似ている。
「くっ、みんなもう限界か……まだ少しあの竜の邪気の支配も残っていそうだけど、やってみるしかない。⸺⸺汝、我と契約し、我と共に歩まん事を誓え⸺⸺」
『グアァァァッ!』
契約が弾かれ、邪竜の反撃が召喚士様を弾き飛ばした。
『きゅぅ、きゅーぅ!』
契約破棄されたことで召喚魔たちは討伐に切り替え、邪竜への攻撃を再開する。しかし、どんどんと召喚魔たちはやられて消滅していってしまう。
『きゅぅぅぅ!』
スライムは全身に黒いモヤモヤをまとい、身体を大砲のように飛ばし、邪竜へ一撃を食らわせた。
『グアァッ……』
邪竜は今までのダメージの蓄積があったのか、よろよろと飛んで逃げていってしまった。
「スト、ゼリ……その力は……邪気は、大丈夫なのかい?」
『きゅぅ!』
「そうか、本当に強いな、お前は……最後にお前のたくましい姿が見られて嬉しいよ……」
『きゅぅ!? きゅぅきゅぅ!』
「私はもうだめだ。身体から残った魔力が抜けていっている。これは……死の兆候だ……。お前との契約を解く。ストゼリ、これからは好きに生きるんだ……」
『きゅぅぅ! きゅぅ、きゅぅ!』
「おや、涙……。私のために泣いてくれているのかい? 強いだけじゃない、とても優しい子だ……。そうだ、どうせ果てる命。この残った魔力を全て使って、お前の魂とこの身体を結び付けてみよう。人として生きれば、お前はもっともっと強くなれる……これからも強く、優しく生きて、幸せになってくれ、ストゼリ……」
『きゅきゅー!』
視界が光に覆われ、その場面は終わった。
⸺⸺
再び玉座の間の風景へと戻る。ヴィルヘルムとなったストロングゼリー1号は、ルーベン城へ戻り、国王陛下に状況を説明していた。
「そうか、そんな事が……邪竜は討伐こそ出来なかったものの、撃退は出来た。命をかけて使命を果たしてくれた我が子ヴィルヘルムを私は誇りに思う。その我が子がその身体を託したお前も、私は王家の人間として受け入れよう」
「その必要はねぇ。俺はこの国を出る」
「なっ、何を言うのだヴィルヘルムよ……!」
「息子の命が亡くなったんだ。もっと悲しめよ! 涙くらい流せよ! もうこんな悲劇が起きねぇように、出来ることをしろ。そうでもしない限り、俺がこの国に戻ってくることはない」
「ヴィルヘルムよ、待つのだヴィルヘルムよ……!」
視界は国王陛下から離れ、城を出ていく。
「俺は、強くなる。もう二度と、大切なものを失わないために……」
⸺⸺
ヴィルヘルムの精神世界から戻ってきた僕は、涙を流していた。
ん、なんか地面が近い。これがヴィルヘルムが魔物だった頃の視界か。意外にも小さい魔物だったんだな……。
前方から綺麗なローブに身を包んだ男性が歩いてくる。あっ、ヴィルヘルムの……顔だ! でも、身体は全然ムキムキそうじゃない。
「おや、可愛いスライムだね。こんにちは」
『きゅっ! きゅっ!』
えっ、スライム!? ヴィルヘルムって元はスライムだったんだ!
「おぉっ、やる気満々だね! よーし、私も負けないぞ」
⸺⸺召喚士様の鍛え上げられた召喚魔にコテンパンにされたスライム。
『きゅぅぅ~……』
あ、絶対これ目が“×”になってるやつだ……。
「お前、すごいじゃないか。スライムなのにこんなに武闘派とは、恐れ入ったよ」
『きゅぅ、きゅきゅきゅっ!』
「ははは、次は負けないって? なら、私と一緒に来るかい? 私と、私の仲間と共に強くなろう」
『きゅっ』
「⸺⸺汝、我と契約し、我と共に歩まん事を誓え⸺⸺」
『きゅっきゅっ♪』
これが、このスライムとヴィルヘルムという名の召喚士との出会いだったんだ。
「これからよろしくね。うーん、お前の名前はどうしようかなぁ」
『きゅきゅきゅっ!』
「強そうな名前を付けてほしいって? そうだなぁ……なら、ド直球に“ストロングゼリー”、記念すべき“1号”だ!」
『きゅっ♪』
ストロングゼリー1号! ヴィルヘルムが僕のすらにゃんに2号って付けようとしてたヤツ……そっか、召喚士様に付けてもらった名前だったのか……。
あれ僕、可愛くなさすぎるってディスった記憶がある……やば。
⸺⸺
場面は移り変わり、邪竜討伐を国から依頼された召喚士様。ここは、お城の玉座の間かな。あっ、ルーベン国王陛下だ。
「ヴィルヘルムよ、必ずあの邪竜を討伐してくるのだ。これは、我がアイゼンシュタット王朝の存続をかけた戦いである。失敗は許されない」
「はい、父上。必ずや我が使命を果たしてみせます!」
場面は荒野へと移り変わる。
「父上は討伐してこい、なんて仰ったけど、あの邪竜……あの魔障の濃さ、あれは元聖竜と見て間違いない。聖なる生き物が闇落ちするのはその土地の人々のせいなのに。それなのに討伐だなんて、あんまりじゃないか。ね、ストゼリ?」
『きゅぅ!』
ストゼリって略されてる……。
「だから私は、あの邪竜をテイムしたい。みんなの仲間に入れてあげて欲しいんだ」
『きゅっ♪』
「ありがとう。テイムならこの魔障問題や邪竜による被害も解決されるし、結果的に討伐と同じ結果だし、父上も納得してくれるだろう」
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場面は邪竜と対峙し、どちらも満身創痍の場面。さっきの僕たちと状況が似ている。
「くっ、みんなもう限界か……まだ少しあの竜の邪気の支配も残っていそうだけど、やってみるしかない。⸺⸺汝、我と契約し、我と共に歩まん事を誓え⸺⸺」
『グアァァァッ!』
契約が弾かれ、邪竜の反撃が召喚士様を弾き飛ばした。
『きゅぅ、きゅーぅ!』
契約破棄されたことで召喚魔たちは討伐に切り替え、邪竜への攻撃を再開する。しかし、どんどんと召喚魔たちはやられて消滅していってしまう。
『きゅぅぅぅ!』
スライムは全身に黒いモヤモヤをまとい、身体を大砲のように飛ばし、邪竜へ一撃を食らわせた。
『グアァッ……』
邪竜は今までのダメージの蓄積があったのか、よろよろと飛んで逃げていってしまった。
「スト、ゼリ……その力は……邪気は、大丈夫なのかい?」
『きゅぅ!』
「そうか、本当に強いな、お前は……最後にお前のたくましい姿が見られて嬉しいよ……」
『きゅぅ!? きゅぅきゅぅ!』
「私はもうだめだ。身体から残った魔力が抜けていっている。これは……死の兆候だ……。お前との契約を解く。ストゼリ、これからは好きに生きるんだ……」
『きゅぅぅ! きゅぅ、きゅぅ!』
「おや、涙……。私のために泣いてくれているのかい? 強いだけじゃない、とても優しい子だ……。そうだ、どうせ果てる命。この残った魔力を全て使って、お前の魂とこの身体を結び付けてみよう。人として生きれば、お前はもっともっと強くなれる……これからも強く、優しく生きて、幸せになってくれ、ストゼリ……」
『きゅきゅー!』
視界が光に覆われ、その場面は終わった。
⸺⸺
再び玉座の間の風景へと戻る。ヴィルヘルムとなったストロングゼリー1号は、ルーベン城へ戻り、国王陛下に状況を説明していた。
「そうか、そんな事が……邪竜は討伐こそ出来なかったものの、撃退は出来た。命をかけて使命を果たしてくれた我が子ヴィルヘルムを私は誇りに思う。その我が子がその身体を託したお前も、私は王家の人間として受け入れよう」
「その必要はねぇ。俺はこの国を出る」
「なっ、何を言うのだヴィルヘルムよ……!」
「息子の命が亡くなったんだ。もっと悲しめよ! 涙くらい流せよ! もうこんな悲劇が起きねぇように、出来ることをしろ。そうでもしない限り、俺がこの国に戻ってくることはない」
「ヴィルヘルムよ、待つのだヴィルヘルムよ……!」
視界は国王陛下から離れ、城を出ていく。
「俺は、強くなる。もう二度と、大切なものを失わないために……」
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ヴィルヘルムの精神世界から戻ってきた僕は、涙を流していた。
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