【完結】婚約破棄された僕は過保護な王太子殿下とドS級冒険者に溺愛されながら召喚士としての新しい人生を歩みます

八神紫音

文字の大きさ
31 / 33

31話 流れ込んできた記憶

しおりを挟む
⸺⸺ヴィルヘルムの精神世界⸺⸺

 ん、なんか地面が近い。これがヴィルヘルムが魔物だった頃の視界か。意外にも小さい魔物だったんだな……。

 前方から綺麗なローブに身を包んだ男性が歩いてくる。あっ、ヴィルヘルムの……顔だ! でも、身体は全然ムキムキそうじゃない。
「おや、可愛いスライムだね。こんにちは」
『きゅっ! きゅっ!』
 えっ、スライム!? ヴィルヘルムって元はスライムだったんだ!
「おぉっ、やる気満々だね! よーし、私も負けないぞ」

⸺⸺召喚士様の鍛え上げられた召喚魔にコテンパンにされたスライム。

『きゅぅぅ~……』
 あ、絶対これ目が“×”になってるやつだ……。
「お前、すごいじゃないか。スライムなのにこんなに武闘派とは、恐れ入ったよ」
『きゅぅ、きゅきゅきゅっ!』
「ははは、次は負けないって? なら、私と一緒に来るかい? 私と、私の仲間と共に強くなろう」
『きゅっ』

「⸺⸺汝、我と契約し、我と共に歩まん事を誓え⸺⸺」
『きゅっきゅっ♪』
 これが、このスライムとヴィルヘルムという名の召喚士との出会いだったんだ。

「これからよろしくね。うーん、お前の名前はどうしようかなぁ」
『きゅきゅきゅっ!』
「強そうな名前を付けてほしいって? そうだなぁ……なら、ド直球に“ストロングゼリー”、記念すべき“1号”だ!」
『きゅっ♪』
 ストロングゼリー1号! ヴィルヘルムが僕のすらにゃんに2号って付けようとしてたヤツ……そっか、召喚士様に付けてもらった名前だったのか……。
 あれ僕、可愛くなさすぎるってディスった記憶がある……やば。

⸺⸺

 場面は移り変わり、邪竜討伐を国から依頼された召喚士様。ここは、お城の玉座の間かな。あっ、ルーベン国王陛下だ。
「ヴィルヘルムよ、必ずあの邪竜を討伐してくるのだ。これは、我がアイゼンシュタット王朝の存続をかけた戦いである。失敗は許されない」
「はい、父上。必ずや我が使命を果たしてみせます!」

 場面は荒野へと移り変わる。
「父上は討伐してこい、なんて仰ったけど、あの邪竜……あの魔障の濃さ、あれは元聖竜と見て間違いない。聖なる生き物が闇落ちするのはその土地の人々のせいなのに。それなのに討伐だなんて、あんまりじゃないか。ね、ストゼリ?」
『きゅぅ!』
 ストゼリって略されてる……。
「だから私は、あの邪竜をテイムしたい。みんなの仲間に入れてあげて欲しいんだ」
『きゅっ♪』
「ありがとう。テイムならこの魔障問題や邪竜による被害も解決されるし、結果的に討伐と同じ結果だし、父上も納得してくれるだろう」

⸺⸺

 場面は邪竜と対峙し、どちらも満身創痍の場面。さっきの僕たちと状況が似ている。
「くっ、みんなもう限界か……まだ少しあの竜の邪気の支配も残っていそうだけど、やってみるしかない。⸺⸺汝、我と契約し、我と共に歩まん事を誓え⸺⸺」
『グアァァァッ!』
 契約が弾かれ、邪竜の反撃が召喚士様を弾き飛ばした。
『きゅぅ、きゅーぅ!』
 契約破棄されたことで召喚魔たちは討伐に切り替え、邪竜への攻撃を再開する。しかし、どんどんと召喚魔たちはやられて消滅していってしまう。

『きゅぅぅぅ!』
 スライムは全身に黒いモヤモヤをまとい、身体を大砲のように飛ばし、邪竜へ一撃を食らわせた。
『グアァッ……』
 邪竜は今までのダメージの蓄積があったのか、よろよろと飛んで逃げていってしまった。
「スト、ゼリ……その力は……邪気は、大丈夫なのかい?」
『きゅぅ!』
「そうか、本当に強いな、お前は……最後にお前のたくましい姿が見られて嬉しいよ……」
『きゅぅ!? きゅぅきゅぅ!』
「私はもうだめだ。身体から残った魔力が抜けていっている。これは……死の兆候だ……。お前との契約を解く。ストゼリ、これからは好きに生きるんだ……」
『きゅぅぅ! きゅぅ、きゅぅ!』
「おや、涙……。私のために泣いてくれているのかい? 強いだけじゃない、とても優しい子だ……。そうだ、どうせ果てる命。この残った魔力を全て使って、お前の魂とこの身体を結び付けてみよう。人として生きれば、お前はもっともっと強くなれる……これからも強く、優しく生きて、幸せになってくれ、ストゼリ……」
『きゅきゅー!』

 視界が光に覆われ、その場面は終わった。

⸺⸺

 再び玉座の間の風景へと戻る。ヴィルヘルムとなったストロングゼリー1号は、ルーベン城へ戻り、国王陛下に状況を説明していた。
「そうか、そんな事が……邪竜は討伐こそ出来なかったものの、撃退は出来た。命をかけて使命を果たしてくれた我が子ヴィルヘルムを私は誇りに思う。その我が子がその身体を託したお前も、私は王家の人間として受け入れよう」
「その必要はねぇ。俺はこの国を出る」
「なっ、何を言うのだヴィルヘルムよ……!」
「息子の命が亡くなったんだ。もっと悲しめよ! 涙くらい流せよ! もうこんな悲劇が起きねぇように、出来ることをしろ。そうでもしない限り、俺がこの国に戻ってくることはない」
「ヴィルヘルムよ、待つのだヴィルヘルムよ……!」
 視界は国王陛下から離れ、城を出ていく。

「俺は、強くなる。もう二度と、大切なものを失わないために……」

⸺⸺

 ヴィルヘルムの精神世界から戻ってきた僕は、涙を流していた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

追放オメガ聖帝の幸せな結婚〜クールなスパダリ騎士に拾われて溺愛されるまで〜

あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
ノルディーナ王国の聖帝サーナは、教皇のありもしない嘘のせいで聖宮から追放されてしまう。 行く当てがないサーナが国境に向かうと、そこで隣国ルミルカ王国の騎士であるムーシュと出会う。ムーシュから諸事情により偽装結婚を提案されて、サーナは期限付きの偽装結婚ならばよいと承諾し、一時的に保護してもらうことに。 異国暮らしに慣れていく中で、やがてムーシュから溺愛されるようになり……?

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!

ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。 ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!? 「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」 理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。 これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される

水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。 絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。 長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。 「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」 有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。 追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!

過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます

水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。 家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。 絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。 「大丈夫だ。俺がいる」 彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。 これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。 無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!

炎の精霊王の愛に満ちて

陽花紫
BL
異世界転移してしまったミヤは、森の中で寒さに震えていた。暖をとるために焚火をすれば、そこから精霊王フレアが姿を現す。 悪しき魔術師によって封印されていたフレアはその礼として「願いをひとつ叶えてやろう」とミヤ告げる。しかし無欲なミヤには、願いなど浮かばなかった。フレアはミヤに欲望を与え、いまいちど願いを尋ねる。 ミヤは答えた。「俺を、愛して」 小説家になろうにも掲載中です。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

処理中です...